【21】暗闇に沈む森 後編
いつもより長め
「フゥ〜さすがに疲れた、表層の魔物は離れてるはずだし一息ぐらいつけーー」
ーーーミシミシミシッ!!
ーーーGAAAOOOOO!!!
ーーーGAAUUU!!
ーーーGLoo!!
草木がへし折れる音ともに現れたるは、3匹のジャイアントベアー…どうやらまだまだ休ませてはくれないらしい。まぁまだレベルもポイントも全く足りてないから休むわけには行かないんだけど。
先頭にいた1匹目が木々を薙ぎ倒した勢いそのままに突っ込んで来たのでそれを横方向に回避。次の2匹目は少し手前で止まって右腕を振り下ろして来たので左に避け、続け様に右腕を振り下ろしが来たから今度は後ろに避け、噛み付こうとして来たので戦槌をで頭をかち上げると脳震盪でも起こしたのか二匹目は体勢を崩して倒れた。
1匹目が反転してまた突っ込んで来ているのが見えたので二匹目の背を蹴って高く跳躍、一匹目が諦めずにこっちに手を伸ばし爪を振るって来るがそれを盾凌いで一匹目の背後に着地した。一匹目は勢いのついた状態で無理に手を伸ばしたためそのまま体勢を崩して二匹目にのしかかるように倒れ込んだ、意識を取り戻した二匹目が起き上がろうとして一匹目が邪魔になっているのを見逃さずに近付いて戦槌を全力で振り下ろ……そうとした所で様子を伺っていた3匹目めが近付いてくるとその凶悪な爪でつかもうとして来たので跳躍して回避し、そのまま高さを活かして一匹目の毛皮を掴んで体をさらに上に引き上げそのまま一匹目の背中を駆けて頭部に戦槌を振り下ろす!
「やっべ!」
初めてジャイアントベアと戦った時の焼き直しのように飛んで来たパンチをわざと足を滑らせて強引に体勢を下げてなんとか回避する事に成功した、そのまま受け身を取って地面を転がり追撃のなぎ払いを気合いで跳ねて回避。
「……あと二匹」
頭をぶっ叩い1匹目はぐったりとしており、距離が取れているので確認するとポイントに変換可能な状態に変化していた。
ーーーGAAAAAAAA!!!
怒り心頭といった様子で突っ込んできた3匹目は後先など考えて居ない事が容易く伺えるような怒り任せの怒涛の連撃仕掛けて来た!とりあえず距離を取って疲れるまで待とうかとも思ったが、出来れば二匹目が一匹目の下から抜け出す前に仕留めたいから何処かで三体目を通り抜ける必要があって…
「『下位減速』『重力』」
3匹目の攻撃に合わせて『重力』を発動させる。当然ジャイアントベアのような巨大な体を持った敵を吸い寄せられるようなパワーはまだ無いが、それでも吸い寄せられていることに変わりは無い。
ジャイアントベアが振り下ろす腕が減速し、横に僅かにずれたのを見逃さずに脇の下を通り抜けて一匹目のしたから抜け出そうとしている二匹目に駆け寄る、途中で気が付かれて二匹目が腕を伸ばして阻止しようとして来たが、その伸びてきた腕を戦槌を振るって弾き、その勢いを殺さずに自分の体をぐるんと一回転させて戦槌を二匹目の頭に叩き付ける。
「あと1匹」
邪魔にならないよう青い粒子となってポイントに変換、吸収されて行く二匹のジャイアントベアを尻目に最後の一体の方へ向き直るとそこには、先程までの怒り狂っていたとは思えない怯えきった様子の三匹目の姿たがあった。近付くと全力で逃げられそうな気がしたので戦槌を三匹目の頭部目掛けて全力で投擲した。すると三匹目は驚いて恐慌状態から我に帰った様子を見せ回避行動を取ったが僅かに間に合わずに戦槌が命中して倒れ、その隙を見逃さずに追撃をして最後一体を撃破!
「来た!表記は無いが分かるぞ【生命生成】が使えるようになった!」
思ったより大変だったけどとりあえずこれで目標うちの1つを達成、後は消費しまくったせいで全然足りてないポイントを貯めるだけ…なんだけど〈魔笛〉の効果範囲内にいた魔物を全て狩り終わったのか次の獲物がやってくる気配は無いし、当然見当たらない。
「流石に疲れたし少しだけ休憩……」
そう言ってその場でしゃがみこんで体の疲れを癒し、乱れた呼吸を整えながら思考を巡らせる。
ん〜今となっては大して強い敵の居ない表層でやれば一人でも余裕だと思ったんだけどまさか中層の敵が出てくるとは…ゲームでは魔物を呼び寄せる〈魔笛〉を使ったって別のエリアの敵が出てくるなんて事はなかったから完全に想定外だった、ゲームと現実の差異を甘く見てたな…ん〜多少無理にでも金華を連れて出直した方が…あ?
ーーーブォン!ドガッッン!!
そんな事を考えて思考の産みに沈んでいると、突然背後から何か巨大なら物が風を切る音が聞こえ、咄嗟に横に飛び退いた直後に先程まで自分がいた場所に長い何かが轟音と共に突き刺さり、それによって大きな土埃が立って視界が不ざがれる。
ーーーガッ
巨大な物が飛んで来た方向から地面を強く踏みしめる音が聞こえて慌ててそちらの方に向き直ると、眼前に黒い何かが眼前に迫っており、反射的に上体を逸らすと風きり音と共に黒い何が眼前を通り過ぎて行き、その時視界の端で捉えたもうひとつを無理やり盾で防ぐと凄まじい衝撃が左腕襲い吹き飛ばされてしまう。
「『下位減速』『加重』!」
何時ものデバフに追加でレベルが10になったことで新たに使えるようになった魔法を範囲指定して発動すると想定通り速やかに土埃が地面に落ちて襲撃者の存在が顕になる。
それは黄金に輝く目に縦割れの瞳孔を持ち、人を思わせる体型をしているにもかかわらずその全身は岩を思わせる黒くて頑強な鱗に覆われた存在……リザードマンがいた。
「このもりリザードマンがいるなんて聞いてない…」
もしかして深層からやって来たのか?どう考えても今の疲れきった状態で単独で戦っていい相手じゃ無いんだけど……リザードマンは地面に突き刺さった随分と重厚な大剣を引き抜くとこちらに駆け出した!
今まで無理に攻撃を防ぎ続けたのが祟ったのかリザードマンの攻撃を防いだのがトドメとなったらしく、パッと見でも分かるぐらいに折れ曲がった左腕に着いた盾と盾に着いた紐を外して準備を整え…デバフなど感じさせない速度で迫り来るリザードマンを迎え撃つ。
大きく振りかぶって横薙ぎに振るわれた大剣を身を屈めて回避!カウンターで戦槌を頭にッ!?
ーーーガンッ!!
大剣をしゃがんで回避し、立ち上がる勢いを利用しながら戦槌をリザードマンの頭を目掛けて振り上げたが後隙を埋めるように振るわれていたとても硬質な尻尾に阻まれてしまった。即座に後ろに飛ぶと振り切った方向から低い位置で大剣が横薙ぎに振るわれる。あんな重そうな大剣をあの速度で左右に振り回すとか…攻撃を防いだ腕がへし折れるわけだ。
リザードマンは今の攻防でこちらを仕留められなかった事に腹が立ったのか苛立たしげにその尾で地面を叩くと咆哮と共に大剣を振り上げて飛びかかってきた!
ーーーGLLGAAAA!!!
この攻撃をリザードマンの下を潜り抜けるように回避してリザードマンの背面をとる、『加重』の効果のおかげで今度は砂埃は立たない。攻撃を仕掛けるためにすぐさまリザードマンとの距離を詰めると迎撃の尻尾が振るわれそうになるが勢いが乗る前に尻尾を踏みつけて無効し戦槌を振るう!!
ーーーガッ!ギギギキギギィィィィィィ!!
が、しかし、確かに命中したはずの背後から戦槌の一撃はいつの間にか大剣から手を離していたリザードマンにキャッチされて防がれしまい、更に見せつけるようにリザードマンは戦槌を掴む手に力を込め始めたかと思うと嫌な金属音と共に掴まれた戦槌が歪み始める。リザードマンはその様子を見てトカゲアタマでも分かるレベルで勝ちを確信したような、あるいはこちらを嘲笑するようにニヤリと口角をあげて笑った。
「『軽重』!」
軽量化の効果がある魔法をかけてリザードマンに掴まれている戦槌を始点に体をぐるりと回り込むように回転させながらその油断しきった顔面に回し蹴りを入れて反動で『軽重』の効果の及んでいる大剣を掴んでリザードマンから距離を取る。
ーーーGLL!?
「ハッ!武器交換で仕切り直しと行こうか」
んー啖呵を切ったはいものの『軽重』で軽量化してるのにこの大剣結構思い、少なくともあのリザードマンみたいに振り回すのは片手しか使えない現状では無理そうだ。
武器を取られ、先程までの余裕の態度から打って変わって動揺した様子を見せるリザードマンに戦槌とトレードした大剣を引きずって迫る!同様から立ち直り自分の物を奪われて怒り心頭の様子のリザードマンが即座に投げつけてきた戦槌を身体を捻って回避したが間髪入れずに接近してきてその凶悪なら爪を振るってきた!大剣を後ろに下がりながら振るって爪の間合いである超接近戦を拒否して大剣の間合いで立ち回る。
「ん、ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
が、しかし、なんとなく察してはいたがかなりレベル差があるらしく先程からずっとこっちが有利な間合いで戦っているにも関わらず相手に致命傷を与えられずにいる……大剣を振るってる右腕もかなり痛くなって来たし、たまに相手の防御を抜いて攻撃が当たっても岩のような鱗に阻まれて致命傷には程遠い、自分に同じ鱗に当て続けて破壊するようなトッププレイヤー並の技量があれば別だったのかもしれないが正直言って現状かなりジリ貧だ、しかもリザードマンは防戦一方の現状にフラストレーションが溜まっている様に見え、今にもなにか仕掛けて来そう……あ。
そんな事を考えたのが良くなかったのかリザードマンが先程までの距離を詰める姿勢を辞めて唐突に大きく飛び退いて距離を開けた、その口が淡い光を帯びて…スキル発動の兆候を見せる。この森は表層、中層、深層に別れてて表層と中層にいた奴らのレベル差が多分10Lvぐらいでこのリザードマンが深層から来たとすると…たぶん差はLv20近くあって、そのレベルのリザードマンが使ってくる口を使うタメが必要なスキルは……
「【火の息吹】か!」
下がらずに前に出る。ブレス系の攻撃は例外なく攻撃範囲が馬鹿みたい広い、少なくともこんな近距離で放たれて移動回避が間に合うようなタイプの技じゃない。かと言って近付いてどうする?さっきまで気がついてなかったけどレベル差が10近くもあったら補正値を無視してダメージを与えられる急所に攻撃を当てる以外に勝ち筋が………あ!そうだもう1つ!
リザードマンが【火の息吹】を発動しその火が吐き出されようとしたした直後に大剣をリザードマンの顎目に下から上に叩き込む!
「読んで良かったライトノベル!!」
ブレスを吐き出す瞬間に口が強引に閉じられたとこで炎が逆流してリザードマンはしめやかに爆発四散…とはさすがに行かなかったが穴という穴から炎が噴出して倒れ伏した、死ぬほど痛そうだがまだしんでいない、こんな凄惨な目にあってるのに死なないとかステータス補正て思ってたより効果やばそうだ。
噴出した火を浴びて他よりも大きく焼け爛れた右腕で大剣を振り上げてその開き切った口元目掛けて振り下ろし、瀕死のリザードマンにトドメを刺す……するとリザードマンの体は徐々に見慣れた青い粒子に変わってポイントへと変換、吸収されて行く様子を見て確かに勝利したという確信と安堵が全身を包む。
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!どうにか勝てた…ハハッ全身痛すぎ……」
緊張が解けて思わず全身の力が抜けそうになるが、また次が来たら流石に乗り越えられ無いだろう、一旦此処を離れ体制を…いや、その前に今持っているポイントを見てみよう、今のリザードマン滅茶苦茶強かったしもしかしたら足りているかもしれない!
「思ったよりある、これなら…特殊技能の【手術】に高い適正がある生き物の中で良いのはキュアスライムか?」
ポイントはギリギリ足りているしキュアスライムならデフォルトで回復系のスキルを持っていた筈だから手術ごの処理も出来る。
ーーーザァー………
一陣の穏やかな風が吹き、上を見上げると少し前まで天高くに存在していたような気がする三つの砕けた月の姿は何処にもなく、風に呼応するようち後ろから前へと朝日が差し込む。これはギリギリセーフ…じゃないな、まだ多少有余はあるだろうけど方時間を置かずに二人は目覚めるだろう急いで帰らないと、とりあえずこの腕じゃ大剣を持ち帰るの無理だからポイントに変換して…
ーーーザワザワザワ……ボコッ!
「ん?」
草木が風に揺られる音に混じって何か…土が掘り返されたような音が聞こえたような?
そう思って辺りを見渡すといつの間にかか足元やその周辺に苗木のような物が複数突き刺さっていてそれは異常なことに目に見える速度で巨大化して行っていた。
「……まさかフィールドリセット?やべっ」
戦闘のために作った広場に空間に並んだ苗木が、一際強い一陣の風が吹いたのを合図にしたかのように一瞬で大木に成長し、まるで広場なんて初めからなかったかのようについ先程まで広場だった場所は周囲と何ら代わりのない森に戻ってしまった、更に追い打ちをかけるかのように周囲には先程まで全く存在していなかった複数の魔物気配がポツポツと増え始め……
「これ…生きて帰れるのか?」




