【16】
そこまで考えた所で金華がポツリと震える声で呟いた
「お姉ちゃんには才能がないのかな………」
その金華の発した言葉を聞いた瞬間に心臓の辺りがキュゥゥとなり現実に引き戻されるような感覚に、自分の自然と足はピタリと止まった。
「?どうか…したの?」
確かに才能の差というの存在しているしそれによる覆りようの無い差はある種世界の心理とも言える………
この世界は確かにゲームでは無い…ゲームでは無いがその仕様は間違いなく生きている、だからこの世界も何となく同じなんだと、なんと何しに特に意識するまでもなく勝手にそう自分は思い込んで居た…だから金華の言葉が心に刺さった。
何て情けない話だろうか、勿論金華は悪気があって言ったわけじゃ無いことは理解している…それでも傷付いた、傷付いてしまった。気が付いたら異世界に居て彼女達と出会ってドーンになって命を懸けて恩人であるある彼女達の為に魔物と戦って彼女達と話して…それで強くなったと思ってた。
場所も体も環境も力も元の物とは全く違うものに変わった、だというに……どうやら人という物はそう簡単に変わるものじゃないらしい。
「俺は……そうは思わない。黒蓮って多分魔法使った事無いだろ?金華との差は多分そこにある」
自分への言い訳か、あるいはただ何時もの様に気を紛らわす為か、鈍い思考を巡らせて平常心を意識してそう言葉を発した。幸運にも金華は何時もと違って後ろにいるし…何がかわ自分でも分からないけど異常はバレては居ないはずだ。
「そうだけど…よくわかったね?お姉ちゃんが魔法を使った事が無いって」
殆ど直感で言った事が当たっていた事に安堵感を覚る。浅ましい。
一応黒蓮が魔法を使った事がないと思ったのには理由がある。わかりやすい所だと自分が『重力』を使って1箇所に敵を集めた時に魔法を使う素振りを見せなかったこと。ゲームでは獣人は基本的に近接戦闘用の能力が高く設定されているが狐の獣人はその中でも少し特殊で最初からそれなりに魔法系の能力が高く設定されているためさっさと片付けたかったあの場面で魔法が使えるのに使わないのはおかしいはずだ、実際金華は魔法使ってたし。
「けどそれがお姉ちゃんがスキルを使えないことに関係あるの?」
「スキルも魔法、両方ともやり方は違ってもやってる事は同じだからな、実際発動する時の感覚はそう大きくは変わらなかっただろ?」
魔法もスキルもコストを支払って自分の能力を発動させることに変わりはないし。
「んー言われてみれば確かにそうかも?」
「だろ?それが金華は直ぐにスキルを発動出来たのに黒蓮は発動出来なかった理由…だと思う」
取り敢えず明日黒蓮が目覚めたら一般的な思念入力による発動ではないマニュアルでのスキル発動の方法を教えて感覚を…あ!いや、その前にマニュアル操作による魔法とスキルの発動がゲームと同じように出来るかどうか試さないといないよな、確かマニュアル操作による発動はメニューからスキルを選択して…て、この世界メニュー無いんだった……
てことはもしかしてマニュアル操作によるスキルのスキルや魔法の発動は出来ない……いや待てよ?そう言えば自分は殆ど使った事ないけど魔法やスキルって特定の動作をしたら発動するように設定出来た気がする、登録方法は声と動作だったはずだしこの世界でも機能するかもしれない、これは試してみる価値はありそうだ。
★
道中で魔物に襲われたり黒蓮が急に起きたりするような事は特に起きず、無事に街の中に入り宿屋の部屋に戻って来る事が出来た。ベットにお姫様抱っこしていた黒蓮を横たえさせて、扉を閉めるために後から部屋に入って来た金華の方に目を向ける。
扉を閉めてこちらに向き直った金華のオレンジ色のの瞳はどこか不安げに揺れていて、安心させるような言葉をかけてやりたかった適切と思われる言葉は思い浮かばずに二人の間を沈黙がおおった。とはいえ自分も確認しなきゃ行けない事があるしずっとこうして見つめあっている訳には行かない。
「取り敢えず、黒蓮の呼吸や脈拍は安定しているから疲労で気絶しただけで命に別状は多分ないと思う、しばらくすればめが覚めるはずだ。虫眼鏡の【解析】を使って黒蓮の事を見ても気絶としか表示されないし」
「そっか…それなら良かった」
それを聞いた金華は目に見えて安心した様子だったかまだ何処か不安そうにもみえる。姉が急に倒れたんだからそりゃ不安だろうという見方も出来るが…どうもそれとは少し毛色が違う気がする。
こういう時察して行動して不安を払拭してあげられたらいいんだけど…自分はそんなに察しが良くないし勇気がある方でも無いが…何もしないで入れる性分でも無い。
「金華…どうかしたのか?」
「え?」
「あーいや、別になんでもないならそれで良いんだ。ここに俺がいても色々邪魔だろうし部屋に戻るよ、何かあったら遠慮なく言ってくれ」
そう言って立ち上がり、金華の横を通り抜けて部屋を出て自分の部屋に入りベットに勢いよく寝転がる。
「はぁーやっぱり勘違いだったか…それとも余計なお世話だったんだろうか?」
改めて考え無くと彼女達と出会ってから、今日を含めてもたったよ二日しか経ってない、それであの関わり方はやっぱり馴れ馴れしすぎたし親しげすぎただろうか次から…次からは気を付けないと、幸運にも仲間に入れてくれたからって調子載っちゃダメだ、うん。
「はぁーよしっ」
取り敢えず、気持ち切り替えて行こう!
倒れて居たベットから起き上がる。まずやるべき事は魔法やスキルを身体的な動作と紐付けてそれで発動させる事が可能かの確認…だよな。やり方は確か「スキルor魔法名」→動作→「登録」の順で行えば指定スキルと動作を紐付ける事が出来て、成功するれば登録した動作を行うとそれに紐付けられたスキルを発動させる事が出来るはず。
周囲への影響のない『下位加速』と宣言してから指をパチンと鳴らして最後に登録と言う。そして登録出来たのかの確認の為にもう一度指を鳴らすと……




