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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【11】魔法と魔力

「『引力(グラビティー)』」


引力(グラビティー)』の魔法を発動すると、こちらを取り囲むように周囲に展開していた狼達が見えない何かに引きずられるかのように、草陰に隠れていた物達も含めて徐々に一箇所に集まって行く。発動出来るようになったばかりで熟練度が低いため一瞬で敵を一箇所集めるなんて事はまだ出来ないけれど行動阻害と移動は現段階でも出来るので十分に使いどころはある。


オオカミ達は『引力(グラビティー)』を発動した場所…視線と同じくらいの場所を起点として重なり合うように密集した狼達に槍を突き刺す。当然狼達は抵抗するが殆どの個体は空中に吸い寄せられているせいで地面に足が着いておらず、僅かにいる地面に足が着いている個体も全く踏ん張りが効いておらず不意に抜け出して攻撃を食らったり逃げられる事はまず無さそうだ。


ほぼぶっつけ本番だったからちゃんと発動するのか不安だったけど他の魔法同様にゲームと同じ感覚で発動出来て良かった…


「ドーンあんた…なかなかえげつないわね」


「まぁたしか抵抗出来なくされてから殺されるのは可哀想な気がするけど…安全な方がいいだろ?」


そう言うと黒蓮は変な者を見るような目でこちらを見てくる。今、何か変な事を言ったか自分?…もしかして魔物に同情するような事を言うのはおかしかった?いやでも黒蓮は『吸引(グラビティー)』にかかる狼達を見てえげつないと言ってるしそれは違う?


「確かに安全だけどさ、狼達が拘束から逃れようともがいて互いに傷付けあっちゃってるし一緒に吸い寄せられた枝葉も狼達を傷付けてるからから価値が落ちる前に早く倒そ!」


そんなえも知れぬことを考えて居たが金華の言葉を聞いて慌てて狼達に対する攻撃の速度を早めた。ゲームじゃ倒した時の敵の状態がドロップ品の品質に影響を及ぼすなんて事は基本的に無かったからすっかり失念していたが、ドロップ品なんて無いし、殺した死体を解体してそれで手に入った毛皮や肉を売るのだからそれらに傷が付くような倒し方は良くなかった。


とりあえず『引力(グラビティー)』は緊急時以外使うのは控えた方がいいか……いや〜でもこの魔法敵を一箇所に纏められて便利だしゲームの時みたいに熟練度をあげれば威力の調整が出来るようになるはずだからそれに期待…じゃないな、狩りに生かすことが出来るように頑張って練習しよう。


一箇所に集められ、反撃もままならない狼達を三人で粛々と処理し、追加の敵が再び現れるような問題も怒らず無事に終える事が出来た。


「全部殺ったわね。鞄はジャイアントベアでいっぱいだしドーン、昨日みたいに吸収してくれるかしら?」


「ああ、わかった」


黒蓮に従い狼達の死体を変換すると青い粒子に変化し、自分の中に吸収された。手に入ったポイントはそれなりに狼の数が居たおかげかジャイアントベアを吸収した時と同じくらい増加した、そこのジャイアントベアを倒して増えた分も含めれば探索に必要なアイテムをひとつぐらいは作れそうだ。


「昨日は暗くてよく見えなかったけど本当に吸収してるのね…死体も無くなってるし。ま、まぁ深くは詮索はしないわ、ドーンのおかげで折角倒したのに持ちきれないから放置して行かなきゃ行けないなんて言う歯痒い事態に悩まされなく手良くなったんだもの」


興味ぶかげに先程まで狼の死体が折り重なって居た場所を見つめていた黒蓮だったが、自分が見ている事に気が付くと罰が悪くなったのか弁明するようにそうれ言った。


「そうか、ありがとう。でもまぁどうやってるのか説明しろと言われても俺にも分からないんだけど」


「そうなの?」


「ええ、まぁ」


ゲームと同じで宣言するだけで魔法やスキルが使えるのは楽と言うか便利だから別に良いんだけど、一体どう言う原理で発動しているのか分からないんだよな〜魔法やスキルを発動すると魔力と思われる物が減る感覚こそあるもののそれが動いている様子…と言うか事象に魔力が変換されてる感じじゃなくてだだ消費されてるようにしか感じないし、まぁただ単にそう言う動きのある魔力を認識をまだ認識出来てないってだけかもしれないけど。


「二人とも!重いから早く帰ろ!」


そんな事を考えていると、ジャイアントベアの素材でパンパンに張り詰めた鞄を一つは背負い、二つを掲げた金華が僅かに頬を膨らませ不満げな物言い声を上げる。


「そうね、まだ早い時間だけどジャイアントベアまるまる一頭分の素材があれば十分なお金になる筈だし、ドーンに街の案内もしたいから帰りましょうか」


そう言いながら金華から鞄のひとつを受けとり、自分も金華から鞄を受け取った所ではたと気が付く。


「マジックマッシュルームは?」


「あ、そういえばそっちが本命だったわね」



そんなやり取りがあった後、三度目の魔物の襲撃に会うことも無く無事にダウジングがマジックマッシュルームの在処を示した倒木の元にたどり付き、その倒木を調べて無事採取に成功して帰路に着いた。


特に魔物に襲われるようなことも無く順調に帰路を歩んでいると遠方に何人かの人影が見え、足は止めずにこんな所で何をしているのかと伺っていると金華がその事に気が付いたのか説明してくれた。


「ん?あれは…草木が邪魔でよく見えないけど多分同業者だよ、まだ早い時間だからこんな森の浅い場所にまだそれなりに魔物や薬草が残ってて、それを探してる人たちじゃないかな?」


「なるほど、教えてくれてありがとう」


「ふふん♪もっと褒めても良いんだよ?」


「そう?」


教えてくれた礼を言うと金華は嬉しそうにはにかんで笑い、冗談めかし揶揄うような感じでもっと褒めるように催促してきた。重い荷物を背負って移動してる最中だし別に適当に流しても良かったけど…まだ出会って一日経ったのかも怪しいけど金華には色々と助けられたしそれぐらいは構わないかと、金華へと手を伸ばしてその頭をそっと撫でた。


「……」


は、反応が無い…もしかして間違えた親しげ過ぎたか?そう言えば女の子は髪を触れるのを嫌がると聞いた事があるしそれか?


「…あ〜えっとごめん、もしかして嫌だったか?」


慌てて手を離してそう謝る自分の事を無視して金華は前に進み、嫌われてしまったと後悔に沈む自分の横通り過ぎようとしたその時


「次は…もっと強く撫でてほしい」


そう、金華が小さな声で囁いた。


「いい…のか」


「…早く、行こ?」


そう言って微笑む金華の顔は丁度影になっている事も相まってとても怪しい輝きがかいまみえ、その容姿も相まって妖狐を想起させられた。



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