【105】路上ライブ
「ドーン!さっきは戻って来るのが遅かったけどなにしてたの?」
昼休憩が終わり、路上ライブのために大移動している最中に、金華がそんな事を聞いてきた。カコさんを中心としたライブメンバーを見つけた町人が騒がしいためか、いつもより大きく元気な声だ。
「ルドさんと少しな。ほら、ルドさんとあった時にアイテムを生成するように頼まれただろ?」
「あー確かにそんな話もあった気がするわ」
「何を頼まれたの?」
「それは…秘密だ」
「えぇ〜!いいじゃん終えてよドーン!」
「ダメだ。まぁ4日後ぐらいにはその時を楽しみにしてくれ」
「もー!」
教えて欲しいと珍しく駄々をこねる金華を宥めながら、移動して行く。そうして特に問題が起こる事もなく簡易ステージ時の設営が始まった頃、周囲を警戒している自分の元に人目を避けながらルドさんがやってきた。
「ドーンさん、少しいいですか?」
「…なにかありましたか?」
「いえ、まだ大丈夫です。しかし、問題が起こる予定がありますので、それを先んじて一緒に潰しに行きませんか?」
「…問題が起こる予定が、あるのですか?」
自分がルドさんの発言を訝しみ、そう返すとルドさんは同様する素振りも見せず頷いた。
「えぇ、爆発するタイミングは私の方である程度コントロール出来ておりますので」
ルドさんは当然のこと、なんて事ないように言ったが……常識的に考えて普通そんな事が出来るはずが無い。領主側にスパイを送り込んでいて、その情報からカウンターを用意していると考えるのが妥当だが……天秤の二つ名を持つルドさんともなればそんな規格外な事も可能なのかもしれない。
「せっかくのライブ中に水を刺されるのごめんですからね。こんかいの路上ライブは月隠祭最終日の為の前振り、宣伝も兼ねてますからじゃまされるわけには行きません。と、言うわけで私は今からこちらに向かって来ているであろう領兵をやり込めて来ますのでこちらお願いしますね?」
「わかりました」
ルドさんは自分の返事を確認した後、手をヒラヒラ振りながら人混みの中に消えて言った。ルドさん抜きとなると、今まで以上に気を付けた方がいいな。一応【防御指示】でカコさんも守られてはいるし、この世界のレベルを考えると大丈夫だとは思うけど…わざわざルドさんがお願いして来るって事は何かあるのかもしれないし、警戒レベルをあげた方がいいか。
そうしてルドさんが去ってしばらく後、路上ライブが始まった。
「•*¨*•.¸¸♪✧•*¨*•.¸¸♪•*¨*•.¸¸♬︎」
ホールで聞いた時と同じ曲であるにも関わらず、音楽の…歌の聞こえ方、見え方が違うのは…やっぱり屋内と屋外では音の響き方が違うと言うことだろう。後はやっぱり……スピーカーやマイクの質の差もあると思う、元々使用していた物よりも、いま使われている自分が生成したやつの方が性能は数段上の筈だし。
それはそれとして、護衛の方は今の所特に問題は起こっていない。【魔力探知】【生命探知】にも怪しい反応は写っていない。カコさん達の路上ライブに魅了された人々は道端で立ち止まり、続いて吸い寄せられる様によって来ており、まだ一曲目だというのに通行人のじゃまになるレベルで人が集まって来ているが……今の所カコさんを無視できたひとは人は一人もいないし問題はないだろう、怪しいヤツも見つからないし。
けど、これだけの人がこの街の何処にいたんだってレベルで人が集まって来ているな。魅了系のスキルや魔法なんかを使っているわけでも無いのに、凄まじいことである。まぁこう言うの世界観だと一般人で音楽っていったら吟遊詩人や子守唄ぐらいだろうし、このライブはそんな物とは比較にならないレベルだから、注目を集めまくるのは全く可笑しくない……のかもしれない。実際金華も黒蓮もクラブじゃ目を輝かせてライブに魅入っていたし。
盛況なのはいいことだけど……ここまで人が多いと探るのが結構大変…正直あの人混みの中に隠れられた見つけられる自信がない。まぁそう言うなにか企んでそうな奴は周囲から浮いていそうだし目視確認すれば直ぐにわかるとは思うけど…ただの希望的観測だし、相手もプロだろうしそうやって見分けるのは無理があるだろう。
さて、どうするか…いや、違うな。考え方を変えて…もし自だったら何をして来るのかを考えよう。
目的はルド商会を潰すこと、その為には大々的に失敗させる必要がある。相手は数こそ少ない物の自分達より圧倒的に強い…正式な手順で潰す、或いは失敗させる方法させるやり方はルドさんが潰しに行ったから無理……だけど、物理的にどうにかするぶんに障害が一人消えた事になる。
もちろん高々その程度でどうにかなるような戦力差では無いはずだけど。
まともにやっても勝てず、力押しでも叶わない相手を打ち負かす方法は……やっぱり暗殺だけど、それはさっき失敗したばかり出し、こんな群衆の目を集まって居るような状況でそんな事したら、ルド商会の勢いは殺せるかもしれないけど同情的な意見が強くなって潰すのがさらに難しくなると思うし……
いや、そうか、相手方にはもう時間と余裕がないんだったか。そうなるともうそういう悪あがきをするしか無い…のか?
この推論が正しかったとしてそもそも相手方はどうやってカコさんを暗殺するつもりなんだ?潜伏はダメで襲撃もダメだったっぽいし、自分ならそうだな……遠距離からから狙撃とか?無差別に行えば目的はある程度は誤魔化せると思うし。
そうなるともう少し索敵の範囲を広げた方が良いな。スキル無しで弓矢で狙える現実的な距離はカバー出来てると思うけど、相手方が万が一スキルを持っていたら全く索敵範囲が足りていないし、忘れてたけど一応魔法の事は認知してるはずだからそっちとの合わせ技も警戒した方がいいだろう。
敵が遠距離からの狙撃を狙っているんだとしたら警戒すべきは高所…背の高い建物のはずだ。この街にある背の高い建物、それもこの広場を狙えるような場所は…少し小高い位置にある領主の城と教会か?一応広場に面している建物からも狙えるだろうけどそこら辺はずっと探知範囲に入っているからそこには居ないはず………
領主の舘からなら準備するのは簡単だけど誰がやったかなんてモロバレだし……ん?
索敵範囲を徐々に広げながら怪しい所の魔力と生命力を重点的に探っていた時、索敵範囲の端の方の…変な位置に怪しい反応を見つけた、場所は……地下か?
どうやら自分の予想は全くの的外れであったらしい。そりゃこれだけでかい街だ、地下水路ぐらい通ってるよな……崩落でもさせて事故死に見せかけるつもりか?確かにそれなら犯人探しは始まらないだろうし、安全に殺るのかもしれない。
けど困ったな…地下水路に行く方法なんて知らないんだど………まぁこの世界のレベルなら直接転移して隙を晒しても負ける事はないだろうし。
「黒蓮、怪しい奴らがいるから少し行って来る」
「何処にいたの?」
「多分地下水路。『長距離転移』で直接乗り込むからこっちは任せる。」
「……そうね分かったわ、こっちは任せなさい」
「ああ」
少し思うと所がありそうな黒蓮を背に『長距離転移』でスキルの反応があった地点に転移した……直後。
ーーーガキンッ!!
強い音、衝撃が襲いかかってきた!!




