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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
商人と月影祭
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【102】情報収集

「もごご!」


拘束した敵のうちの一人じ『鎮静』の効果にかかっているにも変わらず何かを元気に話そうとしている。低位の幻惑魔法とはいえ、耐性のない存在が抗えるような生半可な拘束具じゃ無いはずなんだが?実際同様の拘束具で拘束された他の敵は一箇所に集められた後もぐったりしていてる。


こいつだけそうならないって事は、こいつは他の奴らと何かが違うという事で……ずぐにルドさんが駆けつけてくれると思うけど、少し調べて見るか。

男の口枷を外す。すると男は予想通り、待ってましたと言わんばかりに怒りのこもった口調で口早に話し始めた。


「お前ら!こんなことしてタダで済むと思ってるのか!!」


「もちろん思っているさ、君のご主人様程度じゃ俺らにはなにも出来ないよ」


相手の怒りを助長するような口調と発音を心掛けてそう言うと、男は顔はますます赤くなり表情も険しくなる。


「なんだと!?いいか!我が主は……」


「我が主が…どうかしたのかな?なさけないやつ…とか?」


男はそこまで言った所で急に冷静さを取り戻したらしく、俯いたまま黙りこくってしまう。軽く煽りも入れて見るけど変わらず無反応を決め込んでいる。自分じゃ口プでこれ以上引き出すのは無理そうか……主がいることぐらいしか分からなかったけど。


まぁタダ乗りで適当にやってみただけだし、口下手な自分としてはよく出来たんじゃないだろうか?

さて遊びはここまでにしてさっさと催眠道具で聞き出しにかかろう、『鎮静』を耐えたことを考えると希少級(レア)ぐらいの道具がいいか。


道具生成(クリエイトアイテム)】で〈支配の首輪〉を生成し男の首輪にはめる。男は嫌な予感でもしたのか抵抗してきたが力の差は歴然でありすぐに取り付けられた。


「これでよし。それじゃ質問だ、お前の主は?」


「ぐっ…ウォルフォード辺境伯様だ!?な、なんだ??」


「ウォルフォード辺境伯?この街の領主か?」


「そう、だ。く、くそ!や、やめてくれ!」


「……質問の返答のみで言葉を発する事を許可する。なんでルドさんの邪魔をするんだ?」


「そんな事ら知らん、我々はタダ主の名を果たすのみ」


「ルドさん関係でどれぐらいの人数が駆り出される?」


「知らない…くっ、かなり大規模にお動きになっていらっしゃるようだった、少なくともウチ部隊は全員だ」


「目標は?」


「新人の護衛の偵察だ」


予想はしてたけど傭兵ギルドから情報が漏れてるな。


「偵察ならなんで接触してきたんだ?」


「それは…知らん。気が流行った奴がいただけだろう」


「どうして気がはやった奴がいたとお前は思う?」


「…ルド商会のせいで最近は入れ替わりが激しいから、手柄を欲したのだろう」


「そうか…金華は何か気になる事があるか?」


「ん〜…あ、そうだ!ズバリ!この建物にいる仲間の人数は?」


「応えろ」


「14人だ」


14人?…えっとここに居た奴の人数は1、2、3……8人?一人も逃がして無いし他の場所に配置されているんだろうが…そういえばさっき新人偵察って言ったな、ということは黒蓮の方にも人がいるのか?黒蓮はバックヤード待機だから潜入でもされていない限り部隊の何処かに黒蓮が居ると勘違いして探しているのが関の山だと思うけど……ふむ。


「仲間の配置は?」


「ホールに九人、出入口に二人、裏口に二人、連絡役が一人だ」


なるほど…ここに八人いて、このホールに九人いたって事ならこっちの情報は普通に持ち帰得られていそうか?会場にはもう誰もいないし…〈運命の縁糸(えんし)〉を使って後を追った方がいいか?


ーーーカン!カン!カン!


そんな風に考えていると、会場からこのバルコニーに上がる為の階段が激しく踏みならしながら、誰かが駆け上がってくる音が響き始めた。ようやく来たかと其方に目を向けるとやって来た武装した一人の男…エドワードさんを護衛していた、この街の傭兵ギルドにはじめて訪れた時にも遭遇した傭兵の男が慌てたようすで現れた。


「こ、これは…」


「随分と慌ててた様子だが何かあったのか?」


「実は……バックヤードが襲撃されました。お二人がなかなか現れませんので…何かあったのかと私がこうして様子を見に来た次第です。」


「なんだって、無事なのか?」


「ええ、大丈夫です。ルド会長と黒蓮さんのおかげで怪我人は出ておりません」


「それは良かった」


「それと、問題は起きましたが、午後の工程も予定通り行うそうです」


「わかりました」


予定通りに動くって事は向こうも本当に大したことなかったみたいだな。まぁ予定変更は今回の襲撃に屈したり影響を受けたと受け取れるから外見が悪いから変更しないってだけかもしれないけど。


この後、拘束した敵集団を他の人らと協力して輸送し、黒蓮の方に襲撃をかけた連中と一纏めにして、この建物内にある雑居房に纏めてぶち込んだ。


「手間をかけさせましたね。皆さん無事でよかったです。さて、予想外の事態は起こりましたが、午後も予定通りに動きますので、そのつもりで各自準備を行って下さい。では各自通常勤務に戻るように」


ルドさんのこの言葉と、共にこの場は解散する事になった。


「ドーン、そっちも襲われたそうじゃない。大丈夫だったかしら?」


ゾロゾロ持ち場に戻って行く人混みを避けるために端の方で少し待機していると、人混みの中から黒蓮が現れた。言っている事とは裏腹に心配している様子は無く、好奇心の色が強くみえ?。


「もちろんだ、黒蓮。金華も俺もなんともない」


「お姉ちゃんこそ!大丈夫だった?」


「もちろんよ。まぁ戦ったのは殆ど偶然その場にいたルドさんで、私はなにもできなかったのだけど。彼、The商人って感じの見た目なのにすごい強かったわよ」


「そりゃ、あのクランユグドラシルのメンバーだからな、るしさんと同類と考えればそこら辺の奴らとは比べ物にならないのは当然だろう」


種族、職業共に十階梯は確実で商人系の職業は商売で経験値が入る。この街の領主と敵対しているにもかかわらず大きな祭りごとの一つであろう月影祭の運営を許可せざるおえない商売規模となると……一体どうすればそんな事が出来るのか正直想像も出来ない。


仮に祭りが完全に民営のものでもこの街所か地方の長たる辺境伯がノータッチとは到底思えないし……


「正直、護衛がいるとは思えない程の強さだったわ」


そんなことを考えていると黒蓮は少し落ち込んだ様子で言う。


「……まぁ使役系でもなければ一人で守れる場所の数なんてたかが知れてる、複数の場所で起こる問題に迅速に対応するには複数人用意するだろ?そうでなくてもルドさんは商会を経営してるわけだから問題が起こらなくてもめっちゃ忙しいだろうし」


「ん、まぁそうね」


「だから役に立てなかったなんて落ち込む必要は無い黒蓮。出番も必ず来るよ」


「べ、別に落ち込んでなんていないわ!」


「なら、良いんだ。それじゃカコさんの所に行こうか」


キッとした様子で反論する黒蓮をなだめながら自分達もこの場を後にした。

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