【101】ライブ一日目
ーーー♪♪
淑やかに穏やかに、それでいて鮮烈な印象を受ける歌と演奏がにうるさいほどに響き渡っている。
ステージの上ではカコさんが演奏に合わせて歌と踊りを披露しており、観客席からは時折声援が上がっている。酒が入って居るのも相まってマナーのなって居ないもの達もいるがそれは警備の人達で十分に対処出来ているようだ。
少し見ていてわかった事がある…建物の作りはクラブなのに、やってる事は完全にライブに見える。カコさんを中心にメンバー関係のグッツが幾つも売られているし。名前しか知らないが地下アイドルとかのライブはこんな感じなんだろうか?
ちなみに陣形としては黒蓮がバックヤード、自分と金華が2階のバルコニー、他の警備は会場の要所に例の傭兵が五人、普通の人が十人ぐらい。周囲の雰囲気に合わせて紛れ込むために自分と金華はそれらしい服に変更した上で軽く返送している、黒蓮はバックヤードなのでそのままだ。
「ね、どーん」
「どうした金華?」
バルコニーの会場が見渡せる位置に座って警戒を張り巡らせていると、向かいの席に座った金華が何処か浮ついた様子で話しかけてきた。
その様子はこの場所が薄暗い事もあってその全容を窺い知ることは出来ないものの、その顔は妙に赤くふやけているように見えた。
「ふふっ呼んだだけよ!」
「そ、そうか」
そう言って珍しく、柔らかく微笑むように笑う金華に動揺する。珍しい表情に暗闇効果も相まってかいつも以上に金華が可愛く見える。ちなみにお酒は飲んでない、仕事中だから当然だけ、そもそも好きじゃないし。
とはいえ、こういう場所で会場に行くでも無ないのに飲み物が何も無いのは違和感が強いだろうという事で注文したそれっぽいジュースがテーブルの上に置かれている…んだけど。
改めて金華の顔をまじまじと見る。金華は見られて照れているのか、恥ずかしそうに顔を赤らめながら体をモジモジとさせている…視線も体幹もしっかりしている、飲み物が実はお酒だったなんて事は無さそうだ。多分場酔いしてしまっているだけだろう。
金華から目を逸らしライブ会場を見下ろす。
会場にいる警備も含めて全員が楽しそうにカコさんライブに熱中してるし、良からぬことを考えている不審者がいれば目立ちそうだな。
ーーー♪♪ーー♪
……クラスがは踊り子で発動しているスキルは【舞踏】【鼓舞】【歌唱】【魅惑の踊り】あたりか?ステージを照らしている光はおそらく魔術によるもの。スキル、魔法はもちろん魔術も一般的じゃ無いこの世界から見て未来技術てんこ盛りこのライブ劇薬もいい所だろう。
この条件の上で踊っているのは美女少女がありふれていた前世でもそうそうおめにかかれない様な抜群のプロポショーンの美女ときた!これで人気が出ない方なおかしいし……領主を筆頭しとした貴族家が過激の行動をするのもうなずける。
ーーーぎゅむっ
「き、きんか?」
「むぅ!」
そんな事を考えながら会場を眺めていると先程まで正面の椅子に座っていたはずの金華がいつの間にか近付いてきており、不満そうな顔で抱きついてきた!予想外の金華の行動に動揺し、二の句を告げないでいると金華が先に口を開いた。
「ドーンも…やっぱり大きい方が好き?」
「大きいほう……もしかして嫉妬してるのか?」
「別に嫉妬なんてしてないよ?でも、ドーンさっきからずっと見てるから…気になっただけ!」
別にカコさんの事を見ていた訳では無いんだけど。
「金華はまだ小さいけど、姉である黒蓮が大きいんだからそのうち大きくなるよ」
持ち直して冷静にそう告げると、金華はどこか微妙な表情で見つめ返してくる。なにか返答を間違えただろうか?
「はぁ」
金華はため息を一つ着くと、そっと自分からなはれて元の位置に戻り、テーブルに置いてあるジュースをグイッと飲み込んだ。
そんな金華の不思議な行動に疑問を抱きながらも、ライブはつつがなく進行して行き……昼の休憩時間になった。ひとつ何事もなく無事に終わったからと言って気を抜くのはよろしくないだろう、実際こういう間隙を突く襲撃は定番中の定番だしな。
ライブ中に怪しい連中を何人か見つけたから、なにかはあるだろうけど…結局行動を起こす事はなかったし、報告して引き続き警戒し続けないと行けないだろう。
…人の数が減って来たし、そろそろ移動しよう。そう思って椅子から立ち上がろうとした直後、金華にグイッと引っ張られてる。
「どう「静かに、見られてるよ」なに?」
金華にそう告げられ、会場に集中させていた意識を自分達がいるバルコニーに向けて【魔力探知】で周囲を確認すると、金華の言う通り異様にこちらに注意を向けている人が何人かいるのが見つけられた。
金華に促されるままに少し待っているとライブが終わり、お昼も近いということでまばらにいたい客が一人二人とバルコニーを立ち去って行く……そうして怪しいヤツら以外全員が立ち去ったところを見計らって立ち上がり金華と共にこの場を去ろうとすると、怪しい連中のうちの一人が階段への道を塞ぐように立ち塞がった。
明日に備えて何か細工をするためにこの場に残っていたのかとも思っていたけど……どうやらもっと過激な連中だったらしい。
「邪魔だからどいてくれないか?」
「……」
少しすごみながらそう目の前の男に伝えるが、とうせんぼを辞める気配は無く、どう対応すべきかと逡巡していると、こちらの事を気にしていたい人物のひとりが足音を殺しながらこっち駆け寄って来るのを【魔力探知】で把握し、振り返ることも無く相手が突き刺そうとしてきたタイミングを合わせて腰だめに構えられたナイフ事敵を掴みあげて目の前のとうせんぼう男に投げ付ける。
その直後に別にの奴から吹き矢らしき遠距離攻撃が金華目掛けて飛んできたが基本的に常時展開している【防御指示】の前に無効化されて床にその弾が転がった。
「さて」
『加重』で手早く…と思ったけど、黒蓮になるべ使わないように言われてるんだった。そう出なくてもここは2階にあるバルコニー…そんな事をして床が抜けてしまったら、間違いなく面倒な事になる。今のところルドさんはただのいい人だが、ゲーム時代は悪い話も良く聞いたし出来るだけ隙を見せるべきではない。
ならどうするか……『減速』と『加速』を発動して、敵にデバフを自分(バフをかければ…良い感じに出来るのではないか?
「【道具生成】『減速』『加速』」
【道具生成】で敵を素早く拘束するための道具を生成し、『減速』を敵に『加速』自分達に付与してそれから『次元収納』から取り出した金華の武器を金華に渡した後、敵を一気に駆け出す。」
とうせんぼう男とナイフ男は重なり合っていてすぐには動けないだろうから後回し、金華を攻撃した奴は素肌に弾かれたことに動揺しているみたいだから後回し、壁際に居るやつも後でいい…優先的に狙うべき対象は会場に飛び降りて逃げれる奴らだ。
捕まえる時は最初に追跡していた奴のように服毒自殺する可能性を考慮した拘束をする必要があるからそれ用の拘束具を生成したが……ふむ、相手の魔法耐性が高くないらしく、敵と自分の相対速度はかなりのもになっているようだがそれでも無尽蔵にという訳では無いから手早く済ませよう。
口、足、手の準備で素早く拘束して行く。カチッとハマるタイプで装着者に『鎮静』の効果があるからそう簡単に変な事は出来ないはず。ちょっと大盤振る舞いすぎる気もするが、ポイントはまだまだあるし…
と、言うわけで素早くバルコニーを駆け回って敵を拘束して行く、逃げ出そうとしている敵もいるがその動きは非常に遅く……全員を拘束するのは簡単だった。
「どうだった金華?」
「か、…誰も逃げられてなかったおもうよ!」
「?そうか、それは良かった」
「もご!ごご!」
捕まえた奴らひとまず一緒にまとめながら、金華に逃がしたやつはいなかったかの確認をしていると、捕まえた奴らのうちの一人が騒き急に騒ぎ始めた。『鎮静』の幸か不幸で動くのすら億劫なはずだが……




