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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
商人と月影祭
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【97】感想

やっと思いでゴーレム十体を倒しきった金華と黒蓮。二人とも地面にへたりこんでしまっていて、その表情からも二人の疲れ具合がよくわかる。


二人を手早く回収して、今生成したベットに寝かせる。


「ど、ドーン…」


「二人ともお疲れ様。怪我はもう治ってるし…黒蓮の怪我も後に引くことは無さそうだから、安心して休んでいい。」


「違うわ…ドーン」


「?」


「私はまだやれるわ」


疲労で震える手で掛け布団を下ろして、ベット上で体勢を起こそうとする。


「無理するな」


だから自分はそう言って起き上がった黒蓮の()()()()()ベットに押し倒す。普段の黒蓮ならこれぐらい軽く跳ね除けていただろうに、当然だけど本当に疲れているみたいだな。


「あっえっえっと」


黒蓮は同様したような感じで、変な声を上げながらも大人しくベットに再び寝っ転がってくれた。


「先に金華を部屋に連れて行くから、少し待って来てくれ。」


「ま、まって!」


「なんだ?黒蓮」


「えっと、その、私が先じゃダメかしら?」


黒蓮は体をモジモジと動かし、頬を赤く染めながら恥ずかしそうに言った。あの黒蓮がいじらしい感じでそう言ったのだ。


あの気の強い黒蓮がそんなふうにはなすとは微塵も思っていなかったから……びっくりだ。ドキッときた。


「……まだやれるんだろ?すぐに戻って来るから、良い子にな」


そう言ってお願いを聞いてあげれないお詫びに黒蓮の頭を優しく撫でた後、金華の元に向かう。

金華は布団を口元まで被った状態で、ジト目で自分の事を見ていた。


「ドーン?」


そう自分の名前を呼ぶ金華の声はとても不機嫌なものだ。


「お姉ちゃんにさ、触っちゃダメだって言ったよね?」


「あ」


そういえば朝、朝食を2人と一緒に食べた後に、自責の念にかられて落ち込む黒蓮を慰めるために撫でようとした時に…金華にそう言われて止められた気がする。


「はぁ…忘れてたんだねドーン」


「ごめん」


「誤まるならお姉ちゃんにでしょ?」


金華が怒気をにじませた声色でいう。全面的に忘れてた自分が悪いので縮こまることしか出来ない。


「そうだな、直ぐに「まって!」どうした金華?」


金華の言う通りすぐに謝ろうと踵をかえして黒蓮の所へ向かおうとした所で、金華からまったがかかった。


「残念だけどお姉ちゃんはもう手遅れだと思う!」


金華が真に迫った様子でキッパリと驚愕なこと言言った。


「ええ!?少し触れただけでダメとか…一体なんの病気なんだ?」


ゲームに登場した、物理接触によって状態が進行する病気をいくつか思い浮かべ、それらの対処法を思案する。金華は今朝聞いた時のように恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、今度は理由を話してくれた。


「お姉ちゃんはね……は、発情期なの!」


「えぇ?」


「金華!」


金華が告げる黒蓮の驚愕の病名!…に若干肩透かしをくらっていると、黒蓮が起こった様子で金華の名前を呼んだ。


発情期…発情期ね。なるほど、確かにそれならここのところ黒蓮の様子がおかしかったのも、黒蓮に触っちゃ行けないのも頷ける。交配は殆ど触れた事がないから詳しい所は分からないけど、ゲームと同じなら異性との接触で深度が上昇して期間が伸びるから……うん。


「黒蓮ってあのままで大丈夫なのか?」


「…もしかしてお姉ちゃんとそう言うことしたいの?」


何となくそう聞くと、金華が先程よりもムスッとしたようすで言う。


「そう言う意味で聞いたんじゃ…」


「ドーンはお姉ちゃんが嫌だって言うの!」


「ええ……」


なんと言っても怒る金華をどうにか諌めてダンジョン内の金華部屋まで運び、その後に黒蓮の元に戻ると、トマトの様に顔を真っ赤にした黒蓮がモジモジしていた。


「お待たせ」


「ど、ドーン…その、優しくしなさいよね!」


「お誘いは嬉しいけど……安静にしていれば一ヶ月ぐらいで収まるはずだ。いくら辛くても、好きでも無い奴に抱かれるような事を…良しとしないでくれ、頼む」


「別にだい」


黒蓮が何か言い終わる前に『転移』で部屋移動させる。


「………」


黒蓮が『転移』させられる直前になんと言おうとしたのかは……何となく分かる。けど、それは酔っ払いの言葉の様に信用にたるものでは無くて……けどその事が分かった上で自分がその妄言に靡いてしまいそうな気がして………


「はぁー」


大きなため息を着いて、気持ちを切り替え二人が戦った後を見やる。壊れたゴーレム達とその破片や二人の血痕が残っている。掃除するのは手間が掛るし、ポイントには余裕があるのでこの訓練場を一旦消して再度生成する事によって文字通り新品に元通りだ。


こういう無駄使いしてる癖に、ここのところポイント稼ぎもしてないから減って行く一方なのが少し不安だけど、るしさんとその部下がよくダンジョンの遊戯室に入り浸ってくれているおかげで収支マイナスにはなって無いし多分大丈夫…なはず。


訓練場の修理と改良を終えて時間を確認するとちょうどお昼頃だった。丁度良いので訓練所を後にして食堂へ行くと底には既に金華が熱々のハンバーグを前にして席に座っていた。


「金華、隣いいか?」


「だめ」


「えぇ?」


予想外の金貨の返答に気の抜けた声が自分からもれた。いつも金華の方から自分の隣に座って来るから大丈夫だと思ったんだけど………自分金華になにかしちゃったっけか。


「き、金華…俺、なにかしちゃったか?」


「べーーーつに」


そう言って金華がぷいっとそっぽを向く。まぁさっきもなだめただけで、機嫌を直してくれた訳ではなかったし……


「黒蓮の事なら抑制効果のある魔法薬を渡したから安心していい」


「……抱いてないの?」


金華がジト目のまま器用に片眉を上げて言う。一触即発の空気感が辺りを支配しており、返答を間違えれば取り返しのつかない事になりそうな予感がヒシヒシと伝わってくる。


「当然だ。弱味に漬け込んでそんな事しても…虚しいだけだろうからな」


「ふーん」


そう言って…まだ何処か不服そうながらも、金華は食事に戻った。自分の返答はどうやら及第点は貰えたらしい。自分は〈希少級(レア)〉以上の料理をランダム生成するように設定してある宝箱を開けてその中身を取出す。


宝箱の中から出て来たのは…鰻丼だった、鰻丼を持って金華の元に戻ってきて、その隣の席に座ろうとすると拒絶され、正面の席に座らさせられた。

横はダメなのに正面は良いのか。


「ドーン…お姉ちゃんにその魔法薬はちゃんと飲ませたの?」


「いや、あんまり俺と一緒にいたくないだろうと思って渡しただけだ」


「そっか……今ここにいないってことはお姉ちゃんその薬飲んでないよね」


「……そうだな、魔法薬は基本即効性があるし」


金華の言う通り、もしちゃんと魔法薬を飲んでいたのなら症状が収まって、今頃三人で昼食を食べているはずだ。


「じゃ今から飲ませに行こうドーン!」


「いや……ダメだろ。俺は男だぞ?」


「ほら!いいからいくよ!」


自分はまだ昼食を食べている途中なのを無視して金華は自分の手を引いて歩きだし、こうして自分は金華に連れられて黒蓮の部屋にむかう事になったのだった。

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