一生初期アバターでダンジョン攻略しないといけなくなったからには、周りは気にせずひたすら鍛えるしかない。初期装備のままで。

世界にダンジョンが出現して以来、探索者はそこでしか手に入らない物品を売りさばいたり、ダンジョンの配信でバズったりと、ダンジョンをうまく利用していた。

彼らはダンジョンから与えられる『騎士』や『魔術師』といった特別な能力をダンジョン内の探索に役立てていたが、水梨（みずなし）創（そう）が得たのは『初期アバター』という未知の能力。

それは、あらゆるダンジョン内のアイテムを手に入れることも装備することもできず、常に初期状態でいなければいけないかわりに、それらを経験値に変換できる能力だった。

強力なアイテムや装備を使えないハンデを少しでも埋めるため、水梨は他の探索者がダンジョンを利用し美味しい思いをする傍らで、ひたすらアイテムを経験値に変換し続ける。
……すでにダンジョン探索者の中でも最強レベルになっていることにも気付かずに。