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恋座目屋
二人はその足で《恋座目屋》に向かった。扉を開けると、昼間にもかかわらず酒場には数人の客が杯を傾けていた。その場にドモンジョの姿は見当たらない。ギルドの依頼書――つまりは手配書に添えられた人相描きに一致する人物はいない。
「いらっしゃいませ」宿の女中がやってきて、飲食か泊まりかを尋いてきた。ロベリアと同い年くらいの可愛らしい少女だった。ルークは宿泊を頼み、二階の部屋へ案内して貰った。「お夕食は後でお持ちします」といって、女中は酒場の客に給仕をするために降りていった。
ルークとロベリアはすぐに与えられた部屋から廊下に出た。二人の部屋から四つ離れた場所が、ドモンジョがいるというレオナルドの言だった。ロベリアがルークを追い越して、その部屋に向かう。今度は礼儀正しく、ノックをした。
「誰だ?」返事があった。男の声だ。
「お夕食をお持ちいたしました」少し高い声色でいった。先ほどの女中の振りをしているのだ。
「なんだ、もうそんな時間か。居眠りをしていたよ――」
扉が開いた。すぐさまロベリアが飛び込む。