求婚者
キンスキーの時計塔で日暮れの鐘が鳴り響くとき、ヘランハルメは墓地に立ち、自分の妻が眠る棺桶の上に造られた石碑を、ミンツェを連れてきて掃除させればよかったと後悔した。彼女への愛は百年もすれば冷めたが、今は少しだけ当時を思い出していた。「お前の次は、ロベリアという娘だ。たとえ僕が信心深くとも、神と対話できるのは巫女だけだ。だからミリー、僕の前途を祈ってくれ。女神メリオランテの恩寵に浴する者は美しい少女だった。彼女に僕の子を産ませたい。イングリッドを生き返らせたあとで」
そのとき気配を察して彼は振り返った。黄金の髪に包まれた美麗な顔立ちに見惚れて、墓守の少女は少年が近づいても逃げなかったが、顔を寄せた彼に口を吸われると紅潮した。名前を訊かれたのでモナと答えると、優しく頭を撫でられた。
「もう少し成長したら、僕の妻にしてあげよう」と、自分と同じくらい小さな男の子に言い寄られて、彼女はときめいた。
「約束だよ」
「ああ、数年後に迎えに来よう。君は可愛い。きっと美人に育つよ」
仕立ての良い服を着た少年がモナに微笑むと、彼は浮遊した。空高く舞い上がり、夕日に向かって飛び去って見えなくなった。まるで夢のようなひとときだったが、唇の余韻はまだ熱を残している。




