真夜中の熱
「おはよう。ミンツェは素敵な夜を過ごさなかったようだね。君がキスしたがっているルークと、妹のロベリアはどこ?」ヘランハルメが早朝に起きると尋ねた。
「近くの小川に魚を獲りに行きました」ミンツェが答えて、自分の気持ちを覗かれていたことへの怒りを隠したが、それも読心術で見透かされているのかもしれない。
「今日はキンスキーの旅籠に泊まるぞ」ヘランハルメはワインで口をゆすぐ。「ふたつ部屋を借りるから、お前はルークと寝てやれ。僕はロベリアを抱く」
「彼女は、御師匠様を受け入れないと思いますよ」ミンツェは、焚き火に薪を足しながら警告した。「ルークと一緒の部屋を望むでしょうし、身体を望まれたら刀を抜いて斬りかかると思います。そしておそらくは、そういった経験もありません」
「なんだ、つまらん」ヘランハルメは残念がった。「それなら今夜はお前が僕の相手をしろ、ミンツェ」
「はい、わかりました」
役に立たないから彼らをパンクラトフに返せ、とはいわれなかった。もしも昨夜、ルークが自分の寝床に息をひそめて潜り込んできたら、喜んでこの身を捧げるつもりだった。だが彼はあくまで紳士で、火の番を交代するときにミンツェが軽く口づけすると、やさしく返してくれただけだった。おかげで彼女は自分の熱を抑え込むのに苦労した。恋をした男の子ともう一度旅ができて、師匠には感謝していた。
ルークとロベリアが大漁の川魚を抱えて戻ってきた。ミンツェはそれに塩を振って焚き火で焼き、朝食を拵えて全員で食べた。
小休止してから、またヘランハルメの浮遊魔法で飛び立ち、一行はキンスキーへと向かった。




