恩師との再会
目覚めると枕元に少年が立っていた。
「久し振りだね、ミンツェ。僕のことを覚えているかな?」差し込む朝日に照らされて、見下ろす彼は微笑した。
「……はい、御師匠様」彼女は大魔術師ヘランハルメを認めて、ベッドから起き上がった。「わざわざ私の家までお越しくださるなんて。どうされたのですか?」
「千里眼で最近の君を観ていたよ。特に泥濘は、いい使い方だったね。雷鳴もあくまで自然現象のように表現していた」師は弟子の魔法を褒めた。「ファーギンに会ったんだ。あいつの予知で、また君が出てきた。僕の目的を、手伝ってくれないかな」
と打診されれば、ミンツェには断る道理がない。ヘランハルメは恩人だった。戦争でヴァンサンに負け、ガルシア王国のまで逃げ延びたミンツェは、パンクラトフで盗賊まがいのことをして生きていた。ある日、宝石を盗んで捕まった彼女は、店の主人に陵辱されそうになった。そこにヘランハルメが現れ、ミンツェを救い出したのだ。彼曰く、
「弟弟子の預言に君が出てきた」と。「君の後見人になって、魔法使いとして育てろとね。自分でやればいいのにさ」
ミンツェは彼の屋敷で一年間、様々な魔法を仕込まれた。戦場で腕を失った彼女にとって、それは戦うための新しい武器となった。急成長した彼女は後に、ヘランハルメに《イングリッドの涙》を紹介してもらい、スクラッパーの一員となった。
魔術師ファーギンの預言に自分が出てきたのなら、師匠との再会は運命づけられている。ミンツェは訊いた。
「御師匠様は、なにをされるつもりなのですか?」
「港湾都市ヤスミンへ、癒しの神に会いに行くんだ。そのために人が必要なんだ。君の知り合い、ラッセル兄妹にも声をかけてくれ」




