ルパート・モルダーの素顔
「災難だったな、ラッセル兄妹」首長室でギルドマスターが声をかけた。「たった今、念話で報告を受けたよ。ミンツェの拷問によると、ルパート・モルダーの正体は盗賊の残党だった。あの馬車の本来の持ち主を襲った張本人さ。被害者の商人を護衛していたのが、《エテルの猛獣》のメンバーだったが、全員戦死した」
ルークたちはルパートを拘束し、パンクラトフへと帰還していた。
マスターが続ける。「ルパートはその場の唯一の生き残りで、運び荷のダイヤを我が物にした。そして我らに、他のギルドからの報復を恐れて護衛を依頼したんだ」
「私たちを襲った男たちは、仲間の敵を討つつもりで先回りしていたのですね」
「そうだ、ロベリア。彼らの死体と馬車は、ルパートとの身柄とともに《エテルの猛獣》へと引き渡す。手打ちの交渉は私とオリヴァーに任せてくれ」
「行こう、ロベリア」
マスターに連絡を終えたふたりは、首長室を出て特別室へ向かった。地下へ降りると、扉のひとつが開いて返り血を頬に付着させたミンツェが現れ、片手を上げた。
「ああ、もう終わったよ。手首を切り落としただけで全部吐いてしまった。ロバートに奴を運ぶのを手伝ってもらったけど、自分の出番がなくてぼやいていたよ」
ルークはマスターから真実を伝え聞いたことを彼女にいった。
「抗争に発展しなそうでよかったですわ」とロベリア。
「相手側も、むやみに戦いたくないだろうさ。あちらから刃を向けた落ち度もある。それにダイヤだ。所有者不明の持ち物を渡してやれば、きっと話し合いが成立する」ミンツェが手巾で血を拭う。「私が任務に誘ったせいで、無駄な働きをさせてしまったね」
「君は悪くない」ルークが否定した。すべての元凶はルパートにある。彼は他のギルドで、相応の報いを受けるだろう。おそらく命を対価に。「ミンツェと共に行動できて、僕は嬉しいよ」
「ありがとう、ルーク」
ふたりのやりとりに、ロベリアが訝しんだ。




