パンクラトフでのいつもの暮らし
フィオナ、ミクロスと別れて、四人はパンクラトフへ帰ってきた。
「どれだけ待たせれば気が済むんだい?」オリヴァー・ホワイトヘッドが苦言を呈した。「もう返ってこないかと思ったぞ」
「心配してくれたのではありませんの?」ロベリアが噛みついた。
「君たちは十分強いからね、むしろ勝手に暴れていないかぼくは心配だよ」
ぎくりとなった。ルークたちはキンスキーで、《第七星教》の刺客を皆殺しにしている。そして、後始末もせずにそのまま逃げてきたのだ。どうやら《イングリッドの涙》には、憲兵も信者も来てはいないらしい。
ジェームズ、ロバートとルークたちは別れた。
「じゃあな、また一緒に任務を受けることがあれば、よろしく」ロバートが握手を求めてきた。「ルーク、俺の命を救ってくれてありがとう。そしてロベリア。君は指を生やしてくれた。感謝している」
ふたりはロバートの手を握り返した。
ジェームズとも挨拶を交わして、兄妹は久し振りの帰路につく。
自宅の床に荷物を下ろして椅子に腰掛けると、どっと疲れが溢れてきた。ロベリアは早速ベッドに倒れ込んだ。そしてすぐにすやすやと寝息を立ててしまう。
「よく頑張ったな」ルークは妹に毛皮をかけてやり、暖炉に火をつけて部屋をあたたかくした。
二月の激動を思い返していると、ルークも眠くなってきて、やがてそのまま静かに瞼を閉じた。
ロバートは昼間に帰宅した。ベッドに寝転がると、隣の棺桶からいびきが聞こえた。姉貴とこれだけ離れていたのはいつ振りだろうな。任務の成果を報告するために日没を待っていると、つい眠ってしまった。ふと気配に気づいて目を覚ますと、闇の中にミトラが立っていた。
「ロバート、その指はどうしたの?」
「ああ、姉貴。ロベリアが治してくれたんだ。ほら、新入りのルークの妹だよ」
「それはよかったわね」ミトラの表情は暗くて見えない。「これで貴方はもう一度剣を握れるわね。さあ、はやく死体を持ってきて。あなたがいない間、ずっとひとりで人狩りしていたのよ。お姉ちゃんのお腹を満たすのを手伝ってちょうだい」
そしてロバートは日常に戻った。姉のために、毎晩人間を攫って殺害する日々に。




