招かれざる客人
「皆、起きろ!」ロバートが叫ぶ。「俺たちに、お客さんだ」
訓練を受けているジェームズとルーク、ロベリアは飛び起き、それぞれの得物に手をかけた。ロバートが扉をゆっくりと開けると、そこには老夫婦が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ありません。貴方たちはギルドの方々でしょうか?」老爺が話しかけてきた。「《イングリッドの涙》のメンバーですよね?」
「ギルド? 何の話だ? 俺たちはただの冒険者だ」ロバートが咄嗟に嘘を口にした。別の都市にいるのに、自分たちの身元を知られている。これはかなり危険だ。
「隠さなくてもよいのです」今度は老婦人がロバートに声をかけた。「ずいぶんとお若いんですね。あら、他の人も……、子どもばかりだわ」彼女はラッセル兄妹や、まだ寝ぼけているフィオナをみていった。
「しかし、年齢は関係ないんだよ」老爺がいった。
「そうですね、お爺さん」老婦人が夫の手を握って、「全員、私たちと一緒に死んでくださる?」そのあとに自爆した。
爆撃。しかしロバートは防御魔法を使用して防いでいた。はじめから嫌な予感がしていたのだ。前回の襲撃者と同じで。
衝撃で扉が廊下に吹き飛び、爆音を聞きつけて他の部屋から宿泊客が次々と外にでてきた。「どうしたんだ?」「何があった?」「夜中にうるさいぞ!」彼らはぞろぞろとロバートたちの部屋になだれ込んできて、文句を言い終えると武器を構えて突撃してきた。「死ね!」「神よ、我らに祝福を!」
「風刃!」ロベリアが後退するロバートを追い抜き、巨大な斬撃をジョセフィア・メイヴァーの刃から走らせた。複数の客の胴体が一気に真っ二つになり、廊下はたちまち血の海になる。生き残った数人はルークが首を落とし、ジェームズが額を射抜き、ロバートが腹を引き裂いて処理した。
死体の山が出来上がり、そこへフィオナが飛び込んだ。血まみれで死肉を漁る彼女はやはり化け物だ。我慢できなくなったロベリアが彼女に刀を振り上げそうだったので、ロバートは慌ててフィオナを催眠魔法で眠らせて拘束した。「王都に行くまで縛っておこう。俺たちは廃太子を探しているんだ。居場所を突き止めて王に報告すれば、たっぷり褒賞がもらえるぞ」
「…………わかりましたわ」ロベリアは納刀した。「だけど、この有り様はどうして起きたのです? この間の男たちも、なぜ私たちを狙うのでしょう?」当然の疑問を口にする。
「俺は、自爆した老夫婦に見覚えがあるぞ」ジェームズが突然告白した。「《第七星教》の本部にいた信者たちだ」
「なんですの、それは?」ロベリアが訊く。彼女はあの任務に参加していなかった。
「お前が家で火傷を治しているときに、僕らが壊滅させた宗教団体だよ」ルークが妹に説明する。
「まさか、教祖を殺された復讐か?」とロバート。
「それしかないだろう」ジェームズが死体のひとつから自分の矢を抜いて、矢じりに付着した血を布で拭った。「あの場所に信者は大勢いた。襲撃はこれからも続くと考えていいだろう。夜のうちにキンスキーを発つぞ」




