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竜の姫君と巫女  作者: 剣持真尋


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夜の番


 キンスキーの旅籠は、《ベルガマスキ》よりもはるかに安く、半分以下の金額で大部屋に宿泊できたが、代わりに質素で所々雨漏りしていた。フィオナに寝首を掻かれないように四人は警戒し、建物の中にいても交代で眠った。青髪の少女の寝顔を眺めて、ロバートは思い出した。姉のミトラが吸血鬼ヴァンパイアになったときを。


 ミトラ・キャッスルは、盗賊を追ってこの街に来ていた。そして弟の彼も。月光が輝く真夜中に、姉弟は奴の居場所を突き止めた。とある家屋に忍び込んだとき、ベッドの上には少女が眠っていた。彼女の相方の姿が見えず、警戒した瞬間だった。背後のミトラが、悲鳴をあげた。ロバートが振り向くと、男が姉に噛みついて、血を啜っていた。彼は剣を抜いて助けようとしたが、柄を握る指を、男のナイフが切り落とした。命からがら逃げ出したときには、朝日が昇っていて、姉は太陽に焼かれてもがき苦しんだ。そのときから義足のミトラは夜を生きることを強いられた。そして定期的に殺人を犯すことを。生き延びるために。


 五年後に、ニコラ・ド・ドモンジョは死んだ。仲間の命と引き換えに。だが、眷属になったミトラは今も生きている。


 フィオナは、おそらく生まれながらの化け物だ。屍食鬼グールは人に感染しない。だから愛らしい容姿であってもロバートは同情を覚えない。俺らに牙を剥けば即座に殺す。しかしミクロスとの関係性が分からない現状では、泳がせて様子を窺うべきだろう。正直ロバートは王族の行方など興味がない。フィオナを始末して早くパンクラトフに帰りたい。だが育ての親はそれを望まないだろう。王国のために命がけで戦った人間には、君主の実兄は守護すべき存在だからだ。


 あらためてフィオナと旅をする決意を固めたそのとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

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