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竜の姫君と巫女  作者: 剣持真尋


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少女の正体


「どうしてもワインが飲みたいですわ。私が支払いを持ちますわ。みんな、店に着いたら酒と料理を好きなだけ注文してください。フィオナ、ステーキもきっとあるわよ」ロベリアは馬を降り、自然な表情でフィオナに話しかけた。「この前は驚いてしまったけれど。私はもうそれを気にしてないですわ。でも今夜は家畜の肉を食べてね」夜風は冷たくて、暖炉が恋しい。一行はキンスキーに到着した。



 いつの間にかロベリアの膝を枕にして眠っていたことに気づいて、ロバートは急いで起き上がった。「す、すまないっ」


「ドラゴンに食べられたらいいですわ」ロベリアは怖いくらい笑顔だ。殴ったりしてこないのは、満腹のフィオナを肩に寄せて眠らせているからだろう。


 慌ててルークを窺った。彼は、肩肘をついて酒場のテーブル越しに俺のことを見ていた。表情は穏やかだが……。


「ロベリア、ロバートは酔っていたから許してあげてくれ」


「もちろんですわ、お兄様」妹は兄貴に素直に従った。


 この都市の名物らしい羊の肉を、茹でた野菜と一緒に口に運んだジェームズは、ロバートの容体を横目で確かめてから、ワインで流し込んだ。「顔を洗ってこい。そのあとフィオナの嗜好について話す」


 ロバートは急いで店の水瓶を拝借し、すっきりして席に戻った。「熟睡している間に、彼女の好物の理由を考えるのか」


 屍食鬼グールや姉と同様に人肉に食らいつくフィオナの正体は、何者か。


「では、ロバートの予想をいってみろ。フィオナはミトラと同族だと思うか?」


「いや違うね」自信を持って断定した。「姉貴は血液をワインみたいにがぶ飲みするが、人肉食じゃない。あいつは変態だから、捌いて内臓を掻き出したあと、ちょっと味見したりもするけど、主食はあくまで人間の血だ。目の前の焼死体を『ステーキ』呼ばわりするような概念は持ち合わせていない」


「フィオナは、人間に化けているのではありませんの? 知能あるモンスターが肉にありつくために」ロベリアがいう。


 ジェームズが首肯する。「その通りだと思う。俺は彼女を屍食鬼グールだと疑っているよ。彼女は幼いが、美しい。男を魅了して食うために、無垢な少女を演じていたが、本能に逆らえなかったというわけだ」


「だけどあの死体漁りどもが、どうしてワイバーンの巣で気絶していたんだ?」ロバートが疑問を投げかけた。


「死んだふりではないでしょうか?」とルークは発言した。「彼女はワイバーンに狩られた。そして擬死して身を守った。そこへ僕らが巣に侵入してきて、人間に保護された。自分の正体を偽るために、記憶喪失を装っている」


 彼の仮説に、三人は同意した。しかしそれでは、一つの疑問が残る。


 なぜフィオナは、バベット村の魔術師カーンが廃太子だと知っていたのか?

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