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破格の酒代


「ワイバーンって、普段なにを食うんだ?」ロバートは豚の骨付き肉にかぶり付き、次にエールで流し込んだ。シジクの森の入り口に所在するバベット村の酒場の料理に、夢中に頬張っている。ルークと一緒で彼もそれほど酒には強くないらしい。少し飲んだだけで、顔が赤くなっていた。といっても自分の妹に比較したらの話だが。「やっぱり生肉か?」


「そうに決まってますわ」ロベリアも酒瓶を喇叭らっぱ飲みしながら豚足を噛んだ。「草食の火竜がいるわけないですし。ましてワイバーンには丸焼きする手が無いですわ」


「人間の肉でも食うだろう」ジェームズが、パンを囓りながらいった。家畜はもちろん、あのモンスターは飼い主まで歯牙にかけた。本当の意味で。その結果討伐依頼がギルドに出された。「牧童も丸囓りだが服は残した」


「生け捕りにしなくていい」店主はワインの樽をテーブルに置きながら、子羊の腸詰めを噛んでいるルークにいった。「あんたらが、ギルドの人だな。ドルフの敵を討ってくれ」


「知人か。不幸だったな」と、ジェームズ。


「友人だった」彼は自分もワインを呷った。


「約束します。あなたも村の依頼人のひとりなのですか」ルークは尋いた。依頼書に提示された報酬は個人で賄える額ではなかった。


「そうだ。皆で金を出し合い、依頼をした」


「牛肉のステーキはあるか?」


 新しい客が店に入ってきた。店主は入口を見つめる。初老の男が杖をつきながら座席に座ろうとしていた。足が不自由だが顔つきは精悍で、頬に傷がある。鎧を着用していれば戦場から帰還した廃兵と皆が思っただろう。「飛び切り旨い部位を頼む。三皿は欲しい」


「牛肉は沢山あるが、代金は先払いでくれ」


「ああ、金は無いんだ。その代わりにこれでなんとかならないか」男が懐から取り出した強烈な輝きに、ルークたちも目を奪われた。蒼く光る丸い形の石は、ロウソクの炎よりも明るく酒場を照らした。


「オリカルカムだ……こんな高価な宝石、俺は初めて見たぜ」ロバートが唖然として呟く。


 店主は呆気に取られて、なんとかいった。


「そんな高額な物品を持ち込まれても困る。釣りの金貨なんて、何十枚も持っていない」


「ああ、いいんだ」男は腕を伸ばし、店主の手に宝石を渡して緊張させた。もし落として砕けたりしたら大変だ。「釣りはいらない」


 店主が驚愕してオリカルカムを掲げると、目を輝かせた。黒い瞳が蒼く染まっている。「俺は金持ちになったぞ! パンクラトフに店を持てるくらいに!」彼はルークたちにもいった。「あんたらも今から奢りだ。好きなだけ飲み食いしてくれ。店の在庫を空にするくらいに!」

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