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竜の姫君と巫女  作者: 剣持真尋


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死との邂逅


 美しい女ドリー・クックソンは、緊張したサッチャー夫妻に微笑む。「こちらの部屋へどうぞ」彼女は二人を大広間へ連れていき、「ラジャブ様がお話をされます」といった。


「大丈夫かしら?」エリゼは群衆の列に並ぶ夫に不安をこぼした。「ウィリアムは天国に到着したと思う? テイラーはまだ五歳よ」


「エリゼ、可愛い孫娘は十年後に父親と再会できるだろう。神のお膝元で」嫁を殺しても救われると信じて、フランクは愛する息子を送り出した。ウィリアムと同じ凶器だった。


「ああ、なんて高貴なお方」エリゼは壇上を見上げてため息を洩らした。「神々しいわ」


 信者の眼前に導師ラジャブ・キリレンコが現れた。聖衣を纏っていて、右手の人差し指には宝石の埋め込まれた指輪が輝いている。


 長い時間法話に耳を傾けていると、導師は突然口を閉ざした。先ほどサッチャー夫妻を案内してくれた女が袖から飛び出してきて、ラジャブの耳元でなにか囁いた。彼は側近を退けようとした。「今信徒に話をしている」


「協会内部に襲撃者です、お逃げください」ドリーは食い下がって、彼へ避難を促した。


「親衛隊はなにをしている」導師ラジャブは苛立った様子を見せた。「先日タローランを襲った奴らか、今度こそ皆殺しにするんだ」


 群衆がざわつく。「どうなされたんだ?」


「はじめまして、ラジャブ・キリレンコ君」


 ドリー・クックソンに刺客の排除を命じ、導師は振り向いた。見知らぬ隻腕の少女が、強力な防御魔法の付与された甲冑を着用した私兵の死体を引きずって、可愛らしい小顔に返り血をべっとり付けて背後に立っていた。


 殺人者は胴体を切り裂いた兵を投げ捨て、空いた手に剣を握って標的へと振り回した。


 美少女に一振りで首を落とされたことで、死への苦しみを感じずに済んだ。そのあとに彼が何処へ行くのかは誰も目にしていない。目撃した信者は、祈りを忘れて逃げ惑った。

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