大切な人が死んだ
キュピレット通りに現れたギルドの面々が「放水魔法」や「防火魔法」を唱えると、ロベリアは走り出した。ジーラが焼け焦げた姿で息を引き取るのを確かめた。彼女の治癒魔法でも治しようがなかった。ジーラは死んでしまった。
ドモンジョの本体を見つけたロベリアは殺意を抱いた。しかし愛刀ケヤラ・リン・ラロンドは使えない。だか、そうなれば魔法で攻撃するだけだ。
「雷鳴鉄槌!」
稲妻が天から落ち、ドモンジョは光に包まれた。
ロベリアと同時に声が聞こえた。「魔法壁」轟く雷鳴が消えたとき、ドモンジョの頭上に残った障壁と、無事な彼の隣にいたのは、令嬢だった。
「ウィロードの魔女!」ルークは叫ぶ。
「あれが、魔女なのか?」ジェレミーが面食らった。その姿と、展開された障壁の硬度と、ロベリアの攻撃の威力に。「可愛いお嬢ちゃんじゃないか」
「気をつけて! 変身魔法かもしれないわ」リリアンがいう。「きっと正体は醜い老婆よ」
「なんという魔力だ」マスターが瞠目する。「全員でかかれ、でなければ全滅だ」
《イングリッドの涙》の精鋭たちが、一斉各々の魔法を行使する。全員、幼女に狙いを定めて。
「走りなさい、ニコラ」魔女がいった。障壁はすべての攻撃を防いでいる。
ドモンジョがその脇をすり抜けて、ギルドのメンバーに肉薄した。そして、
「自爆しろ」魔女が命令した。
ニコラ・ド・ドモンジョはその通りにした。彼の肉体は内側から弾けて、巨大な爆炎を周囲に撒き散らした。ドモンジョは、死んだ。




