復讐を果たす者
ジーラがキュピレット通りにたどり着いたとき、雨は止んで夜空に満月が昇っていた。月明かりの眩しさに目を背けて石畳の上を歩き始めた。真夜中で、通りには人気がなかった。道の隅で、ネズミがちょろちょろと駆けていく。前に進みながらジーラは目の前の家からドモンジョが一人で出てくるところを目撃した。黒いローブに身を包んで顔を隠しているが、こちらの気配に気づいた向こうから近づいてきた。その目は闇に光り、殺意を剥き出しにして襲いかかってくる。しかしジーラも渾身の憎悪を込めて、戦斧を振り上げた。
「風刃!」
ドモンジョは、素手だった。腰にダガーを差しているが、彼はその斬撃を、
「反射魔法」手のひらではね返した。「お前を殺してやる!」
「こっちの台詞よ!」衝撃波を斧で受け止め、ジーラは叫んだ。渾身の一撃を弾き返され、自分の技でダメージを負う。腕に裂傷ができ、血がこぼれた。
「分身魔法」と、ドモンジョが五人に増えた。そのうちの四人がジーラを取り囲み、自爆した。
轟音と炎に包まれて、ジーラは悲鳴をあげた。目の前に光がちらつき、その中に愛する人の顔が見えた。
ハリス……
これが走馬灯だろうか? それとも、彼が迎えにきてくれたのだろうか。私は死ぬのだろうか。ジーラは婚約者の幻影に抱かれた。だが、たしかに、焼けた肌に感触があった。彼女の躰を誰かが強く抱きしめていた。




