眠りから覚めたふたり
ドモンジョの眼は涙を流した。ジャクリーヌの元に駆け寄り、彼女の小麦色の頬を撫でた。「無事でよかった」
毛布を捲るとジャクリーヌの躰には、古傷が複数あった。戦場で戦っていたにもかかわらず、目新しい怪我はなかった。最後に一緒にいたとき、彼女は血と泥で汚れていたが、今は寝間着に着替えさせられ、綺麗で、清潔だった。ウィロードが治癒で手当てしたのか。
恋人は安らかに寝息をたてていたが、背後に立つウィロードが気になり、ドモンジョは緊張した。
「どうしたの、ニコラ?」彼女は首を傾げた。「感動の再会でしょう?」
「俺たちをどうするつもりだ?」ドモンジョはきいた。なぜ、敵であるふたりをこの女は助けたのか。
「あなたは仲間だといったでしょう、ニコラ・ド・ドモンジョ。私の従僕になってもらうわ」ウィロードはにやりと笑った。
「ヴァンパイアとして、親になったお前は、俺を服従させるために、彼女を人質にするつもりか?」そのために生かして連れ帰り、眠らせているのだ、とドモンジョは歯軋りした。
するとウィロードはかぶりを振った。長い赤髪を払い、それから安心させるようにいう。「その娘にはなにもしないわ、ニコラ」
そのときジャクリーヌは目を覚まし、ドモンジョの姿をとらえ、叫んだ。
「おお、ドモンジョ!」振り返った彼に抱きついた。「生きていたのね!」
「ああ」ドモンジョは彼女の温もりをしっかりと感じた。「お前こそ、無事で安心した」
「他のみんなは? ピーボディたちはどうなったの?」
「皆、死んでしまった。俺たち以外」目の前のヴァンパイアに殺された。
「ああっ、そんな……」ジャクリーヌの絶望に心が痛んだ。
「お話の途中で悪いけれど、もう朝がきたわ」するとウィロードは、ベッドの近くの窓のカーテンを開けた。朝日が差し込む。
その光が二人を照らしたとき、ドモンジョの躰に激痛が走った。




