ウィロードの魔女
ウィロードの魔女は相当な実力者だと理解した。「あの一瞬でロベリアの刃を防いだ」ルークはその事実に冷や汗を感じた。「余程の者でなければあの業物を破壊できないはずだ」これまで数多の戦場でロベリアの力となり、共に戦うルークを護ったケヤラ・リン・ラロンドの無惨な姿。ドモンジョが、襲撃のために彼女を呼んだのだろうか?
「殺してやりますわ!」刀を折られて、激昂するロベリア。
「私に背骨まで折られたいの、それとも頭蓋?」魔女はドモンジョの両腕を手にとり、すると一瞬で新しい腕を生やした。ロベリアの治癒魔法よりも洗練された処置だった。「今日のところは痛み分けってところで、どうかしら」
「あんたは強い。ドモンジョが、僕らへの襲撃を諦めてくれれば」ルークは頷いた。「これ以上戦う意思はない。彼女の刀は新しく買い替えるさ」
「それだけじゃなくて、この子を追い回すのを止めてほしいわね」
ロベリアは黙っていた。魔女の力を今一度目にして、自分の魔法とは格が違うことを知った。刀として死んだケヤラ・リン・ラロンドを見つめる。
「僕らにギルドの連中を抑える力はない」とルーク。
魔女は微笑んだ。「私が、ドモンジョを助けたのは久しぶりだわ。大抵の人間は彼一人で対処できるから。あなたたちこそやるわね」
「そりゃ、どうも」
「それでは、ごきげんよう」魔女はそういうと、ドモンジョと共に目の前から姿を消した。
「どこへいきましたの!?」ロベリアは驚愕した。
ルークはまだ魔女の視線を感じていた。「上だ、ロベリア」
見上げるとはるか上空に二人が浮かんでいた。ロベリアはあっけにとられて、呟いた。「浮遊魔法……」
大地の縛りから抜け出す高等魔法を操り、ドモンジョとウィロードの魔女は、そのまま雨雲の中へと消えていった。




