空から降ってきた女の子
ロベリアの頭上から稲妻が落ちてきた。しかし、絶縁魔法がまだ効果を残していて、彼女が感電することはなかった。
それは自然の驚異ではなく、何者かによって放たれた明らかな魔法による攻撃だった。
「なんですって?」ロベリアは突然自分に向けられた他方からの敵意ではなく、ドモンジョに振るった己の愛刀の状態に瞠目した。
ケヤラ・リン・ラロンドが折れている。盗賊の首を刎ねる筈の部分が消失し、鍔に残された短い刀身が空を斬る。失った箇所は、ドモンジョの真横にあった。見つけた刃は、手に握られている。突如隣に出現した誰かに。
「ロベリア! その娘から離れろ!」ルークが妹に叫んだ。ロベリアがこちらまで飛び退き、距離をとって二人は対峙した。
貴族服の少女が、そこにいた。
「怪我はない? 我が従僕」彼女は握ったケヤラ・リン・ラロンドの残骸を放り捨てた。
ドモンジョが振り向くと、幼い令嬢の足元が陥没していた。閃光と共に上空から急降下し、殺される寸前で自分を護ったのだ。高いところから落ちてきて、無傷な上に、刃をへし折った手のひらから血を流さない。
「ウィロードの魔女」ルークはそう確信した。ヘランハルメの言葉通りに、盗賊と魔女に出会ったのだと。




