大魔術師の予言
ルークとロベリアは、ドモンジョがギルドからサラサを連れて逃げ出したとは知らず、魔術師ファーギンを訪ねていた。そして、老エルフの占いに導かれて、大魔術師ヘランハルメと屋敷で彼と話したのだ。
「時間の無駄だったのですわ、お兄さま」ロベリアは兄と手を繋いだ。「あの魔術師、貴族のお坊っちゃんにしか見えませんでしたし、単に妄想病なのかも知れませんわ」
「あの人の屋敷を出てから、空気が湿ってきた」ルークは空を見て黒雲が彼方から迫ってくるのを認めた。「天候操作なんて大規模な魔法、お前でも無理だろう」
ロベリアは驚いた。「お兄さま、まさか信じていらっしゃるの?」
そのとき雨が降り始めた。ヘランハルメの屋敷を出てからまだ少ししか経っていない。昼間、ファーギンに面会したときには天気は快晴だった。
街の人々が、家路を急いで二人の横を走り去っていく。
「防水魔法」ロベリアが唱えると、紫色の魔力が二人を覆った。ルークとロベリアも、新しい宿に戻るために足を早めた。今夜はもう遅い。ギルドへの報告は明日でいいだろう。
パンクラトフのウィロード通りに差し掛かったとき、ルークは殺気を感じて辺りを警戒した。「ロベリア!」
ロベリアも愛刀ケヤラ・リン・ラロンドを抜いている。
すると、路地の隙間から何者かが飛び出してきた。
「死ね!」男が大剣を振り下ろし、ロベリアと刃が激突した。
「ニコラ・ド・ドモンジョ!」ルークは叫ぶ。怪力を誇るロベリアと剣圧が拮抗していた。その目は復讐の炎に燃えている。
「雷撃!」ドモンジョの剣先から、雷が打ち放たれる。それは、ロベリアの刀に通電し、彼女に襲いかかる――
が。
「絶縁魔法」ルークが防いでいた。
ロベリアとドモンジョ。二人の剣撃が続けられるなかルークは自分の剣を構えた。
銘を、セドリック・アルベルト・モワナ。




