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竜の姫君と巫女  作者: 剣持真尋


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19/89

酒場の夜


「うーい」


 ロベリアが酒瓶を傾けて空にし、ルークは本数を数えて所持金が心配になった。幸い、パンクラトフにくる前に貯めた金はかなりの額だったから、一ヶ月分の宿代を先払いしていても、まだ余裕があった。「飲み過ぎだ」


「私は大丈夫ですわ」彼女はレオナルドにまた注文した。


「《ウラーヌス》の酒樽を飲み干すことになりそうだ……」ルークは呟く。


 マスターは久しぶりの上客に浮かれていたが、段々と心配な顔つきになってワインを置いた。「俺は偽の情報は流していなかった」


「そのようですね」ルークはエールを少しずつ飲みながら、ことの顛末をレオナルドに話終えたところだった。「部屋の窓が空いていた。ドモンジョは僕らが来たときに、素早く罠を仕掛けて逃げたのでしょう」


「正直なところ、あんたらは死ぬと思っていた」


 ロベリアがそれに文句をいおうとしたが、瓶を咥えた。


 レオナルドはカウンターに片腕を置いて身を乗り出し、なぜラッセル兄妹が無事に戻ってこられたか、理由をルークにいった。「その年で、強いんだな。ハリスとマリウスがやられたと聞いたが、彼らはベテランだった。それなのに新人のメンバーが、あの極悪人を追い返すとは」


 真面目な称賛に、ルークは微笑んだ。本当はロベリアだけが、優秀なのだ。しかし、彼女が無事でよかった、とも思う。


「強かろうとなかろうと、逃げられたのは失敗でしたわ」とロベリア。彼女はやっと、酒から手を離した。


 ルークは懐から貨幣袋を取り出して銅貨を何枚かレオナルドに渡すと、その上に、銀貨を一枚上乗せした。


「次のドモンジョの潜伏先かい?」


「はい。奴がこの都市に居座る理由も」小さな宿屋を乗っ取ってまで。パンクラトフよりも巨大な都市や、ガルシア王都の方が、悪事を働くには抜け道が多いだろう。いつまでも同じ都市に留まれば、それだけ警戒網が敷かれ、動きにくくもなる。


 レオナルドは困った顔をして、「実はわからないんだ。でもパンクラトフから離れたという噂は今まで一度も聞いたことがない。きっとまた、居場所が割れるさ」


「ロベリア、帰ろう」


「……どこへですの?」


 夜は更けていた。《恋座目屋》には、もう帰れない。

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