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打ち砕かれた心


「気丈なお嬢さんだ」


 もう見ていられなかった。「治癒魔法ヒール!」ロベリアはサラサに駆け寄り手を翳した。傷が見る間に再生していく。「私たちがこの拷問部屋に来てから一時間。これ以上は無駄です。死んでしまいますわ」


「女の子を殺すよりも、復讐のほうが大事だわ」ジーラは納得したようで、鞭を持った手を下ろした。もしかすると……、満足したのかもしれない。恐ろしいことだが。


「あなたの心は死んでいますわ」ロベリアはジーラを睨み付けた。


 当然のように、ジーラは頷いて手巾で返り血を拭きはじめた。「ドモンジョに半身を殺されたときに、壊れてしまったわ」


「他の部屋に閉じ込めておきたまえ」


 ジーラは室内に揃えられた様々な拷問器具と拘束具の中から、手枷を取ってサラサに取り付けた。「監視は任せてください。マスター」


「目的は別のところにあるのでしょう」ルークはギルドマスターの指示からして、外の廊下の別の扉は地下牢だと気づくと、決意に満ちたジーラの目を見た。「ドモンジョが、彼女を救いに現れるのを待ち受けるつもりだ」


「そうよ、お兄さん」ジーラはそういって、サラサに繋がれた鎖を引っ張り、特別室を出た。


 サラサは引き摺られ、向かいの部屋に入れられた。扉が閉じる前にロベリアにいった。「ありがとう」


 それまでずっと髪の毛を毟っていたオリヴァーが、「受付を務めないと」冷ややかなラッセル兄妹の視線を避けて離脱した。ギルドマスターは拷問中に手を出さなかったし、ドモンジョの情報を聞かなかったが、立ち会っていたときの表情はずっと冷酷だった。今、彼は努めて冷静に見えた。


「君たちは戦場帰りだそうだな。こんな光景は日常的だったろう。私にはギルドの仲間を守る義務がある。今やドモンジョは標的ではなく敵対者だ。奴を倒す。君たち二人のためにも。これは言い訳ではない。ジーラは復讐に囚われているが、ギルドが拷問するのは異常なことではない。特別な機会ではあるが」


 納得できないなら脱会してもらう。それ以降の安全は保証しない。仲間ではないから。そういって部屋を出るとジーラに、「後でマリウスに交代させよう」と言い残して上階へ去っていった。


 取り残されたルークとロベリアは。目の前で番をしているジーラに睨まれた。「いつまで立っているの。はやく出ていきなさいな」


「本物の、火猫ファイアキャットは?」ロベリアはミーアを案じた。


「殺して棄てたわ」


「最低ですわ」


「あなたのおかげで髪質が良くなったわ」


「最悪ですわ」ロベリアが吐き捨てる。「行きましょう。お兄さま」といって先に廊下を歩いていった。この国で初めてできた友達を残して。

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