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甘えた声


 ドモンジョの逃走から七日が過ぎた。ロベリアは宿に住む火猫ファイアキャットを手懐けた。この魔獣は清らかな美少女を好む。彼女はすぐに気に入られた。ミーアと名づけられた使い魔は二人の泊まる部屋の扉を引っ掻き、喉を鳴らして、招き入れた妹に撫でられている。「いい子ね、紳士さん」雄猫はいつも、主人に階下から大声で呼ばれるか、まだ新米らしい女中に抱き上げられて連れ出されるまでロベリアの膝に居座っていた。サラサと呼ばれている彼女にも、ミーアはよく懐いていた。


「収穫といえばあの毛並みと、この都市で寝泊まりする場所だけですわ」美しいロベリア・シドニィは、腰かけていたベッドに倒れこんでため息をついた。「どうしましょうか?」寝そべったまま、暖炉の前の椅子に座っている兄を見ていった。


「ドモンジョは戻ってこないし、ギルドの人たちもやって来ないな」手配書はもちろん、ギルドの依頼書はまだボードに貼り付けられているだろう。


「みんな弱気なんですわ」ロベリアは、ギルドのメンバーが二人任務に失敗したことを言い出して、「仲間が殺されたのに怖じ気づいているんじゃないかしら。仇討ちもなしに、不人情ですわね」


「もしかするとドモンジョは捕まったのか?」ルークがいった。ここではない場所で。


「そうかもしれませんわね。あんな奴大したことなさそうでしたし」


「取りあえず報告も兼ねて《イングリッドの涙》に戻ろう。ジーラさんやギルドマスターに奴の行方が噂になっていないか尋いてみるんだ」


「酒場のマスターにもですわ」ロベリアは立ち上がり、「行きましょう。はやく帰ってミーアと遊びたいですわ」暖炉まで歩いてくると、ルークの膝の上に腰かけた。


「出発するんじゃないのか?」


「お兄さまの成分を充電してからですわ」ロベリアはいった。妹も甘えたいようだ。ルークは頭を優しく撫でてやった。

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