新天地
――汝、常闇の如くあれ。
ルーク・ユーバンク・ラッセルは妹のロベリアと共にギルド《イングリッドの涙》を訪れた。
「今日から新天地ですわね。お兄さま」
「そうだねロベリア。今回は失敗しないように頑張ろう」ルークは彼女に笑いかけた。
失敗――アバスカル帝国で彼らは傭兵として生きていた。しかし、先の対戦によって軍は壊滅。命からがら逃げてきたこのガルシア王国での再スタートを目指していた。二人は今回、冒険者になるつもりだった。
もう戦争は懲り懲りだ。ルークは思う。今度は自由気ままな冒険者になるつもりだった。もう、妹をあんな危険な目に会わせるわけにはいかない。そんな決意を胸に、小都市パンクラトフにやってきた。
「酒場のマスターから尋いたところ、ここが都市随一のギルドらしい」
たしかに《イングリッドの涙》の正面玄関は立派だった。無骨な石造りの建物だったが、その圧倒的な大きさと質量が見上げる者に荘厳さを感じさせ、そしてどこか静謐な気配も漂っている。二人はドアを開けて中に入った。
「御免ください」勘定台に座っている女性に話しかける。「このギルドに所属したいのですが」