ごたごたな日
これはとあるママの気が向いた時に書くブログまがい。
基本的に読んでもらうために書いているのとはちょっと違うので、興味のない方はブラバしてください。
時間のある時にだけ、徒然と思っていること、覚えていることを備忘録として記載していきます。
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さて、今日は昨日のゴタゴタを文章に起こそうと思う。きっと数日後には忘れるたわいもない1日。我が家はだいたいゴタゴタと過ごしているのだが、昨日は特にひどかった。
ゴタゴタの発端は昨日の朝。
娘ちゃん、「行ってきます」をする直前、突然思い出したかのようにこう言い出した。
「おちょーめんね、昨日、ママ入れてなかったよ?」
「……は?」
わかりにくいと思うので翻訳しよう。
【保育園のお帳面(連絡ノート)が昨日カバンに入っていなかったんですけど? ママが入れ忘れたんでしょ!どうしてくれるのよ!】
ぷりぷりと可愛いお顔でそんな事をお嬢様が宣った。
言われたこっちは、まぁまぁパセリを噛んだような苦い顔をしてしまう。普段、保育園から家に帰ると、玄関先にカバンを置いたままなので、家でお帳面がカバンから飛び出ることなんてまず無いのである。
なんでお帳面がカバンから消えてなくなるんだ?
と思ったが、言ったところでどうとなる訳でもなく。仕方がないので既に時間ギリギリの朝、削れるところまで時間を削ってお帳面を探した。
結論から言うと、それでもお帳面は見つからなかった。
保育園の先生に二日続けてお帳面を忘れた事を謝りながら娘ちゃんを足早に預け、横殴りの雨の中、傘を吹き飛ばされそうになりながら走った。強い風のせいで傘はあまり役に立たず、コートも靴もべちょべちょ。最悪な朝だった。
もちろん、それもこれもお帳面が行方不明な所為である。
よって、夜に帰宅次第、息子くん娘ちゃん、そして私のお帳面捜索隊が結成された。なんとしても今朝の二の舞は嫌だった。
無くしものを探す時、そこには戦略が必要となってくる。効率的に探さねば、見つかるものも見つからない。
作戦その1は記憶の確認だ。
本人の記憶から一番近いところに無くし物は存在することが多い。と言うことで早速娘ちゃんに聞いてみた。
「娘ちゃん、カバンの中出した記憶ある?」
「ん〜〜〜??」
「一昨日はお帳面あったのかな?」
「わかんなぁい」
4歳児の記憶なんてこんなものである。仕方がないので、息子くんにも聞いてみる。
「息子くんはお帳面見なかった?」
「お帳面ってなんだっけ?」
「……去年まで毎日使ってたよね?」
6歳の記憶力だってこんなもんである。
大きなため息を一つ吐いて、私は手当たり次第にリビングを片付け始めた。これこそ作戦その2である。
ものをなくした時の作戦その2。目星もつかない探し物の場合部屋の端か順番に片付けをしていく。端っこから一歩ずつが原則だ。戸棚の裏、机の下、ソファと壁の間などを隈なく見ながら一歩ずつ一歩ずつ進んでいく。
娘ちゃんも私の真似をしておもちゃを片付けたり、戸棚の裏を見てみたりしてくれた。
が、この作戦が思わぬ方向へ事態を進めていってしまうのだった。戸棚の裏を確認していた娘ちゃんが、突然何かを片手に逃げ出した。逃げ出したと言うことは何か私に見られたくない後ろめたいものがあった時。つまり悪いことをしている時だ。
私は探し物を中断して後を追った。すると、娘ちゃんは寝室でなにかをペリペリと開封している。
そして、そのパッケージを見た瞬間、私は娘ちゃんが何をしようとしているか察して慌てて寝室に駆け込んだ。
「ダメ!!!」
大声と共に娘が持っているものを取り上げる。
4歳児は本当に恐ろしい。体は大きくなってきてはいるものの中身はまだまだ幼児そのもの。ちょっとずつ知恵もついてきているからこそ怖いのだ。例えば、戸棚の裏にたまたま落ちていた初めて見たもの。なんだろうと思ったら、自分のものにしたい。
しかし、「4歳まで見たことのない物」というのは大体、私が隠している「危ないもの」なのだ。
だから戸棚の奥に隠してあった『排水溝洗浄薬』の小さな円柱型の白い薬剤をラムネ菓子か何かだと勘違いたのだろう。取り上げられた娘は既に泣きそうな顔をしている。
「これはねお菓子じゃないの。絶対に開けちゃいけません」
「ううぅぅ、ママ抱っこ」
「勝手に持っていったらダメだし、勝手に食べるのもダメだよね?」
「ごめんなさい!」
「食べなかったからいいけど、これ食べたら痛い痛いになっちゃうんだからね!」
「ごめんなさいってば!!!(怒)」
抱っこされながら、謝りながら、怒りながら私にしがみつく4歳をヨシヨシしながら、洗剤を手に取る。ひとつ錠剤が開封されていてゾッとした。食べる前に発見できて本当によかったと胸を撫で下ろす。
「娘ちゃん怒ってるけどね? どうして食べちゃダメなのか教えてあげるからこっちおいで?」
食べたかったラムネがラムネ出ないことが理解できないのである。娘ちゃんからしたら、ママが意味もわからない理由をつけて私からお菓子を取り上げた、くらいにしか思っていない。
これではいけない。納得しないと、また同じことを繰り返してしまう。私が見ているところだったから良かったがいなかったら大惨事だったのだ。
私は開封されてしまった洗剤を片手に持ち、もう片方の手で17kgもある娘を抱え洗面台に向かった。
「いい?これはお薬です。食べる方のお薬じゃなくておててを洗ったり、カビをやっつけるためのお薬です」
娘に錠剤をよく見せる。
いつも食べているお菓子と見分けはつかないだろうが、私はそれを排水溝にぽとんと落とした。
しゅわしゅわしゅわ。
「聞こえる?」
「うん」
「バイキンさんをやっつける音だよ?」
「……」
娘が真剣に排水溝の穴を覗く。これでわかってくれたかな、と思っていると、すぐにしゅわしゅわ音が消える。水分が足りなかったかな?なんて蛇口を捻るもうんともすんとも言わない。
しゅわしゅわぶくぶくと泡立って、食べ物じゃないことをしめ押すとしていた私は首をかしげた。
「歯ブラシ」
ぽつり、娘がそう言った。
「はい?」
「歯ブラシ。娘ちゃんの」
娘ちゃんが真剣に穴を覗き込んでいた理由がそこにはあった。
なんと、娘ちゃんの歯ブラシがストンと排水溝に落ちたのか挟まっているではないか。さらにいうと、歯ブラシと排水溝の隙間に先ほど落とした錠剤が見事に挟まってる
「うそん」
「娘ちゃんの歯ブラシあったねー」
数日前、急に姿を消した歯ブラシがそこにあった。どうして、常につまり止めの蓋をしているのにここに入るんだ?誰か教えて欲しいもんだ。
「あ、それ僕が落としたんだった」
息子くんのテヘペロが間髪入れずに教えてくれた。
「そういう時は、隠さないで話してくれないとダメでしょ!排水管詰まっちゃうんだよ?」
「ごめんなさーい」
こっちの謝罪は本当に口だけだ。最近体がめっきり大きくなったにつれて態度もどんどんと大きくなって困っている。
「……予定変更。娘ちゃん。これはお薬。わかったね?」
「うん」
「ママ、まずこの歯ブラシ取ることにするわ」
「はーい」
「二人は向こうに行ってて」
「はーい」
とりあえず作業の邪魔にならないように二人を追い出し、ピンクの歯ブラシと私の戦いが始まるのだった。
まず、詰まってしまっている錠剤を溶かすべくお湯を注ぐ。汚れなんてない歯ブラシの横でしゅわしゅわ音が虚しく響くのがなんとも切なかったが、そんなことを言っていられる状況でもない。ある程度流水を当ててから、キッチンへ行き、竹串を持ってきた。幸いにもギリギリ錠剤に届いた。そのまま挿して上に持ち上げたかったが、思いのほかしっかりと挟まってしまっているので作戦変更。竹串よりも長いさえ箸を一本犠牲にして、無理矢理錠剤を奥に押し込んだ。
なんとかぎゅうぎゅうの状態から解放された歯ブラシだが、ここから引き上げるのもまた大変だった。さえ箸でパイプに押さえつけて指が届きそうなところまで引きずっていくが、出口付近で引っかかる。
とうとう私はもう一本のさえ箸を犠牲に、三十分以上かけなんとか歯ブラシを排水溝から引っ張り出すことに成功したのだった。
真っ黒い歯ブラシを娘ちゃんと息子くんに見せる。排水溝の汚さはこれでわかってくれたはず!あぁ、疲れた。時刻は間も無く二十二時を回る。みんな支度して今日は寝よう!
さぁ、全てがおわ……
っていないのだ。振り出しに戻った私が絶望したのはいうまでもないだろう。
また、明日の朝、今朝と同じことを繰り返すのだろうか。
疲れ切った私は絶望しながらも、すがる思いで息子くんにこう聞いた。
「お……お帳面みつかった?」
「うん!」
「!!!!!!!!!!!」
「娘ちゃんの机の引き出しにしまってあったよ!」
「うおおおおおお!!! ありがとおおおおおおおおおおお!!!!!」
この日ほど、息子くんが頼もしく思えた日はなかっただろう。
私の大ピンチはこうして息子くんによって救われたのであった。