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徒然なるママです。  作者: いもねこ
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秘密のお菓子タイム

これはとあるママの気が向いた時に書くブログまがい。

基本的に読んでもらうために書いているのとはちょっと違うので、興味のない方はブラバしてください。

時間のある時にだけ、徒然と思っていること、覚えていることを備忘録として記載していきます。




突然だが、Ritsリッツというお菓子をご存知だろうか。


サクサクとしたビスケットなのだが、心地よい食感と絶妙な塩加減がおいしく、頻繁に我が家のおやつとして登場する。

というか、私が好きだからよく購入するのだ。


子供たちが、戦いごっこやらプリンセスおままごとやらに夢中になっている時、私だけこっそりとキッチンへ移動して食べる。子供たちに存在を知られたら全て食べられてしまう故にキッチンでこっそりとおやつを食べるのが最近の日課だった。


だが、昨日は子供たちはそんな私のひとときを見破ってかキッチンに駆け寄ってきてしまったのだ。


手にはリッツ!子供達の目はもはやリッツしか見ていない!!


「一緒に食べようか」

「「うん!」」


観念した私と、元気のいい娘と息子の返事がキッチンに響いた休みの日の昼下がりだった。




途中まで食べていたため、 箱からもう一袋。開封して3枚のお皿に残っていたリッツを並べる。


そうだ。確か、ブルーベリージャムが残っていた。それを塗って食べるのも良き良き。ジャムのちょうど良い酸味と水分がサクッとしたリッツと共に口に入ってくると、まるでタルトを食べているかのように美味しいのだ。


よし、残りのリッツはそれにしようと冷蔵庫のドアに手をかけた。すると横から坊主の声が擦り抜けてくる。


「ねぇ、ママ。僕、牛乳に浸してたべたい!」


開いた冷蔵庫の側面には息子が大好きな牛乳。クッキーを牛乳に浸して食べるのはよく聞くが・・・リッツを牛乳に浸して食べるというのは初めて聞いた。


だが、我が家は基本的に自由。好きなことは好きなだけやればいいと言うのが私の基本方針だ。


「好きに食べるといいよ」

「ありがとう」


幅の広めのコップに牛乳を注いで渡してあげると嬉しそうに息子はテーブルへと去っていった。


「私も何か欲しい!」


息子くんの嬉しそうな背中を見て、娘ちゃんが言い始める。そりゃそうだ。お兄ちゃんだけ追加アイテムをゲットして自分はもらえないとなると「ズルい!」と言うことになる。


それもいけない。我が家は基本的に平等なのだ。息子くんにだけ何かをあげて娘ちゃんにあげないことはしない。


だが、困ったことにめぼしい物は特にない。


「一緒にジャムで食べようか? それとも兄ちゃんと同じ牛乳で食べるかい?」

「やだ!! あれがいい!」


はて? リッツにつけるものなんてあったかなと、冷蔵庫を覗くが何のことを言っているかわからなかった。ふくれっつらの娘ちゃんは至って真剣な顔をしている。


「えっと、どれ?」

「だから、あれ! 赤いの!!」


赤い、リッツにつけるもの?


半分困惑しながら娘ちゃんの真剣な眼差しを辿ってみると、そこにあったのは予想だにしないものだった。


「赤いのって……カニカマ!?」

「うん! それ!!」


カニカマ。それはカニの味を再現した蒲鉾。今日の晩ごはんにきゅうりと一緒に混ぜてサラダにしようと思っていた未開封のカニカマがそこにはあった。


「別にいいけど……美味しいのかな?」

「絶対美味しいよ!」


くどいようだが我が家は基本自由。娘ちゃんがしたいのならばさせてあげるのが我が家なのだ。私にはどうにも美味しそうとは思えないのだが、娘ちゃんがいいならそれで良い。


「まぁ、娘ちゃんの好きにするといいよ」

「ありがとう!」


そう言って娘ちゃんはカニカマを握りしめて嬉しそうにテーブルに向かうのだった。


リッツにカニカマ……合うのかなぁ。

なんて、思いつつ私もジャムを片手に二人の元へ移動してそれぞれの好きなリッツでいざおやつタイム。


「「「いただきます!」」」


右には牛乳をべちゃべちゃとつけながら豪快にリッツに齧り付く息子くん。左にはお寿司のようにカニカマをリッツのしゃりに乗せて食べる娘ちゃん。


あ、ちゃんと食べるんだ。


てっきり、アイテムをゲットしたいがためのカニカマで、実際は美味しくないと言って残すと思っていたので逆に驚いた。まぁ、クリームチーズやスモークサーモンを乗せてパーティーメニューとしても人気の高いリッツだから、カニカマを乗せても美味しかったのかもしれない。なにより、娘ちゃんが喜んでいる。良き良き。


二人とも満足そうな食べっぷりに安心していた、その時。


カラン。


私がジャムをリッツへと移動していたスプーンがジャムの瓶の底を突く音がした。見てみると中にはほとんどジャムが入っていない。


「ありゃ、もう、ほとんど残ってなかったみたいだね」


こう言う時、瓶を綺麗にスプーンでなぞって残っている少量のジャムをかき集める。食べ物は最後まで残さずに食べる。そうして救えた少量のジャムを私はリッツに乗せて娘ちゃんに見せた。


「ママのジャムなくなっちゃったの?」

「うん。これで終わりみたいだ」

「それじゃぁ、ママがかわいそうだよ!! これ、あげるよ!」


一瞬の出来事だった。


娘ちゃんはひまわりのような笑顔で、握りしめていたカニカマを、ブルーベリージャムの上にベチャァと乗せてくれちゃいました。


あっという間にカニカマブルベリージャムリッツの完成。


赤と紫のコントラストがまぁ素敵。酸味のあるフルーティーなブルーベリーの香りに、カニカマの魚っぽい匂いが混ざり合う。


……。


もちろん私の食欲は急降下した、のだが……そうは問屋がおろさない。娘ちゃんは善意でカニカマを差し出してくれたのだ。それを見て固まった私の顔を訝しげに覗いてくる。


「ねぇ、まま。娘ちゃんがあげたんだから……食べてよ?」

「……はい」


有無を言わさない圧を感じた。

意を決して、カニカマブルベリージャムリッツを口に帆奪った。


センセーショナルな。

そして、人生で2度と食べないであろう味が口に広がった、素敵な素敵な日曜日の昼下がりの出来事だった。


あぁ、私の秘密のおやつタイムの筈だったのに。


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