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作文の授業


 体育の後は作文の授業だった。国語の授業の中でわざわざ時間を割いてそれに充てていることには訳がある。実は、近年の国民全体の文章力の低下に危機感を抱いた政府が新たな試みとして小学校で導入したのだ。


 しかし、みんなの反応はというと……。



「だり〜〜〜〜!」

「やる気出ねえ」

「こんなん将来何の役に立つんだ……?」




 ご覧の通りである。

 けれど私は決してこの授業が嫌いではない。

 唯一の得意分野といっても良い科目だからだ。


「ねぇねぇ……私のと交換しない?」

「え、やっちゃう……?」

「何それ、めっちゃ楽しそう……!」



 ……何だか悪い遊びが流行っている。

 けれど、一人だけ真面目にやっている子がいた。



「あれ、愛理ちゃんは自分で書いてるの?」


「何、村上さん……嫌味?」


「あ、いや、別にそう言うわけじゃ……」


 図らずも癇に障ってしまったようだ。

 雛沢愛理は交換する相手がいないのか、自分の作文を自分で書いている。それが本来正しいわけで、非難するつもりはない。


「ふん、こんなのみんな適当でしょ。上手な人は何かの賞に表彰されたりするって聞くけど、宿題になったらどうせみんな家でAI使って書くんだから……」


「苦手なの? 作文」


「は? 別に……」


「見てあげようか?」


「何それ。アンタに見てもらって何になるの」


「まあまあ、騙されたと思って」


 大人のお節介で添削してやる。

 彼女が書いていたのは実際には下書きだった。

 筆圧の強い字で書かれたノートの文章を読み込む。

 ふむふむ、こういうタイプか。


「読んだよ。内容は良いと思う」


「嘘、もう読み終わったの……!?」


 彼女は純粋に驚いているようだった。作文を書くのが苦手ということは読むのも苦手なのかもしれない。


「うん。あとは文頭を一マス空ければ完璧だね」


「もういい、返して……!」


 機嫌を損ねたようで、ノートを引ったくられる。

 そのまま彼女は用紙に清書して提出してしまった。


 と、そこで授業終了のチャイムが鳴る。

 残りは宿題になった。


◇◇◇


「……ん?」


 家に帰った私は宿題の作文用紙を鞄から取り出した。

 すると見覚えのない字でクラスと名前が書いてある。


「『B組 雛沢愛理』……?」


 まさか、あの時。


 私は自分の鈍臭さにため息をつき、仕方なくそのまま名前を変えず提出した。それが後の騒動に繋がるなど、この時はまだ思ってもみなかった。

 今日の更新はここまでです。

 ではまた明日〜〜!!

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