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前世の記憶(プロローグ)

前話にカンタンなあらすじがあります。

よろしければご覧ください。

 くそぅ、この文章力を活かしたいのに出来ない。まさか人工知能(AI)に取って代わられるなんて……チクショウ、こんな事ならエロ小説を一万冊も買って勉強するんじゃなかったぜ!!


◇◇◇


「ハッ……!?」


 両親のお葬式の後、私は奇妙な夢を見ていた。前世の自分は文学賞を目指して文章力を磨いていたが、後一歩の所で落選してしまうという夢だ。


 夢の中の私は官能的な表現を極めるために、エッチな本を読み漁っていた。夢というにはリアルな内容だったし、生々しいその内容もちゃんと覚えている。


 まさか、これが前世の記憶……ってコト!?


「どうしたの夏樹ちゃん、ポカンとしちゃって。まあ、仕方ないわよね……ご両親の事故も突然だったもの」


 そうだ。今はお葬式が終わって親戚の家に帰ってきた所だった。こんな夢の内容を誰かに話す訳にはいかないし、もし話したらとんでもなくエッチな子だと思われてしまいそうだ。変態少女と呼ばれて羞恥プレイをさせられるに違いない。



 そう、エロマンガみたいにッ!!



 ……やっぱり以前の私ではないようだ。

 ……こんな言葉、前は知らなかったもん。


「それで、引き取り先の話なんだけど、その……」

 

 親戚の叔母さんは言いづらそうに言葉を詰まらせた。何となく感づいていた。私を誰が引き取るかで親族達が揉めているんだろう。


「家に置いてくれるだけで大丈夫です。大抵のことは自分で出来ますから」


「え、何を言って……?」


 小学生がいきなり饒舌に喋り始めたので、叔母さんは困惑したように狼狽えた。しかし、今の私なら前世の知識を使って生活していくことも出来るはず。


「家に置いてもらってすみません。邪魔にならないよう気をつけます」


「あ、あらそう……」


 叔母さんはぎこちなく笑った。


◇◇◇


 あれから数日経つが、未だに放置されている。私にあてがわれたのは部屋が一つに本棚が一つ。以前亡くなった叔母夫婦の父親、私にとっての義理の祖父が生前使っていた部屋らしい。


 本棚には隙間なく本が並び、どれも小説ばかりだった。種類はまちまちで恋愛物からSFまでバランス良く揃えられている。祖父は相当な読書好きだったのだろう。


「この本、読んでもいいんですか?」


「いいわよ、好きにして。今どき紙の本なんて誰も読まないんだから」


 そう言うと叔母さんはスマホをポチポチと弄りながらどこかへ行ってしまった。他人の子供が心底可愛くないという本音が透けて見える。


「よし、今はそんなことより……」


 気を取り直してパソコンを起動させる。インターネットを立ち上げ、慣れた手つきで検索をかけると、果たして目当てのサイトが見つかった。


「あった、小説投稿サイト!」


 前世とは少しずつ変わっているが、この時代にも小説投稿サイトは残っているようだ。前世の私は辛うじてとは言え小説で食べていた訳だし、今世でも小説で食べていけたら理想ではある。早速流行りの小説を調べよう。


「ふむふむ、前世とそんなに変わらないな」


 ネット小説の分野では、少なくとも文章や流行に大きな変化は見られなかった。相変わらず冒険物や恋愛小説などが人気なようだ。


「うーーん……?」


 けれど、どこか違和感を拭えない。具体的にどこが違うのかと言われても分からないが、何か前世の小説と決定的に違う部分があるような気がしてならない。


 一体、どこが変わったんだろう?


「昔の小説と比べてみたいな……AI起動」


 パソコンに備えつけられた人工知能を起動した。

 現代のパソコンには大抵この機能がついている。


【どのような用件ですか?】


「今から言った小説の名前を検索して」


 私は生前に読んだ記憶のある小説の名前をいくつか言った。けれどAIは判別できないのか、いくら名前を言っても検索してくれない。


【すみません、よくわかりません】


「ゆっくり言うからよく聞いて……分かった?」


【該当する文書には、検閲がかけられています】


「えっ……検閲?」


 予想外の答えに戸惑う。慌ててタスクバーに本の名前を打ち込むと、数年前のネットニュースが出てきた。その内容を見て思わず私は愕然とした。


「『人工知能(AI)に対する、猥褻文書作成禁止措置法』?」


【過去の著作物で違法と認定されたものについては、閲覧を禁止されている場合があります】


「つまりそれって」


 エッチな小説がない……ってコト!?


◇◇◇


 子供の私は知らなかったが、児童保護に関する表現規制運動の一環で、子供たちが人工知能を使ってエッチなサイトを調べたりできないよう人工知能でエッチなワードを打つことを取り締まる法律が制定されているらしい。


 問題となったのが小説で、現代の小説家は時間節約のために人工知能の力を借りて文章を書いているため、エッチな内容の小説はほぼ全て消滅したらしい。


 更にそれに追い討ちをかけたのが以前起こった猥褻表現規制運動で、現在は表現の自由の侵害だとしてなくなったものの、過去の運動の結果として未だに規制が解除されていない小説も大量にあり、小説を書ける人工知能が開発された以前に書かれた小説であっても性的な内容を含むものに関しては殆ど読めなくなっているようだ。


「待てよ、私には関係なくないか……?」


 現代の教育ではグローバル化の流れで国語の授業時間が大幅に削減されてしまったため、まともな文章を書ける人が大人でも極少数になっているが、前世の記憶を持つ私なら、文章どころか人工知能なしで小説を書くこともできる。


 待ってろ、みんな!!

 私が砂漠のオアシスになってやるぜーー!!!!


◇◇◇


【102ちゃんねる】

〈スレッド名:最近のネット小説が興奮できない件〉


001:みんなもそう思わん?

002:そり

003:分かりみが深い

004:やっぱ絵ッな話がなくなったのキツいよな

005:「絵ッ」って何?

006:キッズは黙ってろ

007:知らない方がいいこともあるんやで……

008:表現規制対策定期

009:それもどうにかならんの?

010 :早く越々な小説読みたいんだが。

011 :今全ての人工知能に検閲かかってるからな

012:新型の開発はよ

013:どうせそれもすぐに対策されるだろ

014:昔の人は偉いよ、全部手作業で書いてたんだから

015:昔の人はエロい?

016:それは、否定できない。



017:おい、みんなこの作者の小説見ろ!!!!↓↓↓

http://××××××××××××



018:どうした?

019:えっ、なにこれ……

020:読んだニキ教えてプリーズ

021:これは……

022:ありえん……

023:オーパーツやんけwwww


……



101:越々すぎるーーーー……ッ!!!!

102:流石に鼻血出たわ

103:こんなん書いて大丈夫なの?

104:逮捕されないんだから合法なんだろ

105:バレた瞬間即捕まるからな

106:てことは、どういうこと……?

107:新型AI自力開発ニキ、現る。

108:神キターーーーーーーーーーー!!

109:ありがとナス!

110:これは強い!!

111:スレの伸びがやべえwwww

112:スレ主だが、これは歴史的神スレになったかもしれん。俺もこれから読みに行くわ。乙

113:乙!

114:乙〜〜!!


……


◇◇◇


「えっ、なにこれ、感想が止まらない?」


 前世でこんなことなかったよね?

 どんだけみんな飢えてるの?




「…………て、日間一位だとッ!?」




 みんな、エッチ好きすぎ…………!

面白いと思ったら評価して下されば幸いです。

続きはお昼頃です。


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