公開処刑
教室に戻ると、雛沢愛理は故郷に帰ってきた勇者のように讃えられた。
「愛理、やったね〜〜……っ!!」
「すごいじゃん愛理!?」
「やっぱり頭良いわーー!!」
「あ、ありがとう……」
今まで喋ったことのない子にも褒められて、彼女は満更でもなさそうだった。
「ねぇねぇ雛沢さん、表彰状見てもいい?」
「ええ」
「すげーー、『大臣』とか書いてあるじゃん!!」
「全国だもんねぇ〜〜……」
「で、これがその作文かぁ……」
一人の子が許可なく額縁を手に取る。
「あ、ちょっと……勝手にッ!?」
その子は屈託のない笑みを浮かべながら額に収められた作文用紙の冒頭の題名を大きな声で読み上げた。
「『私のおっぱい』」
「……えっ」
「……?」
「愛理……?」
場が何とも言えない空気に包まれる。
雛沢愛理はそっと静かに顔を伏せた。
「……『私のおっぱいは実はみんなが思っているよりも大きい。自慢ではないが、壁に投げつけたら跳ね返ってくるだろうと思うくらい弾力がある』」
「愛理……!?」
「普段、そんなこと考えてたの……!?」
「意外……!!」
「弾力……そんなにあるんだ……!?」
「……『最近クラスで人気の子がいる。あの子を見ると私のおっぱいは怒ってフルフルと揺れる。私よりも私の友達と仲良くしてズルいからだ』」
「村上のことじゃね?」
「やっぱり羨ましかったんだな」
「でも、おっぱい関係あるか……?」
「……『でも、あの子が私のことを可愛いと言っているのを聞いてしまった。右のおっぱいはまだ拗ねている。でも左のおっぱいはごめんなさいと謝った。おっぱいがまた少し大きくなった。私も大きくなりたい』」
「雛沢……」
「本当は反省してんだ……」
「えらいな、雛沢って……」
「おっぱい、大きくなったんだ……」
「〜〜〜〜〜〜ッ、あのバカ……!!!!」
何だかめちゃくちゃ睨まれている。
視線を躱そうと後ろに目を背けた。
「キレんなよ雛沢」
「素直になれよ……!」
「左のおっぱい謝ってんぞ……?」
「あ の バ カ 殺 す ……! ! ! !」
ひぇっ。
命の危険を感じた私は後ろの席に助けを求めた。
志信ちゃん、今こそ出番だよ。
「志信ちゃん助けて〜〜〜〜!!」
「ぼ、ボクは男だよ!? ていうか……近すぎるって。あの時のこと、思い出しちゃいそう……」
「やめて、思い出さないで!?」
しまった、こっちもこっちでこじれてるんだった!!
顔を真っ赤にした志信ちゃんを見て私の顔もジワジワと熱くなり始める。
「おいバカ、ちょっとこっちへ来なさい……ッ!!」
「あらあら……ッ♡」
結局、岬先生だけが楽しそうだった。
続きは明日です。