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時限爆弾

「サブタイトル:幼馴染の真実」


 ……誰にも言わないでね、内緒だよ。そう言って目を潤ませたシノブを前に俺は深く頷く。ややあってシノブの口が俺の耳元で真実を囁いた。シノブは彼女ではなかった。彼だったのだ。幼馴染の秘密を知った俺は膝から崩れ落ちた。そしてずっと思い描いていた成長した彼女のたわわな果実を目にする日も来ないのだということにはたと気がつき、堪えられず空を見上げ哭いた……。


<感想欄>


「一言:何があった」

「一言:唐突な男の娘展開」

「一言:ついにソッチ系にも目覚めたか」

「一言:守備範囲広くて草」



「返信:今は……そっとしておいて」




◇◇◇


「夏樹ちゃん、そろそろ機嫌直った?」



「〜〜〜〜……ッ!?」



「あれ、まだダメ?」


「不機嫌というより、恥ずかしいことを思い出して悶えてるみたいね」


「あ、そうなの?」


「多分」


 教室に戻った私に羞恥の感情が容赦なく襲いかかる。心にダメージを負った私が後ろの席を見て喋れないのをいいことに、雛沢愛理が勝手な解釈を付け加えた。地味に当たっているのが何とも言えない。


◇◇◇


 翌朝、岬先生はホームルームの前にみんなに着席を促した。何だろうとクラス中が少しソワソワしている。


「みなさん……今日は嬉しいお知らせがあります!」


 先生は不意にそんな明るい声を出した。

 また少し、みんなの期待が高まる。


「えぇ……先日の授業でみなさんが書いた作文を市に提出しました。すると何と、うちのクラスに全国最優秀賞を受賞した人がいるということです!!」



「全国……!?」

「すげ〜〜〜〜……ッ!!」



 全国と聞いてみんなの目の色が変わった。

 学校を挙げての快挙である。


「では発表します、前に出てきて下さい」


 もったいつけて先生はわざとそんな言い方をした。

 ピタリと喧騒が止み、俄かに教室が静寂に包まれる。







「………………雛沢愛理さん!」







「……え?」


 どよめきが起こった。名前を呼ばれ、彼女はぽかんとした表情で教卓の前へと歩み出る。それを見たみんなは盛大な拍手で彼女を褒め称えた。


「この後、全校朝会でも正式に表彰される予定です! 雛沢さん、おめでとう!!」


「あ、ありがとうございます……?」


 しかしその後、朝会で表彰される場面でも彼女は終始ぽかんとした表情だった。


「では、壇上へ上がって下さい。雛沢愛理さん」


「はい」


「表彰状、全国最優秀賞、雛沢愛理。貴方は第一回全国作文大会、小学校の部において頭書のような成績を収められました。よってここに栄誉をたたえ、これを賞します……おめでとうございます」


 校長の賛辞とともに拍手喝采の嵐が巻き起こる。

 所々で歓声も飛び交い、朝の校庭は賑やかだった。


「「「「「おめでとう!!」」」」」


「愛理すご〜〜いっ!」

「いいなぁ雛沢さん……!」

「雛沢やるなぁ〜〜!」


「表彰状と一緒に額縁が届いていますので、今一緒にお渡しします」


「あ、はい………………………………ん?」


 すると何故か、雛沢愛理の口から謎の呟きが漏れた。そして何やら彼女はハッとしてこちらを振り返る。


 え、私?




「……………あっ」




 そこで私もピンと来た。

 そうだ、あのとき取り違えた作文だ!!



「ではもう一度、雛沢さんに盛大な拍手を」


「……」



 無表情で直立不動の雛沢愛理。

 仕方なく私も盛大な拍手を壇上まで響かせる。


 悲しいかな、それ自体は実に素晴らしい喝采だった。

続きは夜です。

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