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日常1*主人たちの砂糖まみれなガーデンランチ

 ご機嫌よう、紳士淑女の皆々様。アマンド侯爵家ソフィエラ様付き侍女ティーエ・ヨークシャーと申します。ヨークシャー子爵家三女ですが、この情報は特に必要ございませんので覚えなくて結構です。


 この度は、我が主ソフィエラ様と婚約者であるライオネル殿下による月二度の逢瀬の解説などさせて頂く予定ですので、お付き合いお願いします。

 なお、お相手はわたくしだけでは力不足を感じますので、ライオネル殿下の侍従ヴィトー・コーカサス様とお送り致します。


 さて、ソフィエラ様とライオネル殿下は5年前に婚約関係を結び、以降月に二度、逢瀬を重ねております。

 お二人は絵に描いたようにお似合いなカップルでして、光り輝く金銀の髪は眩いばかりです。

 高位貴族らしく、適度な関係と適切な距離感。穏やかな微笑と平坦な声色、迂遠な言い回し。

 THE 政略結婚!お似合いだけど他所他所しい!そんな関係です。


 ……お二人をよくご存知ではない方には、そのように見える事でしょう。


 本日のお二人はガーデンランチでございます。これは、春の景色を愛するソフィエラ様のご機嫌を取るため、ライオネル殿下がセッティングなさいました。(おい、言い方ってものがあるだろうティーエ。正しくは、ソフィエラ様のご機嫌が良くなって自分の好感度が更に上がる様に計算した結果ガーデンランチになったんだ。情報は正しく!)


 ……失礼、ヴィトーから指摘がありました。そうですね、初見でこの言い方はわたくし及び殿下の好感度が下がるかと思い、オブラートに包んだ表現をしてしまいました、申し訳ありません。


 ライオネル殿下は、ふわふわした春の景色に気分爆上げ当社比2割増で表情の柔らかいソフィエラ様を眺める事に成功したようですし、皆様のライオネル殿下像が音を立てて崩れた所で、ライオネル殿下にとってはプラマイゼロ……いえ、プライスレスな笑顔にプラス一択ですね。


 ソフィエラ様もライオネル殿下も、知る人が見れば好意ダダ漏れ、余りの甘い空気に、わたくしもヴィトーも砂糖漬けになってしまうものですが……、一般人が見るとこの光景が一転します。


 お二人の会話のキャッチボールは、30分の間に数度。両の手で足りる程です。

 あら、嘘だとお思い?でしたら、お二人のかぎかっこをよくご覧くださいませ。

 え?文章多いじゃないか?




 全部心の声ですわ。




 ライオネル様、ホント心の声は饒舌なのにな……。あ、自分ヴィトーです。宜しくお願いします。

 さておき、ライオネル様ってば、心情垂れ流した時のソフィエラ様の反応が怖いって言うんだから、可愛いところもあるんで、許してやってくださいね。

 え?口調が軽過ぎる?ティーエは硬過ぎる。聞いてる皆様が退屈しちゃうだろう?


 そんな感じで、お二人は表面上は形ばかりの婚約者なのだ。空気は柔らかめ……ではあるものの、貴族的言い回しな褒め口上など、親しい間柄のものが見なければ形式的に言っているようにしか聞こえない。


 それもこれも、腹の探り合いな貴族社会から、互いが互いを守る為に必要な事何だけどね。

 そのせいで二人は不仲……など囁かれている。見る人が見れば、もうホント濃密なんだけどね、ホントて…。思わず二度言うくらいホントだから。


 まあそんなお二人。相手の足を引っ張るような事は死んでもしたくない、相手のアキレス腱にはならないよう必死なのだが……、相手が素っ気ない、とは思えないようで。


 ああ気を使ってそんな言い方を……とか、一々感動してるみたい。通じ合えててホント良かったですね殿下。


 ……なんですが、ライオネル様もソフィエラ様も、互いに自分の心情が相手にバレている事に、……何でか気付かないらしい。


 つまり、ライオネル様がソフィエラ廚なところとか、ソフィエラ様が心の中劇団をお持ちなところとか。


 ソフィエラ様はライオネル様が自身の事を好いている事をご存知だし、それを隠そうとする殿下を愛しいなぁと思っているが、自分自身の心の中劇団が毎度大騒ぎなのがバレているとは思っていない。


 ライオネル様は、ソフィエラ様の返答の僅かな間とミリ単位に動く表情の変化に敏感で、今は心の継母に叱られてるなぁ、いつも想像力があって可愛いなぁ等と思っているが、自分自身はクールで知的で冷静()な婚約者だと信じている。


 まあソフィエラ様の方は、ライオネル様が自身を好いてくれている自覚はあれど、どこら辺が刺さっているのか分からないようで。……あのハの字眉は無意識みたいだし。意識してやってるんなら、中々の策士。


 だって自分にしか分からない、自分だけに見せてくれる表情だよ?ちょっとクるものがあるよね。

 ……あ、ティーエ待って、ライオネル様に報告はやめて、やめて下さいホント。報告されちゃうと、公務中ホント胃が痛い思いするから、ホント。


 ソフィエラ様はその様な小悪魔ちゃんではございませんので、……ええ、ええ、ほんのちょっと天然ちゃん風味と申しますか。

 そんなお二人を温かく見守ってくださると幸いでございます。


 まだまだ高位貴族の仮面を外す事の出来ないお二人をお見かけの際は、耳の辺りをご覧くださいませ。

 わたくし共が話した内容が嘘偽りない事、信じて頂けるかと存じます。


 おっとそろそろ御開きなようだ。お相手は、ヴィトー・コーカサスと、ティーエ・ヨークシャーでした。

 またお二人の様子がお伝え出来たらと思っているので、機会が合えば、また。


 それではご機嫌よう、紳士淑女の皆々様。





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