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日常1*俺の楽しみなガーデンランチ

 今日は待ちに待った月に二度しかない逢瀬の日。毎度指折り数えていることは、まだバレていないと思うが……今度侍従のシステマに確認しておこう。


 俺の婚約者ことソフィエラ・アマンド侯爵令嬢は、ふわふわの金髪に熟れた林檎のような紅い瞳の可愛らしい少女だ。

 いや、少女と言いつつ凛とした女性を内包しており、17歳で俺の二つ下にも関わらず大人の女性の色香すら感じられる……、まあ端的に言えば、好みドストライク!な女の子だ。


 一応政略的な意味合いが強い婚約だったのだが、選んだヤツまじでナイス。ホント有能。俺が手を回せる案件ならめっちゃ優遇したい。……いや、本気ではしないよ、うん……でもちょっとだけは恩返ししたいなって、て…ダメ?


 第二王子だけど、成人(我が国では18で成人である)したため公務の振られ方が尋常じゃない。そりゃあ兄上を助けたい気持ちもあるが……、そのせいで可愛い愛する婚約者との逢瀬が月に二度なんて!


 流行りの小説なんかでは、成人前の学生生活を婚約者と過ごす……なんて内容を見かけるが、王族の俺は学生生活と公務で、ソフィエラは学生生活と王子妃教育で大忙しなため、愛を育む時間が本当に少なかった。

 ただ、公務に関しては今の四分の一程度だったので、今考えてみればあの時もっとイチャイチャ出来たなって……。

 兄上が生暖かい目で笑っていたの、絶対分かってたな。というか、自分がそれで義姉上とイチャ付けなかったから、腹いせか!心狭いですよ兄上!


 日々可愛いが増していくソフィエラ。ちょっとした仕草に、毎度キュン死寸前である事は、俺の家族と侍従のシステマだけが知っている。……バレてないよな、ソフィエラにはちょっと無口でクールな格好いい俺を見せていたいんだが、大丈夫だよな?ソフィエラの侍女が毎回薄ら笑いなのは、バレてるフラグじゃないよな?


 ソフィエラの可愛いところは挙げればキリがない。この頃のお気に入りは、隙の無い淑女の表情がほんの少しだけ崩れて、眉をハの字に下げながら困ったり照れたりするところである。


 表情がクルクル変わるところに惹かれる……などと言う表現の女性が小説の中では好まれるようだが、え?俺王族よ?王族の婚約者が事ある毎に表情を読み取らせるって、何のハンデ戦?そこにフェイク入れて惑わせるまで出来るなら無しじゃないけど、あまり良い手とは言えない。


 それと比べソフィエラと言ったら!淑女教育の賜物、社交など公の場では表情を読み取らせないあの魅力的な微妙、素晴らしい。

 それでいて俺や近しい(近しい間柄であると信じている。あの表情が作りなら俺は一生騙されて生きる)相手に見せるちょっとした綻び。知らない人が見れば分からない程度だろうが、気付いた時の感動たるや!


 そんな訳で、今見せてくれているハの字眉を見ると、きゅんが止まらない。だらし無くヘラヘラ笑ってしまいそうで、俺のイメージが崩れそうで。それが怖くて、つい眉間に皺が寄ってしまう。


 俺の眉間の皺を見る度、ソフィエラが困ってような悲しいような顔をするから胸が傷むのだが、同時にまたもハの字眉が見れてぎゅぅぅん!となってしまい……悪循環……?なのかもしれない。

 愛する婚約者にこんな思いをさせるなんて俺は最低だと思いつつ、俺のためにそんな表情になってくれる彼女が愛おしい。


 俺はソフィエラに会う度、愚か……いや、馬鹿になっている気がする。恋って怖い。でも楽しい。


 そんな気持ちで、『不安になる』と口にしたら、ソフィエラの表情がサッとなくなり、ハの字眉になって、少し泣きそうになってから、いつもの微妙に戻った。この間僅か1秒。流石ソフィエラ。


 俺の言葉にこんなにも反応してくれて、嬉しいのと申し訳ないのと……、ごめんなさい嬉しいが勝る。もうね、俺の婚約者超可愛いし俺のこと好きで嬉しい。世界の中心では叫べないけど、王宮の中心でだったら叫んでも良いかな?

 超! 可 愛 い ! 好 き 過 ぎ る !


 悶え過ぎてどうしようかと思ったが、ぎゅっと強く目を瞑る事で悶えをやり過ごす。我慢だ俺。結婚するその日まで耐えろ、幻滅されて逃げられたらどうする。出来る、俺なら出来る、甦れ表情!


 結果から言うと、多分成功したと思う、表情を取り繕う事。ただ、ちょっと他所他所しい感じだったかもしれないが許して欲しい。

 本当は転げまわりたかったところなんだから、ホント超頑張ったんだからむしろ褒めてくれ誰か。


 表情に気持ちが行き過ぎて、つい本音がポロリと出てしまったが、まあご愛嬌だろう。


 ソフィエラも俺も、貴族らしい笑顔で場を濁す。貴族として何の否も無い付き合いを保たなければ、もしも、に備えられないからだ。


 結婚したら覚悟しとけよ、監視に来てやがるアレやソレに、威嚇の意味を込めて声を上げて笑い合う。


 でも少しだけ、ソフィエラにも覚悟して欲しかったりする婚約5年目の春。




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