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ミッションスキー

作者: 長光一寛

ミッションスキー


2002年1月19日


朝早起きし、ショートスキー等を持って徒歩で新三郷駅へ。今回はストックは無しにしたので嵩ばらない。途中コンビニでパン等を買う。そして山本哲夫氏に電話して始発の5時22分の電車に乗って行くことを連絡。6時頃北所沢駅に着いた時まだ日の出前であった。山本氏はすでに着いていたが、あわてた表情で、「長光さん、えれえことになった」と動揺して言う。私はふと、彼が事故でも起こして、そのあたりに被害者がいて、いままさに救急車が来るのを待っているところであろうかと危惧した。しかしその危惧はすぐに払拭された。彼は車の中にキーを入れたままドアをしめたというわけであった。レスキュー車に電話したが、道路事情によるので、いつ来てくれるかわからない、とすまなさそうに言う。しかし、なんとレスキュー車は数分後に到着したので我々はほっとした。


山本氏の車に乗せてもらい、関越高速道で湯沢へ向かう。ほぼ予定通りの時刻に岩原(Iwa-ppara)スキー場に着き、駐車場で着替え、カップヌードル等を食してスキーゲレンデに向かう。9時頃。一日券5000円をそれぞれ買って、しばらくは一緒に滑る。やがて別れて私は高所へ、初心の山本氏はなだらかな斜面の多い中腹で滑る。


あるとき、ゴンドラで山頂に行って、スキーを靴に着けているとPHSが鳴ったので急いで出ようとしたら先に呼び出し音が止まった。見ると、山本哲夫氏からの電話であったことがわかったので、折り返し電話してみた。しかし電話に出たのは山本氏ではなかったので、間違い電話をしたかと思い、失礼しましたと言って切ろうとすると、相手は、いやいいんだが今スキー場に来ているのかと聞くので、そうだと言った。ふと私は山本氏が事故にあって携帯電話に出られないほどの負傷をしたのではなかろうかと危惧した。本朝二度目の危惧だ。しかしこの危惧もすぐに払拭された。電話の男性は、今使っている携帯電話が落とし物として届けられた、と言うのだった。そこで私はすぐに自分の名前を言い、その携帯電話の持ち主の友達だ、どこに取りに行けばいいのかと聞いた。相手は山頂クワッドリフトの乗り場だと言うので、すぐ取りに行きますと言って、私はゲレンデマップで場所を確かめてスキーをはめて急いで滑って下っていった。こういう早急のミッションを持っての滑りも経験しておくといざというときに慌てないで滑る事も体得できよう、と思った。


ちょうど山頂クワッドリフト乗り場に着いたところで、そこから滑り降りようとしている山本氏の後ろ姿も見つけたので、急いで乗り場ゲートに行って携帯電話を取りに来たと言うと、電話をしてくれて、携帯電話が届いていることを確かめてくれて、私に、中のリフトオペレータのところに行ってくれと言った。行こうとすると、スキーを外して行ってくれと言うので、スキーを外しそこに置いて、急ぎ足で奥に行った。オペレーターはちょっと躊躇した後、携帯電話を渡してくれた。すぐにスキーを履いて、山本氏の下って行ったと思われるほうに滑降した。彼の姿はなだらかな斜面を滑り降りる人たちの中にはもうなかった。下の高原ペアリフトの乗り場あたりでうろうろして探していると、山本氏がスキーを肩に担いで歩いていたのを見つけたので大きな声で呼ぶと、彼は神妙な顔つきでこちらに歩いてきた。すぐポケットから白い携帯電話を出して渡すと、彼は今から落としたことを知らせに管理事務所に行こうとしていたのだと言った。


ここで反省点は、山頂クワッドリフト乗り場で彼の後姿を見かけたとき、順序として、まず彼に声をかけ、あるいは声が届かず間に合わなければ、彼の後姿を追ってまず彼を確保しておくべきであった。それから二人でもどって携帯電話をもらいに行ってもよかったわけだ。携帯電話は逃げないが、ゲレンデで携帯電話無しの人を探し出すことの困難さを考えると、順序を誤ったことになる。


二人は、その後一緒に少し滑って、レストランで海老カレーを昼食に取った。


第二のミッションは午後に起きた。一人で比較的平坦な斜面を滑っていると、女性がスノーボードを追って走っていた。追いつきそうになるとつまずき、また走り出す。しかし平坦とはいえかなり固められた雪面は、いじわるにもスノーボードをあるときは減速させるもすぐに加速し、止めてくれようとしない。したがって彼女とスノーボードとの距離は手の届くほどに縮まったかと思うとまた広がり、彼女はとうとう悲鳴のような声を上げた。私はボードを止めてやろうとスキーで追いかけ、後ろから一度はつかみかけたがスピードに乗ったスノーボードは私の手をすり抜け、先を行き、私は転倒しそうになった。今度は先回りしボードの進路に出てスキーでボードに体当たりして私は倒れた。しかし同時にボードを止めた。そこでボードをひっくり返して滑らないようにした。お礼の気持ちを表すためか帽子を片手に取って走って追いかけてきていた彼女を待たずに、再び体を立て直し、滑り降りて行った。あとでスキーを見たが幸い傷はついていなかった。


このときの反省点は、こういうときは後ろからでもなく、前からでもなく、流れボードと平行して滑りながら速度を合わせ、ボードをつかむべきであった。あせって物事に当たるとかえって二次災害に巻き込まれることもある。


この2年前に、湯沢高原スキー場で私はショートスキーをはこうとして、不手際にも片方のスキーを流してしまった。すぐ急な斜面に流れたので追っても無駄だった。谷に流れ落ちてくれるのであればいいが、人に当たって怪我でもさせたら尋常ではない。徒歩で降りていくと、どなたがしてくれたのか、私のスキーはひっくり返しにして止められていた。今回、あの時の恩返しができたと思う。


さて、私は岩原スキー場で一日券の時間期限17時まで滑りまくった。スキーを持って駐車場に着くと山本氏はまだもどっていなかった。彼もぎりぎりまでがんばったのだ。


2年ぶりのゲレンデでのスキー三昧だったが、雲が適当に広がっていてあまりまぶしくもなく、風も弱く、人もまばらで、ゲレンデの地形も面白く、適度のミッションもあり楽しいスキーができた。


ゲレンデの ペアリフトで憩う 一期一会


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