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第5話 地味な剣
「しょうがない。遊んでやろう」
魔王は王座から立ち上り、一番地味な剣を手に取った。
「剣が地味……」
壁には盛大な装飾の魔王っぽい剣がたくさん飾ってある。
その中から何の装飾もない武器屋で叩き売りされてそうな剣を手に取ったのだ。
そんなの魔王っぽくない!
私は不満だった。
「まともな剣を使ったらうっかり一撃で殺してしまうだろう……」
魔王はため息を吐く。
非常にやる気が無さそうに剣を構えた。
そして、王座から階段を降りてくる。
やる気が無さそうなのに、軽く威圧が掛かる。
私はぞくぞくしながら、剣を振るう。
キンーンと剣が重なる。
そして、何度か打ち合いをする。
「思ったより筋は悪くない。だがなぜ攻撃が来るとわかっていてそこで一拍置くのだ?」
魔王は不思議そうに聞いた。
私は兄と打ち合ううちにやられるイメージがつきすぎて、攻撃が来ると思うと一拍固まる癖があるらしい。
魔王と打ち合ううちにその癖が段々無くなって行く。
そして何時間そうしていたのだろう。
私は不意に意識を失った。