ダンデ達のダンジョン攻略
うむむ。前日談なんて書くと以前の話との整合性があってるか心配になってきますね。
多少怪しくても広い心でスルーしてもらえると助かります。
町の各所に散らばってたメンバーと合流したあと、パンフレットに従ってやって来たダンジョン。
こういうのに掲載されてるってことは、初級コースなんだろう。
ダンジョン1階は魔物も出なければ採掘ポイントもない、ただの洞窟って感じからもその予想は間違いじゃないと感じる。
「なんなんだろうな、ここは」
「何でも普通はこの1階をベースキャンプとして使ってるそうだぜ」
「あら、ちゃんとバーで情報収集もしてたのね」
「ったりまえよ」
バルガモが自信満々に答えるのを他のバーに向かったメンバーが呆れた目で見ている。
「その情報の為に全財産つぎ込むのはバルガモさんだけだけどな」
「ああ。あんなあからさまな挑発に引っ掛かるとか流石だよな」
「い、良いんだよ。そのお陰で他の冒険者とも仲良くなれたんだから」
「仲良くなったというか、同情されたというか」
その話を聞いてて大体何があったのかは想像がついた。
一言で言えば気持ちよくボッタクられてきたんだな。
バルガモさんらしいというか。
リアルではそういうお店には行かないそうだから良いけど、向こうからしたら割のいい客だろうな。
ぼったくりにあってる自覚はあるのに納得してるんだから。
と、それは良いとして、ここで話してても時間の無駄だからさっそく第2階層へと行こう。
……
…………
「右から2体来るぞ!」
「コウモリ5匹、ベレット行ける?」
「任せて!」
「採掘まだか?」
「ここは後少しだと思う」
「くそっ。水の中から死角を突いてくるのが威力は弱いのに地味にウザい!」
2階層で俺達を迎えたのは次々と湧いてくる魔物たち。
採掘にも手を取られるし、慣れない水中からの攻撃に手を焼かれる。
パンフレットにはこんなに魔物が湧くなんて事書いてなかったのに!
って、よく見たら小さく『同ルームに居る人数で魔物も増減する』って書いてあるじゃん。
俺達はいま30人程で来てるから、そのせいで増えてるのか。
第3階層は複数のルームに分かれられるようだし、早めに分散した方が良さそうだな。
「みんな。この先は各班ごとに分かれよう。
その方が魔物の数が減るらしい」
「分かったわ」
「第5階層がボス部屋らしい。先に挑むか合流するまで待つかは各サブリーダーに判断を任せる」
「採掘は?」
「余裕があったらしていく感じで。どうやらまだレアメタルは出ないみたいだから無理はしなくていい」
この階層で採掘出来たのは鉄や銅、良くて銀だ。
残念だけどこれらは他の場所でも普通に採掘出来る。
恐らくレアメタルはもっと深い階層に潜らないといけないのだろう。
パンフレットにも4階層までが上層、6~8階層が下層って書いてあるから、きっと下層に降りればレアメタルも出てくるんだろう。
若干この『腕に自信のある人は頑張って討伐しようね♪』ってあるのが気になるけど。
とにかく俺達は3組に分かれて第3階層への階段へ飛び込んだ。
すると確かにさっきより魔物の数が減った。
「しかし、ここは」
「ほとんど陸地が無いわね」
フラフのつぶやきの通り、飛び石のように足場が点々とあるだけで、残りは全部湖だ。
湖の中を覗き込めば魚影というか魔物の影と幾つかの採掘ポイントが見える。
「ここは魚人族がいないとほとんど旨味が無いな」
「そうね。もしくは水竜のお守りを付けて潜ってみる?」
「いや、止めておこう。説明文を見る限り水中で呼吸が出来るだけで動きはかなり制限されそうだからな。
よしんば潜っても水中の魔物に襲われるのがオチだろう」
ただし、通り抜けるだけでも次の足場では地上型の魔物たちが俺達を待ち構えている。
面倒だけどそれぞれの島ごとに殲滅しながら進むことになるだろう。
当然その間も水中からの攻撃があるだろうから、常時逆包囲戦を強いられることになる。
「後で他の奴らと合流したら、もっと楽な道がなかったか確認しないとな」
「ええ。でも今日のところはここを通るんでしょ?」
「そうだな。いくぞ、みんな」
「「おう!」」
弓と魔法による先制攻撃からの俺達前衛キャラによる飛び込み。
陣地を形成して後衛を招きつつ残っている魔物を倒していく。
幸いプレイヤーがいる島からリポップは無いようなので、1か所ずつ慎重に進めば難易度は高くない。
魔物も素の状態でも1対1で十分対処できるレベルだしな。
って、そうか。
「フラフ。もう料理バフが切れてるぞ」
「あっ、すっかり忘れてたわね。ごめんなさい。
ここじゃ何だから一度壁際の島に移動しましょう」
アイテムボックスから作り置きのサンドイッチや骨付き肉を食べる。
これらは時間のある時にフラフ達が作って全員のアイテムボックスにストックしてくれている。
だからまぁ食べ忘れてたのはフラフのせいって訳でもないんだけど、普段はフラフの「そろそろご飯にしましょう」の一言で食事休憩を取ってたからな。
更にフラフの取り出した水筒からお茶が配られる。
「ふぅ。イベントダンジョンって事で気が逸り過ぎてたな」
「そうね。他の班は大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃないか?あっちにはバーや市場に行ったメンバーが多かったし」
バーは当然として市場に行った奴らも買い食いとかはしてるだろう。
そのせいで第2階層の時は誰も気づかなかったんだろうな。
そして料理バフを十分に付けた俺達にとって、もうこの階層は苦戦する場所ではなかった。
「せいっ」
「グギャッ」
さっきと違って魔物が一刀両断される。
また、水中からの水弾も腕を振るうだけで弾き飛ばせる。
防御力と水属性の耐性があがったからな。
「今更ながらに料理バフの効果は高いよな」
「魔法とかに比べると手間がかかってるからじゃない?」
「まぁ確かに。食材を育てる人と、料理する人2人分だと思えば妥当なのか?」
「他のバフと重複して掛かるっていうのも大きいとは思うけどね」
そんな会話をしつつ俺達は第3階層を踏破していった。
採掘ポイントもほとんどなかったから他の班より早いだろうな。
後書き前日談
21xx年7月15日つづき
無事……でもないけど『崖っぷち草』を手に入れた俺達。
残るアイテムは2つ。
『花クジラの花』と『レア度4以上かつレア度+品質で8を超える解毒草』だ。
『花クジラの花』はその名前の通り花クジラと呼ばれるクジラの背中に咲く花の事だ。
なぜ花が咲いているのか、どうやって咲いているのかは全くの謎だけど、分かっていることはそのクジラは拠点の島の西側から北西の海に生息しているらしい。
つまりは船が必要だ。
更に問題なのは、このクジラの周りには中型のサメがまるでクジラを守る様に何匹も居るらしい。
おっさんの船はこのサメ達と戦っている最中に海洋性の徘徊型ボスまで引き当てた為に壊滅したそうだ。
長年船長をやってたおっさんも徘徊型ボスに遭ったのはその時だけっていうんだから、どんな引きの悪さしてるんだか。
しかし、そうなると今の俺達の持ってる船じゃあ性能不足だろうな。
おっさんの話がフラグなら、俺達もそのボスに遭遇することになるだろうし。
そんな訳で、今夜はほぼ徹夜だな。
……明日が試験最終日なんだけど、まぁ何とかなる、だろう、うん。
21xx年7月16日
さて、試験も何とか乗り切り、船も無事に強化出来たので今日こそ花クジラに挑戦だ。
と、そうだ。
へんなフラグもあったし、カイリに助っ人を依頼してみるか。
……ふむふむ。ちょうどこの後はやることがあるけど、それが終わったら大丈夫と。
なら現地集合ってことでよろしく。
そうして大海原へと漕ぎ出した俺達。
幸いクエスト特典で花クジラの位置は地図に表示されていた。
なので見つけるところまでは問題はなかった。
「あれか」
「サメはこっち側に居るだけで10頭ね。だからクジラの向こう側と合わせて20頭は見ておく必要がありそうね」
ちょっとした島にも見える大きさの花クジラとそれを取り巻くサメ達。
俺達が戦闘態勢を整えると、それに呼応するようにサメ達がこちらをロックオンした。
「シャーーっ」
「空を泳ぐのかよっ」
サメ達は空中にホースの送水よろしく水を飛ばすとその上を泳いで船上の俺達に襲い掛かって来た。
まるで巨大なミサイルだな。
今のところ俺達を狙ってくれてるけど、船を狙われたら一溜りもないな。
迎撃のための弓も魔法もほとんど効いてないみたいだし。
「どりゃあ」
気合と共にハンマー使いの仲間が飛んできたサメを甲板上に撃ち落とした。
「よっしゃ、よくやった!」
甲板に落ちてしまえば機動力も防御力もガタ落ちするみたいだ。
よし、攻略法は見えてきたな!




