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イベント準備

放課後。

俺は図書室に足を運んでいた。

探すのは農業の本と調味料に関する本だ。

次のイベントがフィールドワークなら、山菜の本もありだな。


ちなみに今時ネットを調べれば大抵の事は分かる。

でもネットはついつい脱線してしまうからな。

本も捨てたもんじゃない。

これからGWだし、のんびり読書も良いだろう。


さて、山歩きの本はこれで良いとして、調味料って言ったら料理の棚かな。

えっと、『僕のおかず100選』『究極の男飯』……ヤバい、気になる。


「あ、これなんか良いかも『味付けの妙技~調味料が世界を変えた~』。よっ」

「……あった。えっ?」


目当ての本を棚から取り出した所で横から声が聞こえてきた。

見れば1年生と思われる真新しい制服に身を包んだ女子が手を伸ばした格好で固まっていた。

なので取り出した本を渡してあげる。


「ほい」

「はい。って、え?」

「それが読みたかったんだよな?」

「そう、ですけど。えっと、先輩?も読みたかったんじゃないんですか?」

「2年の水瀬だ。俺はほら。他にも読みたい本があるから」


言いながら先に確保していた本『無人島サバイバル』を見せると納得してくれた。


「1年の霧谷です。じゃあお言葉に甘えて。

あっ、読み終わったらお伝えしますので、連絡先を交換させてもらっても良いですか?」

「ああ」


そうして、思いがけず女子の連絡先をゲットしてしまった。

だからと言って何がある訳でも無いけどな。

霧谷さんとはそのまま別れて、俺は他に幾つか見繕って貸し出しカウンターへ向かった。



ゲームに帰ってきた俺はみんなに挨拶しながら、畑の様子をチェック。

ここ数日で収穫できたのは相変わらず、最初の4種のみだ。

陽介からの依頼もあるし、俺としても最低限の調味料は欲しいところだ。

ちなみに俺の考える最低限は、砂糖、塩、胡椒、醤油だ。

贅沢を言えばワサビと味醂が欲しい。何せアイテムボックスには野菜の他に魚の切り身が多く格納されているからな。

いつの間にかマグロまで入ってたから、何とか刺身にして食べたいんだが、そうすると欲しいのはワサビと醤油だ。

贅沢を言えば大根のツマも欲しい。


「うーん、農家レベルが上がれば作れる作物も増えるかもしれないけど、確証はないし、そこまで待てないぞ」


GWイベントに参加すればここにはない種を手に入れる事が出来るかもしれないけど、植えて収穫まで考えると結局10日近く待つことになる。

何とか今あるもので作れないものか。


すぃーー


悩む俺の前を小魚たちが泳いでいく。

コウくん達のお陰で随分増えた魚たちは、なぜか俺に対して警戒心を抱かないようだ。

昨日、ダンデに網を送ってもらって使ってみたらあっさりと小魚たちが回収できた。

その後も変わらず俺の傍を泳いでいるから、もしかしたら俺の姿が見えてないのかもしれないな。

そういえば、醤油に似たので魚醤ってのが確か魚が主原料だったっけ。

作り方は大雑把に言えば魚を塩漬けにして発酵させたものらしい。

つまり魚と塩と入れ物があれば作れるはずだ。

早速、ダンデに樽を送ってもらい、小魚と塩を詰め込み蓋をする。

リアルだと数か月掛かるそうだけど、ゲーム内だとどうだろう。

出来れば1週間もかからず出来て欲しいものだ。

とは言っても最初からうまく行くとも思えないので多分今回は失敗するだろう。

何事も挑戦という事で。


あと、今すべきことはイベントの準備か。

皆には俺が居ない間の事をお願いしておく。

本当なら誰かに一緒に来てもらえると心強いんだけど、イベントの場所は当たり前だけど陸上だろうからな。

ヤドリンは短時間なら陸上にも上がれるらしいけど無理はさせられない。

なので俺は敵にあったら自力で対処しないといけない訳だ。

……あれ?

よく考えれば俺まだこのゲームで1回も戦闘した経験がないな。

武器も鍬と網だけだし、これらを武器と言っていいのかも怪しい。

その辺りをダンデに相談したら、銛と鎌をプレゼントされた。

農家に銛ってどうなんだ?って聞いたら、一言『今更すぎ』と返ってきた。

確かに海中に居る時点で普通じゃないからな。

問題は農家でも銛が使えるか、だ。

試しに近くに来た魚に狙いを定めて……


「ていっ」

すかっ


あっさり避けられた。

今のはきっと正面から行ったからだな。

側面から行けば面積も広いし当たるだろう。


「よっ」

するっ


ダメだった。

実に優雅に回避されてしまった。


「きょっ?」

「いや、気持ちは嬉しいけど捕まえなくていいからな」


イカリヤが足で固定した魚をどうぞって差し出してくれたけど、流石にな。

やっぱり銛は農具じゃないってことなんだろう。

なら鎌ならどうだろう。


「うりゃっ」

ごぼごぼっとん

「よし当たった!」

すぃ~

「あれ?」


無事に魚に当てることは出来たんだけど、魚は何事もなく泳いで行ってしまった。

鍬と同じで鎌は水の抵抗が結構強い。

そのせいで威力がだいぶ落ちてしまったようだ。

やはり水中用の武器である銛とは使いどころが違うってことなんだろう。

でもま、練習すればもう少し位は形になると思う。

俺はイベント開始の時まで、せっせと開墾の合間に鎌と銛を振るのだった。


後書き日記


21xx年4月27日


遂にやりました。

いま私の目の前には屋台で食べた物よりも美味しいウサギ肉の串焼きがあります。

これ1つ作るためにクエストを3つ、スキルを4つ習得する必要がありました。

早速、従兄に自慢しましょう。


……チュートリアル終了おめでとう?これで君も料理人の仲間入りだ?


なにやら上から目線の返信が来ました。

聞けば従兄の知り合いにも料理人が居て、串焼きまでなら作り方を知っていた様です。

あと薬草類がハーブとして使えることも。

なら最初から教えなさいよと言いたい所ですが、自分で試行錯誤するのも大事だったんだとぐっと堪えます。


そしてメールにはお祝いのプレゼントまで添付してありました。

これは、随分と高品質の薬草ですね。

生産者の名前が入っているし、街の外に自生しているものと違い、品種改良などもされているのかもしれません。

これがあれば串焼きの味もより一層良くなるかもしれないですね。

早速試してみましょう。

ただ、このままだとハーブ塩止まり。

私は焼き鳥はどちらかと言えばタレ派です。

何とかして焼肉のタレが作れないでしょうか。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 海中で農業するという謎システムを実装した運営。 水中からいくらでも栄養と水分が取れるのに、海底という岩とれきと砂しかない場所を耕すことを実装するとはやりますね。 [一言] 主人公は現実で料…
[気になる点] 主人公はどうやって海中で塩を水に溶かさず入れ物に入れたんですか?
[一言] 小魚が逃げないのは採集ポイント扱いだからかな? モンハ○でも採取できる虫は近づいても逃げないし。 でも網なら採れたのに銛や鎌で採れないのはなんででしょう? 焼き鳥は塩・タレのこだわりはない…
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