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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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88/162

さあ船を出せ!

遅くなりました。


そして、ここから少しの間カイリ達は出番無いかもです。

主に今まで放って置いたダンデ視点になります。

ピンポンパンポン♪


<これより、夏休みイベント第1段【伝説の霧隠れ島にてレアメタルを手に入れよう】を開催致します。

皆さま既に各拠点にて準備を行って頂けているかと思います。

この案内を持ちまして、海上に広がる霧の濃さが5~30%まで薄まります。

場所によっては霧の残る場所もありますので航海の際には十分ご注意ください。

また、イベントの中心となる霧隠れ島の他にも多くの島や採掘ポイントがありますので、そちらも併せて探索ください。

中には霧隠れ島では滅多に手に入らないものも手に入るかもしれません。


なお、事前に通知させて頂いた通り、イベント空間ではアイテムボックスなど一部の機能に制限を設けさせて頂いております。

詳しくは公式サイトをご確認ください。


イベントフィールド内には様々な場所にポイントアイテムが隠されており、中には複数人で協力して手に入れるものや、得意分野を活用しなければ手に入らないものもあります。

他にもイベント専用クエストや、通常ではなかなか遭遇しない魔物なども見つかるかもしれません。

採掘の骨休めにそういったものを探してみるのも良いでしょう。


それでは、これよりイベントスタートです!!>




「よっしゃあ、やるぜぇ!!」

「野郎ども船を出せ!!」

「「おおおぉぉ!!」」


イベント開始のアナウンスと共に上がる鬨の声。

各拠点から我先にと船が飛び出していく。

そのすべてが迷うことなく霧隠れ島のある方角へと向かっていた。

というのも4種族の拠点が扇状に配置されていることが事前に調査されており、それなら霧隠れ島は扇の要部分にあるだろうというのが全員の共通見解だ。

だから攻略組の彼らが方向を間違えることは無い。


まるでレースのように海上を走る船の多くは中型から大型の帆船だ。

やはり製作難易度の問題から最も選ばれたのがこのタイプのようだ。

大型で他に居るのがガレー船。

こちらはどうやらクランメンバー総出で漕いでいる船と、現地住民を雇っている船があるようだ。

それなりに風がある今、帆船より一歩遅れた状態になっている。

そしてその中でも頭一つ抜き出た船たちがあった。

それらはサイズこそ小ぶりな中型艦だが、帆も無ければ櫂で漕いでいる様子もない。


「おい、あれってまさか」

「スクリューか!?」

「動力はなんだ?石炭か?」

「違う。魔法だ。魔法で水や風を起こして推進力にしてるんだ」

「「その手があったか!」」

「はっはっはぁーー。お先っどわあっ!!」

どっか~ん


先を走る1隻が突然吹き飛んだ。

「魔物か?」と一瞬考えたが、そこにあったのは氷山だった。


「「タイタニックかよっ」」


全員から挙がるツッコミ。

しかしそんなツッコミもどこ吹く風。氷山はその1つではなく、よく見れば幾つも浮かんでいた。

それはつまり不用意に突撃すると痛い目を見るということだ。


「楽には行かせてくれないって訳だな」

「むしろ、これくらいの障害はあってくれないとな!」


普段の島から島への移動は現地の定期船に依存していた彼らに操船知識はあまりない。

今もかろうじてセミオートで動かせているから何とかなっているものの、細かな制御は厳しいものがある。


「あ、こらっ。俺達の道を塞ぐんじゃねえ!」

「そりゃこっちのセリフだ」

「ぎゃー、ぶつかるぶつかる」

「避けて~~~」


氷山を避けようとして、お互いに道を塞いだりぶつかったりする船たち。

手旗信号も無ければ別クランどうしなのでメールなどで連絡を取り合うことすら出来ない。

そんな状態で密集し過ぎていたのだから、急に舵を切ったらこうなるのが当たり前だ。

しかし全ての船がそんな状態かと言われたらそうでもない。


「頼みます」

「おうっ。任せておきな」


ダンデの言葉に力強く頷いたのは、ムキムキの筋肉と黒く焼けた肌を持つ「ザ・海の男」と言いたくなる風体の男性だった。

その人はダンデがこのイベントの為に雇った現地の船長である。


「しかし、あのひよっこ共は海の何たるかをまるでわかっちゃいねぇ」

「仕方ないですよ。彼らは本来船乗りでは無いんですから」

「こっちの邪魔だけはしてほしく無いものだがな。

っと、氷山地帯を抜けるぞ」


抜けた先にあるのはやはり海。

しかしうっすらと霧が残っており、航海に慣れてない者なら方向感覚を失い迷走することだろう。

そしてダンデ達の船に続く様に氷山地帯を抜けて来た船が2隻。


「やるな、太陽の!」

「ん?誰かと思えば大海賊か。流石に船の扱いにも慣れたものだな。向こうはコロンビアか。

まぁ妥当っちゃ妥当な結果だな」


クラン『大海賊王』および『コロンビア旅団』は、どちらもこのゲームがオープンして、かなり早い段階で自前の船を用意したクランだ。

むしろ航海をする為にこのゲームをやっていると言っても過言ではないかもしれない。

当然クランメンバーには船大工を始め、水兵、海兵、航海士などが揃っている。


「ダンデの隣に居るのは、例の船長か。

なんかイベントをクリアするのが難しいって聞いたけど、実際どうだったんだ?」

「まぁクリアに必要なアイテムを用意するのが大変だったけどな。

それさえ乗り切れれば謎解きもない普通のイベントだったよ」

「そのアイテムが無理ゲーって話だったけどな。そこは流石攻略トップクランってことか」

「いやいや。持つべきものは友ってことさ。それより、見えてきたぞ」

「ん?おお!」


船の向かう先の水平線に島影が見えてきた。

マストの上に登って双眼鏡を覗き込めば『霧隠れ島』と島の名称も確認出来た。

ダンデ達は期待に胸を躍らせて、島に着くのを待つのだった。


後書き前日談


21xx年7月14日


今日からイベント拠点に移動できるという事で、俺達『太陽の騎士団』も早速移動を開始した。

その拠点の島だけど、形としては三日月型になっていて、内側の湾には砂浜が広がり海水浴には持ってこいの地形になっていた。

逆の外側には港町が広がっていて、造船ドックや倉庫などが立ち並んでいた。


さて、16日から船の貸し出しをしてくれるという話だけど、俺達だって自前の船は持っている。

ただその船は普段の移動用であり、戦闘を行うための船だ。

今回のイベントでは採掘した鉱石を積んで帰ってこないといけないそうなので積載量が課題か。

なら大人しく貸し出される船を改造した方が得策か。


しかし、そうするとやる事が限られてくるな。

運営は何を考えて2日も早く拠点を開放したのか。

……今のうちに海水浴を楽しむ?それもありか。

ただ、俺は今リアルでは期末試験の真っ最中で遊んでる余裕はないんだけど。

そう言ったらここに居る時点で手遅れと言われた。

まぁ確かにな。

でも試験が終わってからじゃないと海水浴は心から楽しめないだろう。

なので港の探索でもするか。

何かクエストがあるかもしれないしな。


そうして港を回り、ギルドに顔を出し、海岸線を歩いていたところでそのおっさんと出会った。

その時のおっさんの姿は一言で言えば浮浪者。

ぼさぼさの髪にぼろぼろの服。地面に座り込み右手には酒瓶。

海を見つめる目は虚ろで覇気のかけらもない。

リアルなら橋の下とかを探せば見かけるそれだけど、アルフロの、というよりゲーム一般で言えばそれは何かのクエストに繋がるキーパーソンの可能性が高い。

だから俺は意を決して話しかけることにした。


「よぉ、おっさん。何を見てるんだ?」

「……」


無反応。どうやらアプローチを変える必要がありそうだ。


「何かを海の向こうに置いてきたのか?」

「ん……ああ」


反応あり、と。

ということはこんな身なりでも元は海の男ってことか。


「取り戻しにはいかないのか?」

「仲間の命は取り戻せんよ」

「仲間か。海難事故にでもあったか、それとも海獣にでも襲われたのか?」

「どっちもだな。俺が無理な頼みをしたせいで、危険な航海に出て戻ってこれたのは俺だけだった。

求めたものを手に入れる事すら出来ずにな」


そう言いながら海に石を投げるおっさん。

最初よりは動きがみられるようになったけど、まだまだ死にかけって感じだ。


「その求めたものはもう良いのか?

良かったら探すのを手伝っても良いけど」

「手遅れだよ。もうあと2週間もないって話だからな。

それの在り処を見つけて、無事に手に入れて戻ったとしても、加工できる奴を探すのにも時間がかかる」


2週間。ほぼイベント期間と被るってことはイベントに関係のある内容なのかもな。


「ダメで元々、それが何か教えてもらっても良いか?

これでも伝手は広い方なんだ。もしかしたら簡単に手に入る可能性もあるぞ」

「薬だ」

「薬?誰か病気なのか」

「あぁ。娘がな。

その娘の病気を治すには特別な材料が必要なんだ」

「何が必要なのかは分かってるんだな?」

「ああ。それは……」

「……わかった。残念だけど今の手持ちにはないな。

その代わり知り合いに手に入らないか頼んでみる。

そうだな。3日待ってくれ。いや、待たなくてもいい。

でもうまく行けば3日後には良い返事が出来るかもしれない」


俺がそう言って力強く頷いてみせると、ようやくおっさんの目に力が戻って来た。


「お前はなぜこんな見も知らない俺にそんなことを言うんだ?」

「そんなの。女の子が苦しんでるからに決まってるだろ。

おっさんだけの話ならやる気もそんなに起きなかったけどな」

「かっ。正直な奴だ。だがたとえ娘が元気になっても嫁にはやらんぞ!」

「そういうのは元気になってから言え」


よし、ひとまずやるべきことは出来た。

本当はカイリに手を借りたいところだけど、あいつは流石に試験期間はログインしてないだろうからな。

来るとしても明後日だろう。

ならそれまで他の伝手を全力で当たろう。

きっと何とかなる。

というか、これくらい何とか出来ないとトップクランとか恥ずかしくて言えないよな!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] おいでませ霧隠れ島!! 看板とのぼりを立てたりして、一目で観光地と分かる様にすれば、気勢も削がれていい具合なのかもしれない。
[一言] まさか海の作物?
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