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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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採掘ダンジョンに潜ろう

ダンジョンに入る俺達。

というか、階段があるんだな。親切と言えばいいのか何というか。

そしてダンジョンの中は壁が発光しているようで仄かに明るい。

これなら松明とか明かりの魔法とか無くても探索できそうだ。


「第1階層は蝙蝠が居る程度で、危険な魔物は居ない。

本番は2階層目からだな」


そう言うブリラさんに続いて俺達はダンジョンの中を歩いていく。

それはもう無警戒に。


「なんというか、普通の洞窟なんだな」

「まあな。出てくる魔物が決まってる分、外よりも安全だ。

ほら、あっちに休憩してる奴らが居るだろ?

あの様子からして採掘に向かう前に武装の点検なんかをしてるんだ」

「なるほど、外じゃなくてここでやるのか」


言われて周囲を見渡せば、4人~8人くらいの冒険者パーティーが何組か居た。

ブリラさんが手を振って挨拶をすれば、向こうも返してくれる。

その人たちは一緒にいる俺達を見て一瞬首を傾げた後、納得したように頷いた。

彼らにもガイドの話は伝わっているだろうから、よそ者の俺達がその件なんだろうと直ぐに察しが付いたんだろう。

特に何もなく見送られる。

そして更に進んだところに階段。恐らく第2階層へと続いているんだろう。


「この先は普通に魔物が襲ってくるからな。警戒を怠るなよ」

「「はい」」


ブリラさんを先頭に階段を降りると、そこには幻想的な光景が広がっていた。

フィールドの約半分が地底湖になっており、壁の光を反射してキラキラと輝いている。

また、上を見れば鍾乳石が垂れ下がっていて、以前見た観光スポットに負けない景色だ。

ただ。

そんな光景に水を差すように徘徊する魔物たち。

すぐに目に付いたのは槍を持った身長1.5メートル程度のリザードマン。

奴らはこちらを見つけると赤い目を光らせて襲い掛かってきた。


「サクラさん、ツバキさん」

「任せて!」

「うんっ」


ふたりは前に飛び出すと武器を構えてリザードマン達に襲い掛かった。


「隙だらけよ」

「遅い」


サクラさんがリザードマンの突き出した槍を撥ね上げ、がら空きになった胴体を真っ二つに切り裂いた。

ツバキさんの槍は、リザードマンのそれが届く前に首に突き刺さっていた。

5匹居た魔物たちも2人の手にかかれば一瞬だ。


「ほほぉ。第2階層の魔物とはいえ、瞬殺か。

これなら確かにレアメタルの採れる第11階層でも戦えそうだな」


ふたりの戦いっぷりを見て満足げに頷くブリラさん。

どうやら合格点は貰えたみたいだ。

と、その時。

地底湖の水面が波打つと同時に魔物が飛び出してきた。


「ふっ!」

ヒュンッ、ストン。


飛び出した魔物が魔法か何かで攻撃する前に、レイナの投げた針が眉間を貫いた。

魔物はそのまま光になって沈んでいく。


「ひゅー、やるねぇ!」

「支援職かと思ったら戦闘も出来るのね」

「えへへっ」


タツミさん達から感心した声が漏れる。

レイナの投擲術も急所に当たれば必殺の域に達してるからな。

俺達のなかで唯一の遠距離キャラだし、ぼーっとしてると周囲の魔物を全部取られかねない。

と、そうだ。


「ブリラさん。一つ聞いても良いかな?」

「おう、なんだ?」

「今、魔物でリザードマンが居たけど、魚人族にも似た見た目の人は居るよね」

「ああ、居るな」

「どうやって見分ければ良いんだ?」

「それか。目を見れば分かるぞ。

魔物の目は赤く光るんだ。対して魚人族の目は黒やグレー、紺、青、水色。つまり黒か青系統の色をしてるんだ」

「なるほど」


確かにさっきのリザードマンは目が赤く光ってた。

逆にタツミさんの目は黒、オコトさんは深い青だ。思い返せばホッケ族の人たちは水色だった気がする。

ただ遠くから目の色を確認するのは結構難しいよな。


「ま、目なんて見なくても、ダンジョンで襲い掛かってくる奴は全部敵で良いだろ」

「それはそうなんだけどね」


間違って攻撃したらごめんで済むだろうか。

出来れば友好的な相手と敵対はしたくないけど。


「他に質問が無ければ行くぞ」

「あ、はい」

「ちなみにここからは次の階層に行くルートが幾つかある。

陸地の割合が多い階層、湖の割合が多い階層みたいな感じで少しずつ違うから自分たちのパーティー編成にあった場所に向かうのが良いだろうな。

ただ3階層、4階層は複数あって行き止まりだったり隣の階層に合流したりするが、5階層は1か所のみだ。ボスが居るからな」

「ボス?」

「ああ。5階層と10階層にはボスが居てそいつを倒さないと先には進めなくなってるんだ。

俺達が割にあわないって言ったのはそれも原因の一つだな。

ま、5階層のボスはお前達なら余裕で勝てるだろう」


いや、ボスが居るなら俺達の頑張る意味ってないじゃん。

それともイベント期間中はそのボスの代わりに俺達が陣取ることになるんだろうか。

ま、それも行ってみないと分からないか。

とにかく俺達は道中の魔物を危なげなくなぎ倒しながら先へ進んだ。


そして第5階層。

そこは中央に1本広い道があり、両サイドには湖というより、小さめの池があった。

道の突き当りには扉があって、その先にボスが居ると思われる。


「ここにも魔物は居ないんだな」

「ああ。ボス部屋の前後は魔物はいない。ここはボス前最後の休憩所ってところだな」

「『休憩所』?」


ふと、リースがその言葉に反応した。

ここに来るまで特に戦闘に参加する必要もなかったから、何か考え事をしてたみたいだけど、欠けてたピースが填まった感じかな?


「カイリ君。ちょっと確認させてもらっても良い?」

「ああ」


リースは一言断ってから、池を覗き込んだり、天井の様子を窺ったりしていた。

最後に池に向かって魔法を使ったかと思うと、どこか納得した感じで戻ってきた。


「で、何があったんだ?」

「うん。私、今回のイベントで何をしようかずっと考えてたんだ。

ぼーっとしてたらカイリ君が全部やっちゃいそうだし、かといってウィッカさんみたいにお店を開くのは面白そうだけど、カフェレストランを開くのも微妙かなって思ってたんだよね」

「ということは、やりたいことが見つかった?」

「そう。ここに休憩所兼温泉を作ろうと思うの」

「は?」


休憩所はともかく温泉って。


「もしかして両サイドの池が実はお湯だったとか?」

「ううん。そこは私の温熱魔法で温めるつもり。これくらいの水量だったら魔力も足りると思うから」

「なるほど。温泉というか銭湯だけど、温泉って触れ込んだ方がご利益ありそうだもんな」

「後は外から覗かれないように壁を作って更衣室と休憩所を作れば行けると思うの。

あ、湯あみ着とかタオルとかも用意しないといけないから、レイナも手伝ってくれないかな」

「はい。面白そうですね。ぜひ手伝わせてください。

あと折角休憩所を作るなら……」


ふたりとも凄く楽しそうにああでもない、こうでもないと話し合い始めてしまった。

これは何とかしてダンジョン内を改造する許可を取らないとな。

その様子をブリラさん達が呆れた様子で見ている。


「なぁ。お前達っていつもこうなのか?」

「まあ概ね。楽しそうな事が見つかったら全力ですね」

「いや、ダンジョン内に温泉とか普通考えないだろ」


そうかもしれないけど、ゲームは楽しんだ者勝ちだからな。

運営だって俺達に普通は求めてはいないだろう。


後書き会議室 パート2


「報告します。

例の彼は無事にイベント島へと到着した模様です」

「ふむ、予想より早かったね。だいぶ飛ばしたのかな?」

「そのようです。現在は用意しておいた情報屋と接触後、領主と会談中です」

「うんうん。順調だね。いや、むしろ順調過ぎるというべきか。

彼ならここに至るまでも何か起こしてくれると思ってたんだが」

「そんなハプニングを期待するような発言は控えて下さい」

「いや、しかしね」

「はい」

「うん?」


すっと差し出される報告書を受け取る主任。

その口がにやっと笑顔になった。


「いやはや、最近の若者の暴走には困ったものだね」

「私は最近の主任の暴走にこそ困ってます」

「はっはっはっ。こりゃ一本取られた。

しかしこの案件は確か酒井君のだったよね」

「はい。彼には既に連絡済みです。

今頃泣きながらシナリオを書き直してるころかと」

「うんうん。頑張ってもらおう。

それで、賭けの結果はもう出始めてる頃かな」


そう言って壁に貼られた箇条書きの表を見た。

その項目の幾つかには既に取り消し線が引かれている。


「ふむ。やはり真っ先に最初の2つは消えたね」

「ええ。むしろその2つを選択するようならこちらからも手を打つ予定でしたから」


そこには

『海上封鎖。全ての船を撃沈する』

『海岸線封鎖。籠城し徹底抗戦』

とあった。


どちらもカイリ達が取るかもしれないと予想された行動だ。

そして今、次の『全島民の避難』という項目にも取り消し線が引かれた。

残っているのは『住民に反対されて追い出される』『全住民の武装化』『ダンジョンの閉鎖』などがある。


「君はどれに賭けてたかね?」

「『ダンジョンの要塞化』です。そういう主任は?」

「僕は『そのどれでもない』だ。もちろんこちらからの依頼は達成した上で。

それでこそ、彼らに任せた甲斐があるというものだからね」


そう言った主任たちの視線の先では、カイリが冒険者たちに絡まれたところだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] ダンジョンっていうかアスレチック付き複合レジャー施設……
[一言] 賭けの対象になってるとは思わんよなぁ
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