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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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採掘ダンジョンへ向かおう

さて、約3日ぶりに来たイベント島には、前は無かったお店が増えていた。


バー『モスコミュール』


名前からしてバーなんだろうけど、いつの間に出来たんだろう。

そう眺めていたらどこか古びたスウィングドアが開き、中からウィッカさんが出てきた。


「カイリくんお帰り~」

「ただいま帰りました。

ウィッカさん。このお店はなんですか?」

「造ったのよ。というか、お酒を出すお店を作りたいって冒険者ギルドで呟いたらみんなが乗り気になっちゃってね。

たった2日で出来ちゃったのよ。びっくりよね~。

まだ開店時間前だけど、中を見ていってね」

「はい。じゃあお邪魔します」


意気揚々と俺の手を引くウィッカさんと共に店内へと入った。

そこは、ウェスタンバーとでも言えばいいのか。

どことなく西部劇なんかに出てきそうな雰囲気がある。

木製のカウンターに丸テーブル。

そのどれもが新品というよりも何十年かの月日を過ごしてきたかのような風格を持っている。

こういうのをアンティーク家具って言うんだろうか。

今は他に誰も居ないのですごく落ち着いた気持ちにさせてくれるけど、常連客で満たされた店内は賑やかで陽気な空気で包まれることだろう。


「凄く素敵なお店ですね」

「ありがとう」

「ここはウィッカさん一人で切り盛りするんですか?」

「まさか。お店の話をしたら近所の奥様方が手伝ってくれることになったわ。

特に4軒となりに住んでたソルティさんがお酒好きなこともあって、雇われ店長みたいなポジションでほぼ毎日入ってくれるのよ」

「それは良かったですね」


下手な人に店長を任せるとお店のお金を盗んだり、色々大変だって聞くけど、この島の住民ならその心配もほぼ無い。

なにせほぼ閉鎖された空間だ。全員が顔見知りと言っても過言ではないし、その状態で犯罪を犯せば村八分確定だし、逃げ場もない。

特にお酒好きなら何かしでかせばお酒が飲めなくなるのだから、そんなことはしないだろう。

まぁ客としてくる男性陣としては、もしかしたら自分の奥さんが働いてたら来辛くなるかもしれないけど、そこは我慢してもらおう。


「ただ流石に全部まかせっきりには出来ないですよね」

「そうねぇ。慣れるまでの数日間と、イベント開始直後は詰めておかないといけないわね。

軌道に乗ったら大丈夫だとは思うけど」

「分かりました。じゃあそれも踏まえて今後のシフトとかも考えます」

「ええ、よろしくね」


ウィッカさんと別れた俺は冒険者ギルドへと顔を出した。

さて、ブリラさんは居るかな? と、居た。


「ブリラさん」

「おっ、カイリか。どうした?」

「ダンジョンの道案内を頼みたいんだけど、明日か明後日って予定あいてるかな?」

「まぁ俺達の予定なんざ、基本はダンジョンに潜って鉱石を掘ることだからな。

明日でも明後日でも調整は出来るぞ。

道案内っていうと例のあれの予行演習みたいなものか?」

「それもあるけど、レアメタルが採れる階層までのコースを早めに確認しておきたいから」


俺がそう言うとブリラさんが顔をしかめた。

何か問題があるんだろうか。


「えっと、一応領主様の許可は取ってあるぞ?」

「あぁ。いや、そこは心配してないんだが。

実はな。俺達もそこまで深く潜ったのは5年前に1度きりなんだ」

「あれ、そうなのか?」

「まあな。それなりに深い階層だってのもあるし、出てくる魔物も強い。

その時もかなりギリギリだったからな。

レアメタルは確かに高値で取引されるが旨味は少ないのさ」

「じゃあ無理して防衛するまでもないのか」

「いやそうとも言えん。

外からの冒険者がどれくらい強いかも分からないし、俺だって5年前に比べれば強くなってる。

農家だっていうカイリがあれだけ強いなら、他の冒険者なら余裕で突破できるかもしれん」


俺の強さって基準にして良いのかな?

本職の戦闘職の実力って俺も把握してはいないんだけど。

以前ダンデと戦った時だってだいぶ手加減してもらってたしな。

まいっか。


「そういう事なら明日、案内頼むよ」

「おう。じゃあ仲間にも声かけておくぜ」


そう言えばブリラさんの仲間ってどんな人たちなんだろう。

やっぱりゴリラなんだろうか。

まぁ明日になれば分かるか。


そして翌日。

俺達もそろって冒険者ギルドにやってくると、既にブリラさんが待っていた。


「お、来たな」

「おはようございます。ブリラさん」

「「おはようございま~す」」

「お、おう。……カイリ、肩身が狭そうだけど頑張れよ」

「あはは、はい。まぁなんとかやってます」


うーん、ハーレムっていうより、尻に敷かれてるって感じがするんだろうな。

もしくは女性パーティーのおまけとか。

実際そんな感じだし。


「ま、それはともかく。俺の仲間を紹介するぜ。

魚人族のタツミとオコトだ」

「タツミよ。よろしくね」

「オコトだ。よろしくな」

「カイリです。こっちにいるのが、俺の仲間のリース、レイナ、ウィッカ、サクラ、ツバキです」

「「よろしく~」」


ひとまずサラッと名前だけ交換する。

ちなみにタツミさんはタツノオトシゴっぽい魚人で、オコトさんは細身の魚の魚人だ。

声の感じからしてどちらも女性なんだろう。


「よし、じゃあ道すがらそれぞれの役割を確認しよう」

「そうですね」


そう言ってダンジョンに向かう道中でそれぞれのポジションなどを話し合う。

と言っても、こっちは俺以外は水中戦は未経験だからな。

必然的に地上戦のメインは俺達が担う事になる。


「サクラさんとツバキさんは戦闘職代表という事で、地上でのメインアタッカーをお願いします」

「はい」

「分かったわ」

「ブリラさん。2人は島の外で活動している冒険者の中でも上位に位置するので、彼女達の戦いっぷりから、どこまで行けるかを判断してください」

「おう、分かった」


あ、サクラさん達が冒険者上位って言われて照れた。

先日ふたりだけでボスを倒したって言ってたから間違いないと思うんだけど。


「リースとレイナとウィッカさんは、ひとまずは後ろから周囲の警戒をお願いします。

もし魔物がサクラさん達を突破して来たり、側面から挟撃してくるようなら援護に向かってください」

「うん」

「はい」

「これでこっちは良いとして、ブリラさんたちは普段どんなフォーメーションですか?」

「まぁ見ての通りだな。俺がタンク兼荷物持ち兼地上の採掘。ふたりはアタッカー兼水中対応全般だ」

「では、ブリラさんはサクラさん達と一緒に前衛をお願いします。

出てくる魔物の解説をしてください」

「ふむ。良いだろう」

「タツミさんとオコトさんは俺と一緒に水中の警戒をお願いします」

「「分かりました」」

「他にブリラさん達から見て確認すべきことはありますか?」

「そうだな……道中の採掘ポイントはどうする?掘っていくのか無視するのかで移動速度や荷物の量も変わるが」

「行きは少なくとも無視しましょう。今回はルートと出てくる魔物の強さを確認することを優先にします」

「分かった。なら後気になるのは嬢ちゃんたちの強さくらいだ。

だがそれは実際の戦いっぷりから考えよう。

丁度ダンジョンに着いたしな」


そう言った視線の先にはパックリと割れた地面があった。

どうやらこれがダンジョンへの入り口らしい。

後書き会議室


地球を見下ろす宇宙ステーションの一室。

その会議室では数名の大人たちが日夜会議を繰り広げていた。


「しかし、本当に大丈夫なんでしょうか」

「安心したまえ。今の時代、情報漏洩の危険性と守秘義務の責任の重さは小学生でも知っているさ」

「いえ、そこはそんなに疑ってませんよ。

そうじゃなくて、一プレイヤーにイベントの根幹に関わる部分を任せてしまうなんて。

最悪イベントそのものが立ち行かなくなる可能性だってあるんですよ?」

「ふっ。それはそれで面白そうじゃないか」

「主任……」


主任と呼ばれた男は眼鏡をくいっと持ち上げつつ眼下の地球を見下ろした。

はぁ、とため息をつく男性。


「それ、ただのホログラムですからね?」

「分かってるさ。

だがね。地球の歴史が神様が思い描いたシナリオ通りだったとしたらどう思う?」

「それは……なかなかに残酷なことを考える神様だなって思いますね。

戦争もあれば疫病や天災で苦しむ人は今でも大勢いますからね」

「だろう?神様が全知全能ならそんなものは無くそうと思えば無くせた筈だ。

だがそうはしなかった。なぜだろうね?」

「人類の成長に必要だったから、でしょうか」

「それもあるかもしれない。

だけどそれ以上にきっと、楽しそうだったから、じゃないかな」

「楽しそう?」

「そうさ。自分の思いもよらない出来事が起きる。

それは何とも心躍る出来事じゃないか」


そう言って主任は楽しそうに笑う。

それを見た他のメンバーは改めてため息をついた。


「それに引きずられて徹夜するのは私達なんですけどね」

「そこは製作スタッフに入った時から決まっていた運命だと思ってくれ」

「はぁ。そうでしょうとも」


それにしても、と、ディスプレイに目を向ける。

そこには主任の遊び心を幾つか引き当てた可哀そうな少年が映っていた。

いや、本人は全くそんな事は思って無さそうなので、幸運と呼ぶべきか。


「種族その他を選んだら雪山とか無人島とか、とにかくヤバいところに飛ばされるって予めこちらで情報を流しておいたのに、見事選ぶし。即死スタート地点に用意された補填称号をばっちり獲得するし。

魚人族用に用意しておいた海作物を育て始めたりとか、彼の頭の中はどうなってるんでしょうね」

「さぁ。言えるのは、僕達とは頭の回転方向が違うということだろうね」

「いや、私からしたら主任も十分回転おかしいですからね」

「そんなに褒めるなよ。はっはっはっは」

「褒めてませんって」

「あ、そうだ……」

「「!!!?」」


主任の一言に緊張が走る。

この「あ、そうだ」から今までどれほど奇想天外な言葉が飛び出してきたことか。

全員が身構える中、楽しそうに主任が言葉を続けた。


「彼は確か高校生だったね。もし進路が決まってないならうちにスカウトしよう。

再来年には新しいプロジェクトも立ち上がるだろうから、彼のアイディアを色々取り入れさせてもらおうじゃないか」

「(なんて可哀そうな)」


海里の預かり知らぬところで進路候補が決まった瞬間である。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうして玉手箱(?)を開けたカイリは人柱となったのであった。 めでたしめでたし。 追記:カイリ以外からの返信は受け付けません。
[一言] なんと!カイリは神々の生贄か。 目をつけられて「かわいそうに…」って言われちゃう就職先候補は怖いけどカイリにとってはかわいそうではない事をお祈りするね。
[一言] ある意味出世街道に乗ったな
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