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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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作戦会議

領主館を出た俺とバロンソさんは情報交換も兼ねて冒険者ギルドに来ていた。

というか、こういう閉鎖された島でもギルドはあるんだな。

ギルドの扉を抜け中に入れば多くの視線が俺に注がれた。

閉塞的な島だ。新顔は一瞬で分かるんだろう。

バロンソさんが居なければ絡まれていてもおかしくない。

逆にこちらからまばらに居る冒険者たちを確認する。

種族はバラバラだけど、いずれも筋肉ムキムキで持っている武器もハンマーやツルハシだ。槍っぽいのは巨大なタガネかもしれない。


「ふむ。冒険者というより、工夫こうふって雰囲気だな」

「おうよ。ここはお前みたいな島の外で魔物相手にチャンバラしてた奴じゃ役には立たんぞ」


おっと、バロンソさんが居ても絡まれるか。

マウンテンゴリラっぽい人獣のおっさんが腕を組んでこちらを見ていた。

まぁそれは良いんだけど待ってくれ。


「一つ違うぞ」

「違う?」

「俺は農家だ。普段戦ってる相手は大地だ。そういう意味ではあなた方とそう違いは無いと思うぞ」

「農家だぁ? あんな土を弄って遊んでる奴らと俺達を一緒にするんじゃねぇよ」

「そうか、じゃあ試してみようか」

「試す?」

「これだよこれ」


俺は右手を前に出す。

それは握手じゃない。腕ずもうのポーズだ。

ぱっと見、悪い人ではないけど脳筋っぽいからな。

こういう時はこっちの力を見せた方が仲良くなりやすい。


「か、カイリはん! いくら何でもそれは無茶でっせ!」

「だっはっはっ。バロンソの旦那は下がってな。

良いじゃねえか。農家の実力がなんぼのもんか見せてもらおうぜ。

だが力が余って腕が折れても知らねぇぜ」

「まぁまずはこれ以上は拳で語ろうぜ」

「おうよ!」


俺達は備え付けのテーブルに移動して向かい合う。

お互いに右肘をテーブルに付け、握り合う。

ギルド内に居た奴らは、見学を決め込んで周囲を囲んでいる。


「開始の合図は?」

「無しで良いだろう。別に開始のインパクトで勝負する気はないからな」

「へっ。ならジワジワ力籠めていくから泣きながら謝ったら止めてやるよ」

「そりゃどうも」


ぐいっ。

宣言通りじわじわとおっさんの腕に力が籠り始める。

俺達の腕はまだビクともしない。


「そう言えば名乗りがまだだったな。俺はカイリだ。おっさんは?」

「馬鹿野郎、おっさんじゃねぇ。まだ24歳だ。名前はブリラ。この辺りじゃ名の知れた冒険者だ。

さて、まだまだ余裕がありそうだな。ならギア上げていくぜ」

「あいよ」


ぐぐぐっ。ビキビキッ。

目に見えておっさん、ブリラさんの腕の筋肉が盛り上がる。

それでも俺達の手は1ミリも動かない。

ごくりと誰かがつばを飲む音だけが響いた。


「へっ。言うだけの事はあるな。なら全力で行くぜ!」

「どうぞ」

「オオッ!!」


ビシッ!

テーブルから悲鳴が上がる。どうやらこれ以上やると俺達より先にテーブルが粉砕されそうだな。

ならもう終わらせるべきか。


「こっちからも行くよ」

「なっ、ぐぅっ」


遂に組んでいた腕が動き出すかに見えた、次の瞬間。


ドガッ!


遂にテーブルが耐えきれずに壊れてしまった。

それを見て俺達も手を放す。


「引き分け、かな」

「馬鹿野郎。最後の、俺の負けに決まってんだろ」


ニカッと笑って手を差し出すブリラさん。今度こそ普通に握手だ。

俺も手を出してしっかりと握手を交わす。

周囲からも俺達に拍手が送られる。


「農家を馬鹿にして悪かったな」

「いや、気にしてないよ。それよりテーブルどうしよう」

「ふふふっ。もちろん弁償ですよ。ようこそ『海の勇士』様」

「げっ。姉御!!」


ガシッと後ろから肩を掴まれた。

振り返れば伊勢海老っぽい魚人のお姉さんがこめかみをピクピクさせてるし。

それと何気にブリラさんより握力が強いんですけど?


「えっと、姉御さん?」

「ふふふっ。申し遅れました。当ギルドのサブマスター兼受付嬢のイセーラです」


さっきから目が全然笑ってませんよ。

まわりの男どももすっかり大人しくなってるし。

どうやらここの最強は彼女らしい。


「私はこの方とお話がありますので奥に行ってます。

その間に片付けて新しいテーブルの手配もお願いしますね」

「はっ、はい!」

「よろしい。では参りましょう」


そのまま俺はズルズルと奥へと連行されていった。

冒険者たちは完全に舎弟っぽくなってるし。

そして会議室と思われる1室に入った。


「はぁ。突然騒動を起こすとか何を考えていらっしゃるですか」


扉を閉めた瞬間、ため息と一緒にさっきの緊迫した雰囲気は無くなっていた。

どうやら俺達をたしなめる為にわざとやってたっぽいな。


「ああ言うのは一度こちらの実力を示しておいた方が話が早いかなって思ったんです」

「まあ言いたい事は分かりますけどね。彼らは見た目通り脳筋ですから。

それで知りたいことは分かりましたか?」

「半分くらいは。後は彼らのような冒険者がどれくらい居るのかと、坑道ないしダンジョンの情報を教えて欲しいです」


それを聞いたイセーラさんの目がキラリと光る。

どうやら俺の意図はほとんど伝わってるみたいだな。


「つまり外から来る者たちに上陸を許すこと前提で動かれるということですね?」

「それしかないでしょうからね」

「ですが、あなた様の全戦力を投入すれば海上で壊滅させることも可能なのでは?」

「不可能ではないかもしれません。ですがそれをして失敗した場合、この島は侵略されるでしょう。

住民は魔物と判断されて攻撃を受け、あらゆるものが奪われ街も破壊されるでしょうね」


まだ魚人族の認知度は低いと思うし、その状態でこちらから攻撃をするのは危険だ。

俺の攻撃が島からの攻撃だと勘違いされるのも問題あるし。

イベントとしても島を攻略するのか、島にある坑道を攻略するのかで全然違うからな。


「なのでやってきた人たちには極力穏便にお帰り頂くのが最もよい結果になると思います」

「なるほど、分かりました」

「その為にも、彼らを満足させるものが必要です。

もちろん機密情報まで公開する必要はないので、教えられる範囲で情報をください」

「分かりました。ではこちらを」

「……ふむふむ、なるほど」


イセーラさんの公開してくれた情報を確認していく。

よしよし。これなら幾つかプランを立てられそうだな。

後書き日記 リース編


21xx年7月10日


それは麦茶が切れたので商店街に買いに行ったときでした。

ふと視界の先に見えた後ろ姿。あれは、先輩?

思い切って声を掛けてみたら、やっぱり先輩でした。

先輩は相変わらずというか、何かの本を読みながら歩いてたようです。

今回は、デート雑誌、ですか。

……えっ?先輩、誰かとデートされるんですか?

先輩のお付き合いしてる人ってどんな人ですか?

え、違う?別に誰とも付き合ってはいない?そうですか。ふぅ。


でもなら何でそんな雑誌を読んでいるんでしょう。

ふむふむ。なるほど。

それなら実際にそのデートスポットに行ってみた方が良いんじゃないでしょうか。

写真だけじゃ分からない事って多いですからね。

え?まぁそうですね。

デートなのですから、1人で行くよりも2人で行った方が良いでしょうね。

もちろん、その、異性の方と行くべきでしょう、けど……。

……はい?私の明日の予定ですか?

特には何もありませんけど。

一緒に来てほしい?私にですか?

いえ、いやじゃないです。でもそれって、デー……いえ分かりました。

では明日の9時に駅前で待ち合わせ、ですね。

行き先はその雑誌に載っていた虹駆けの滝、と。

ちょっと移動が大変そうですから動きやすい服装の方が良いですね。

デートと一言で言っても行き先によってはお洒落だけじゃなく、そういった動きやすさも大事ですから。

ハイヒールで山歩きなんてしたら楽しむ前にくたびれてしまいますからね。

こういう事も雑誌を見るだけでは分からないでしょう。

はい、ではまた明日。

晴れると良いですね。


先輩と別れた私は大急ぎで家に帰りました。

なにせデートです。

急すぎて着ていく服を選ぶだけで大変です。

出来る事なら先輩にはその辺りにも気を配れるようになって欲しいですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] ぼったくり料金で販売も有りかな 入手手段がいくつか目に見えていれば、大体落ち着くだろうし
[気になる点] イベントとデート雑誌ってどんな繋り? イベントの島をデートスポットにでも作り替えるつもり? カップルの方が少ないだろうにナニするつもりなんだ? さっぱりわからん(´・ω・`)?
[一言] 今更ながらなんですが、竜宮農場って立地的に「りゅうぐうのうじょう」って読みで良いんですかね? 一応「たつみやのうじょう」とも読めますし、どこにも明記されていないので。
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