イベント会場へ向かおう
ちょびっと夏バテ中です。
皆さま体調には十分お気を付けください。
コロナも体が元気なら掛かりにくいでしょうからね。
午前中の勉強会を終えた俺は、昼食を摂った後アルフロにログイン。
今は改めて招待状と添付された地図を眺めている。
「うーん……」
「どうしたの?」
「いや、これさ。イベント会場になる島って中央を挟んでここと正反対だろ?
そこまでどうやって行こうかなって思ってな」
「??転送門で行けば?」
「いや、転送門って向こう側が登録されてないと飛べないだろ?」
「あ、そっか。招待状にはその辺り、何か書いてないの?」
「そう思って読み返してるんだけど、無さそうなんだ」
招待状を覗き込んできたリースにため息交じりに答える。
これは運営が忘れているのか、それとも自力で行けって事なのかむずかしいところだな。
「行けないの?」って聞かれたら答えは「時間さえ掛ければ多分行ける」だ。
ま、元々周辺の海をもっと探索しようとは思ってたから渡りに船なのかもしれない。
「よし、ちょっとひと泳ぎしてたどり着けるか試してくるよ」
「う、うん。気を付けてね」
リースに見送られながらまず向かったのは転送門を使ってホッケ族の国だ。
女王様に挨拶とかすると時間が掛かりそうだからパスだな。
でも畑の様子は確認しておくか。
「俺達海の 仕事人♪」
「「ウッ♪」」
「今日も 力の限り 耕すぜ♪」
「「ウォッ♪」」
「みんな大好き スギナちゃん♪」
「「ウッ♪」」
「あの子と一緒に 食べたいぞ♪」
「「ウォッ♪」」
おぉ~やってるやってる。
畑耕す時に歌いながらやると良いって教えておいたんだけど、ちゃんと実践しているようだな。
畑の状態も悪くなさそうだし、この調子で頑張ってればいい作物が採れるだろう。
「あ、ヌシ様だ~」
「ほんとだヌシ様だ!」
「「ヌシ様~~♪」」
畑の人達に見つかってしまい、一斉に声を掛けられた。
仕方ないからちょっと寄っていくか。
「みんな、頑張ってるね」
「はいっ。ヌシ様にご指導頂いた通り、畑に感謝しながら日々頑張っております!」
「子供たちも手伝ってくれるようになって家族仲も良くなったんですよ。やっぱり共同作業はいいですね」
みんなで同じものを作り上げると、自然と仲間意識が高まるからな。
リアルでももの作り体験を親子でっていうのはよくある話だ。
「そうかそうか。何か困ってることとかは無いか?」
「うーん、それなんですが」
言い淀む、農家の魚人。
「何でも言ってくれていいぞ」
「はい。ヌシ様に耕して頂いた畑は無事に豊作が続いているのですが、ただ最近、少しずつ味や見た目が変わるものが出てきまして」
「ふむ。今あったりする?」
「はい。えっと、こちらです」
「どれどれ」
渡されたスギナは俺が育てているものよりも赤みが強く固めだ。
特に病気っぽくは無いから心配はいらないと思うが。
【薬味スギナ:レア度3、品質3。生産者:ホッケ族ヒレイオ。
海スギナを品種改良することで出来た新種のスギナ。
通常のスギナよりも辛みが強く苦味が薄い。
乾燥させて粉にすれば香辛料としても使える。
またその粉は刺激が強い為、目や鼻に入らないように注意する事】
なるほど。品種改良か。
乾燥させて粉にすればってことは唐辛子に近い香辛料になったのかもしれないな。
後は味次第か。
「どうやら皆の個性のお陰で品種改良が起きたみたいだな」
「それじゃあ」
「安心してくれ。病気とかじゃないから。言ってしまえば嬉しい誤算ってところだ。
もし良かったら、他のも合わせて俺の方で買い取るぞ」
「いえいえ、お代は結構です。
俺達としては前のより食べにくくなっちまって、怒られるんじゃないかって思ってたくらいで」
「そんなことで怒らないよ。
みんなが一生懸命畑を耕した結果なんだから。
もしそれで畑が枯れたとしても怒ったりしないから安心してくれ。
それと、多分今後も変化は起きると思うけど、恐れずどんどんチャレンジしてほしい。
これがここの特産品になるかもしれないからな。
俺で力になれることがあったらすぐに泳いでくるから」
「は、はい!!」
そこから他の品種改良品を吟味したり、一緒に畑仕事をしたり、子供たちと競争しながら耕したりと充実した時間を過ごした。
って、違うだろ。
俺は南を目指す途中だったんだよ。
危ない危ない。なんて危険な罠が仕掛けてあるんだ。
ごほんっ。
「気を取り直して『召喚:イカリヤ』」
「きょっ♪」
「遅くなってごめんな。畑を頑張ってるのを見るとどうも手伝いたくなってな」
「きょ~」
仕方ないなぁ、というより、そうなると思ってたよ~という感じのイカリヤ。
俺のやることくらいお見通しか。
「よし、今日はわき目も振らずにイベント島を目指していこう」
「きょきょっ!」
力強く頷くイカリヤ。
そして腕を1本差し出すと捕まる様に伝えてきた。
「きょっ」
「離さないようにってえぇぇーーー!!」
捕まえた腕が逆に絡め捕られて固定されたかと思った次の瞬間。
俺はジェットコースターに乗っていた。いや、単純にイカリヤに引っ張られてるだけなんだけど。
ってこれ、この前海溝を一緒に泳いだ時の倍くらい速度出てないか?
ほらいま、飛び魚っぽい魚が一瞬で追い抜かれて行ったし。
「って、イカリヤ。前前!」
「きょ?っきょ!!」
ドゴッ。ガラガラガラッ……
海底から突き出ていた岩に激突。
あわや大事故かと思ったら、ぶつかった岩の方が粉砕されてイカリヤは無傷だ。
「イカリヤ、安全運転大事だよ」
「きょ~」
「まぁお陰でだいぶ近くまでは来れたみたいだから、ここからはゆっくり景色を楽しみながら行こう」
「きょっ♪」
グィッ
イカリヤと優雅に海の散歩、と思ったらジェットコースターから中型バイクに変わっただけだった。
ただまぁ、今度はちゃんと安全運転はしてくれてる、のかな?
通りすがりの魔物を切り倒すくらいの余裕はあるみたいだし。
後書き日記 リース編 続き
勉強会の後。
改めてアルフロの姿に制服は無かったなと反省しています。
なので次回までにリアルの姿をベースにしたアバターを用意しておきましょう。
とは言っても顔の輪郭を整えて目の形や眉毛も理想に近づけて……。
あ、あと腰のくびれとか胸とかもちょちょっと良い感じに。
おぉ。芸能人どころかアイドルでも通じそうなアバターが出来ました。
ちょっとやり過ぎでしょうか。
いえいえ、これくらいメイクアップの範疇です。女の子ですから!!
念のため、クラスメイトの意見も聞いておきましょう。
回答1:「えっと、どこの(アイドル)グループの子? 私最近のグループに疎くって。ごめんね」
よしよし、なかなかに好印象ですね。
回答2:「良いと思うよ。(叶わない)理想を追い求めるのがバーチャルの醍醐味だし」
どこか生暖かい視線を感じたのは気のせいでしょうか。
回答3:「ぎゃははははっ。いい。うん、いい!!」
ゆっこめ。学校で会ったら覚えておきなさいよ!
こほんっ。
概ね好感触みたいですね。よしよし。
あと勉強するなら制服かなって思ったけど、今日の反応を見るに微妙ですよね。
レイナみたいに着物っていうのもちょっと来てみたい気がするから夏祭りに浴衣を着るって言うのも良いですよね。
あ、そういえば8月のアルフロのイベントは夏祭り系の何かって話でしたよね。
その話を聞いてレイナが気合入れてましたし。
あの様子だと全員分の浴衣とか作りそうですよね。




