ダームおじさんの家族
昨日は結局1日寝込んでしまいました。
m(_ _)m
今は無事に回復しています。
ご心配をおかけしました。
程なくして皆がログインしてきた。
今日は予めこのおっさんの事で話があるって言ってたからな。
ただ問題は今になってもまだおっさんが起きないんだけど。
「……ねぇカイリ君。何か通知が出てるんだけど」
「ん?どれどれ」
『可憐なる乙女の口づけにて目を覚ますであろう』
それをみたサクラさん達からため息が聞こえてきた。
どうやら最初におっさんに会いに行った時も色々と面倒なことをさせられたらしい。
ふむ、どうしようか。
皆を見てみるも、ゲームの中とは言え女の子にとって口づけは特別なものだろう。
「よし、こうなったら」
「どうするの?」
「海の中に放り込んでみよう。流石に起きるだろう」
『鬼!悪魔!!』
ん?いま通知文が変わってなかったか?
『~~ヒューヒュー♪』
「……このおっさん絶対起きてるよな」
「みたいね。でも通知通りにしないと好感度下がって今後お願いを聞いてくれないかも」
『そうだそうだ。ワシは暴力には屈しないぞ!』
「ふーん、そうか。それならこっちにも考えがある」
実際問題、酒とご飯をちらつかせれば終わる気もするけど、それは後に取っておいてやろう。
先に別の手段が用意出来るか確認してみるか。
……ふむふむ。そうか。
「おっさん、良かったな。
口づけしても良いって女性が見つかったぞ。
すぐに呼び寄せてやるからな」
『わくわくどきどき』
という訳で、どうだ?
なかなか好みのタイプ?そうか、それは良かった。
じゃあ好きなだけやっちゃってくれ。
「うわぁ」
「おじさん、起きるなら今のうちだよ」
「カイリくんは凄い事考えるわね~」
なにか酷い評価を頂いている気がするけど気にしない。
そうこうしている間に俺の呼び寄せた乙女がおっさんに覆いかぶさり、そして。
ぶちゅうっ
濃厚なキスをした。
すると途端に目を開けるおっさん。
そして。
「は?ひっ……うぎゃあ~~~~~」
「グモッ」
視界いっぱいに映ったカウクイーンの顔に、断末魔の叫び声をあげるおっさん。
まったく酷いおっさんだな。
お望み通り乙女の口づけで起こしてやったって言うのに。
一方のカウクイーンはおっさんの態度を気にした風もなく、満足げに東側へと帰っていった。
「おーい、おっさん。生きてるか?」
「はぁっ、はぁっ、はぁ~~。死ぬかと思った」
「これに懲りたら出すお題は考えるんだな」
「あ、あぁ」
まだ顔面蒼白だけど、いい薬になっただろう。
それにこれでようやく話が進む。
「それで、おっさんに島の開発を手伝ってもらうには、おっさんの保護している人たちも纏めてここに連れてくる必要があるってことだったよな」
「あ、あぁ。そうだ。
この島は自然も豊かで外敵もいない、あの子たちが暮らすには理想的な環境と言えるだろう」
「なら後は俺達全員が受け入れに賛同するか次第だな。みんな、どう思う?」
「そうねぇ」
「島の広さは私達だけじゃ使い切れないくらいですし問題ないと思います」
「後はどんな子が来るか次第よね。変な人を連れ込んで治安が悪くなったりとかも嫌だし」
「性格的に合わない人とか変態だったらいやね~」
「変態……このおっさんの同類だと考えるとあり得るか」
「ちょっ!?」
おっさんが何か言いたげだけどそこは無視するとして。
概ねみんなは受け入れに好意的なようだ。
後はその子たちと会ってから判断すればいいか。
「よし、じゃあみんなで会いに行ってみようか」
「「はい」」
大勢で行ったら驚かれるかなって心配もあるけど6人くらいなら大丈夫だろう。
それにもしかしたら今後一緒の拠点で生活することになる訳だしな。
そして折角だからと言ってリースが主導して大量のお弁当が作られることになった。
普段から多少はストックしてあるけど、100人分は流石に無いからな。
そうして普段はあまり料理をしないメンバーも含め、みんなでワイワイと料理をしつつ、つまみ食いをしようとしたおっさんをランプとバラが肩を組んで連行しつつ、準備は滞りなく済んだ。
さて。そうしてやってきたのは、おっさんの城改め『ダームの城』の裏庭。
簡易な柵で仕切られたそこには小さな菜園と、あと何故か大量にある犬小屋。
「えっと、おっさん?」
「「……」」
「い、いや。違うんだよ。みんな誤解をしているだけだ」
全員から白い眼を向けられてたじろぐおっさん。
いやでも。100人くらいの子供を保護してるとは聞いたけど、まさか犬小屋は無いだろう。
この辺りは気候も住みやすいとは言ってもあんまりだ。
「……説明してもらいましょうか」
「ああ。というか見てもらった方が早いと思う。
みんな、ちょっと集まってくれ!!」
「「はーい」」
「「わんわん」」
「「コンコン」」
「「みゃおーん」」
おっさんの呼びかけに、人の声だけじゃなく動物たちの声も多く聞こえてきた。
そして集まったのは100匹近い動物たち。
もしかして、この子たちがおっさんの言ってた子たちか?
「知らない人たちが居るワン」
「そうだにゃあ」
「クンクン、美味しそうな匂いがするからきっと良い人だよ~」
そしてちょっと癖のある話し方だけど確かに人の言葉を話してる。
ということはただの動物って訳でもないんだろう。
「で?」
「うむ。この子たちは人獣と呼ばれる種族でな。
分かりやすく言うと獣人族が獣の要素を持った人間だとするなら、人獣は人間の能力を持った動物なのだ。
子供のころはこうして動物の姿しか取れないが、大人になれば人の姿にもなれる。
その為……」
ぐきゅるる~~
おっさんの説明の途中で盛大にお腹のなる音が響いた。
「……続きはご飯を食べながらにしようか」
「うむ。そうしてくれると助かる」
「いや何でおっさんが答えるかな」
「それはもちろん、ワシの腹の音だからだ」
「はぁぁ」
思わずため息が出るな。
とにかく作ってきたお弁当を並べるか。
そう思ってアイテムボックスから取り出した瞬間、子供たちが騒ぎ始めた。
「「わんわんわんわんっ」」
「はい、まてっ」
「「わんっ!」」
俺の号令にビシッと整列してお座りをする子供たち。
これ人の言葉を話さなかったら完全に普通の動物と変わらないな。
むしろ言葉が正確に伝わる分、普通よりも物分かりが良くなってるんだろう。
後書き日記 リース編
21xx年6月17日
突然ですが、昨日の終わりに起きた事件、というか突然の来客を見て一つ思ったことがあります。
私達のクランって海底に畑を作っちゃうカイリ君をはじめ、一般のメインシナリオからは外れた人が多い中、サクラさんとツバキさんは例外的に普通の人たちだと思ってましたが、お二人も例に漏れず変わった人たちだったんだなと。
私ですか?
うーん、私もメインシナリオ放置で料理が出来たら良いかなって思ってるので、一般的とは言い難いでしょうね。
もちろん自分の事を変人だと言ってる訳ではないですよ。
それはともかく。
お二人が連れてきた変態紳士。ごほん、もとい、ちょっと変わったおじさん。
私の料理を美味しいって言ってくれたことから悪い人ではないと思います。
子供たちにも好かれているようですしね。
保護している者が100人近く居ると聞かされた時に最初に聞かされた時に思い浮かんだのは、
(なんで者? 普通に人でよくない?)
でした。
もう少し聞いてみるとどの者もまだまだ子供だそうですけど、やっぱり者って表現するんですね。
でもその表現の意味も実際に会ってみたら分かりました。
犬、猫、キツネ、タヌキ。
他にもテレビか動物園でしか見たことないような動物の子供たち。
確かにこれは人と呼んでいいのかは悩みますね。
うちはマンション暮らしなのでペットは飼えないから、この子たちがただの動物だったら拠点に連れ帰ってしまいそうです。
あ、でもその前に。まずはちょっと撫でさせてほしいです。




