レアイベントハンター?
嵐がやってくると途端に体調を崩す今日この頃。
体温は36.9℃
コロナではないと信じて明日を待ちます。
翌日。
学校に行くと仁王立ちした陽介が俺を待っていた。
というか、最近このパターンが多いな。
「さぁキリキリ吐いてもらおうか!」
「……30点」
「なんだって~~」
俺の辛口評価にガクリと膝を突く陽介。
相変わらずノリがいい。
「いやだって、前回と同じだよ?これ」
「やっぱりダメか」
「うんダメ。次からは新しいネタ仕入れて来てくれ」
「おう。楽しみにしててくれ!」
俺達のよく分からない漫才に周りのクラスメイトからクスクスと笑いが漏れる。
まぁこのクラスになってから既に何度も見ている光景だからな。
みんなも慣れっこだろう。
「それで陽介。エビチリかエビせんは手に入ったのか?」
「おぅ。活きが良いのが沢山居たからな。って違うだろ。
魚人と争うなって言っておいて食べようとするな」
「残念。陽介のたらし術で何人かは『私を食べて』状態になったと思ってたのに」
「お前は俺をどう見てたんだ……」
「まぁそんな冗談は置いておいて。
その様子だと無事に交流は持てたのか?」
「ああ。ばっちりだ。
最初はバリバリ警戒されてたけどな。
海里の言ってた『海の勇士』って言葉を出した瞬間、ころっと態度を変えたぞ」
「そうかそうか」
想像以上に影響力デカいみたいだな。
これは信用できる人以外には伝えない方が安全っぽいな。
「って、それよりもだ。
海里。あのアナウンスはどういう事だ?」
ちっ。誤魔化されなかったか。
「そこはほら。タコ焼きで口封じされてくれ」
「いやいやいや、口封じって。それじゃ俺殺されてるから。
てか、そのタコ焼きも食べたら『レアドロップ率UP』なんてすごいバフが付いたんだけど。
課金アイテムですら通常のドロップ率UPしかないのに、あんなのマーケットに出したら城が建つレベルで金が動くぞ」
「やっぱりか。そうだと思って流石に今回は俺も自重したぞ」
「自重してこれかよ。はあぁぁぁ」
深々とため息をつく陽介。
その顔は諦め半分、そして期待も半分って感じだ。
「まあ、俺としては次の問題が起きたから、それどころじゃないんだけどな」
「ぬぁんだってぇ~~」
俺の追撃に地の底から這い出るような声を出す陽介。
というかどうやってその声出したんだよ。
「なんで海里はそんなにポンポンレアイベントに遭遇出来るんだよ。
俺達なんて良くてフィールドボスからレアアイテムを見つけるのが精いっぱいなのに」
「そんなの、王道から外れた事ばっかりしてるからに決まってるじゃん」
「くっ。正論過ぎる。
こうなったら俺達も……いやダメだな。
トップ攻略クランの看板背負ってるんだ。
今更レアイベント探しに方々に散ろうなんて出来ない」
急がば回れとも言うけどな。
でも確かに見つかるかどうかも分からない事に仲間を連れだせないか。
うちなら『面白そう』の一言でみんな来てくれそうだけど。
「それでそれで?
次はどんな変態プレイをする気なんだ?」
いや、変態じゃないし。
ちょっと変わったことしてるだけだし。
「まだどうなるか分からないから秘密だ。
それと一応言っておくと今度のは俺じゃなくてクランメンバーが見つけてきた案件だから」
「うぐぐっ。類は友を呼ぶってことか!」
「いやそれだと陽介も同類になるからな」
「俺は変態じゃねぇ」
「アァソウダナー」
「なにその棒読み。えっ、違うよな。なっ?」
うむ、相変わらず陽介をいじるのは楽しいな。
まぁ実際のところ、陽介はそれなりにまともな部類に入るとは思ってる。
けど面と向かっては言ってやらん。
………………
帰宅後アルフロにログインした俺を迎えてくれるのはいつも通りの皆だ。
「みんな、おはよう!」
「くぃ」
「きょ」
「ぴっ」
そして更に。
「「おはようございます!!」」
ビシッと整列して挨拶をするユッケを始めとした魚人族20名。
あの後結局、もっとなにかお礼をしたいと言われたので、なら何人かうちの畑も手伝ってほしいと伝えたらこうなった。
今は住み込みで丁稚奉公みたいな感じになっている。
特にヤドリンには迷惑を掛けたので頭が上がらないらしい。
「ヤドリン先生。ご指導のほどよろしくお願いします」
「「お願いします!!」」
「………………くぃ」
うーん、ヤドリンは人見知りだからなぁ。大丈夫かな。
まぁダメだったら言ってくるだろう。
「じゃあこっちは頼むな。俺は地上に行ってるから」
「はっ。行ってらっしゃいませ」
盛大にお見送りされる。
この感じはなかなか慣れそうにないな。
そして地上。西グレイル島へとやってきた俺はまず村の広場へとやってきた。
そこには昨日遅くにサクラさん達が連れてきたおっさんがいびきをかいて寝ていた。
サクラさん達によると高名な建築家らしいんだけど、今のところただの酒好きのおっさんだ。
昨夜来たときは、
「ふむ。場所はまずまずだな」
なんて上から目線で話をしていたのに、リースの作ったタコ焼きを一口食べた瞬間、居住まいをただし敬語を使いだした。
更にはウィッカさんがおちょこで渡したお酒を飲んだ瞬間、土下座せんばかりに腰が低くなった。
その後は会話に花を咲かせ、リースのタコ焼きを食べながらウィッカさんのお酒を飲んで今もまだ寝コケている。
何か相談事があるとか言ってたのに、それは良いのか?
後書き日記 リース編
21xx年6月16日
昨日は色々ありましたが、ようやくオーブンの使い方にも慣れてきました。
今作ってるのは子牛の丸焼き……ではなく北京ダックです。
ランプとバラは仕方ないので許してあげることにしました。
あれから色々試した結果、魔族領で獲れる鉱石の粉を混ぜると綺麗な緑色の炎が出せることも発見しました。
更に嬉しいことに、この緑の炎で料理をすると、追加でバフ効果が付くみたいなんです。
知り合いの料理人の人曰く、水を変えるだけでも効果が変わるそうで、喫茶店を営んでいる人たちは特に良い水を求めて世界中を回っているのだとか。
私はそこまでの情熱を掛ける気はないですけど。
だって今でも十分美味しいってみんなが言ってくれますから。
そうして今日も新しい料理にチャレンジしていた時です。
カイリ君から連絡が入りました。
『タコが手に入りそうだからタコ焼きよろしく!』
流石カイリ君、突然の無茶振りです。
タコ焼き焼くためには専用の焼き台が必要なんですよ?
そんなのこの世界にある訳……ありました。
マーケットを確認すると多種多様なサイズのタコ焼き機。
他にもお好み焼き用鉄板とかタイ焼き用やベビーカステラ用など、各種揃ってました。
タコ焼き機の説明書きに『粉もんは関西のほこりやで!』ってありますから生産者は関西人ですね。間違いなく。
そして準備万端用意してたら送られてくるタコの足。
……えっとぉ。
カイリ君が帰ってきたらお説教ですね。
危うく押しつぶされるところでした。なんですかこの大きさは。
これでタコ焼きを作れって、何千万個作らせる気なんですか!
まぁ新鮮みたいですし。
試しに一口分、お刺身として食べてみましょう。
ぱくっ。もぐもぐ。
ぐっ、これは……
うーまーいーぞーーー!!
と思わず巨大化して目からビームが出てきてしまいそうでした。
キャラ崩壊の危機です。
更には見たこともないバフのオンパレード。
いつもながらにカイリ君には驚かされてばかりです。




