海の勇士
祝15000PT
これまでの作品に比べると驚きのポイントです。
皆さまいつもありがとうございます。
魚人族の街に向かいながら俺は通知履歴をチェックしていた。
最近は面倒だから非表示にしてるんだけど、流石にさっきのは何か大事になってる可能性もあるからな。
ちなみに緊急の連絡については非表示設定を無視して表示されるようになっている。
「えっと、これらだな」
この1時間くらいだけで大量に通知が届いてる。
『突発型レイドボスのソロ討伐に成功しました』か。
レイドボスなのに突発的に現れるとか迷惑極まりないな。
まぁ勝った後だしそれは良いとして。
<称号:海難を征するモノ を取得しました。
以降、水棲種族からの好感度上昇および敵意減少。
一部の魔物に畏怖と敬意を持たれる。
水棲魔物に対して使役などの一部のスキル成功率の上昇>
久しぶりの称号取得だ。
使役の成功率上昇とかあるし、従魔術を持ってる俺にはぴったりの称号だな。
「っと、そろそろ街に着く……ん?」
門に続く道の両脇にずらっと並んだ魚人の兵士たち。
更に門の正面には女王様とユッケが並んで俺を見つめている。
まるで英雄の凱旋だな。
うーん、色々面倒な事になりそうだし帰りたいけど、そうもいかないか。
仕方ないので中央の道を通って女王様の前に向かった。
「おかえりなさいませ。海の勇士カイリ様」
「海の勇士、ですか」
恭しく首を垂れる女王様。
って、まって。これじゃあ完全に目上に対する態度じゃん。
「女王様。これはどういう状況ですか?
俺は魚人族のしきたり等には疎いものですから」
「そうでした。カイリ様は地上人ですものね。
少し話が長くなりますので、お疲れでしょうし食事を摂りながらに致しましょう」
そうして城の食堂っぽいところに移動した俺達は、出てきた軽食をつまみながら再開した。
「我ら魚人族の祖にして偉大なる英雄王の残した言葉にこんな一説があるのです。
『私が没した数十年先。魚人族に多くの災厄が降りかかることだろう。
しかしその時。かならず立ち上がる者が居る。
その者はいかなる困難にも勇敢に立ち向かい、ときに魔を殲滅し、ときに悪を調伏することだろう。
その者は私達魚人族の中から生まれるかもしれないし、全く異なる種族かもしれない。
いずれにしてもその者が現れた時、海の勇士としてもてなすことだ。
さすれば魚人族に再び平穏がもどるであろう』と。
折しも外海では地上人との争いが激化している時です。
カイリ様こそがこの予言にある『海の勇士』に間違いありません」
「そんなこと言われてもな。俺にそんな凄い力はないぞ。
あの巨大ボスを倒せたのだって従魔の皆が居てくれたからだし」
「それでも今日初めて会ったばかりのこの国の為にご自身の危険を顧みず戦って下さったのは確かです」
「いや、あれもただ自分の畑を守りたかっただけで……」
「カイリ様が望むのであればこの国の王になっていただいても構いません」
「それは流石に……」
「ただ、その場合は娘のユッケが嫁に行くことになるかとは思いますが」
「ごめんなさい!!」
捲し立てる女王様に全力でNOを伝える。
いや、ユッケが嫌いとかじゃないんだ。
ただな。種族が違い過ぎるから。
俺は魚を愛でる趣味は無いんだ!!
分かってくれ。
「とにかく、国王云々に興味はありません。
ここの皆さんには先ほどの約束通り畑を耕してもらえれば十分です」
「そうですか。
まぁ無理強いしてもいけませんね」
良かった。諦めてくれたか。
でももしかしたらこの先、他の魚人族の国でも似たような現象が起きるのか?
少し怖くなってきたぞ。
まぁそれは置いておこう。
それより気になるのは外海で地上人と争っているという点だ。
それって多分他のプレイヤー達のことだよな。
いくら見た目が魚っぽいからって、これだけコミュニケーションが取れる相手なんだから俺以外にも交流を持ってる人が居てもおかしくないんだけど。
あ、でもサハギンって言ったら人魚と違ってモンスターのイメージが強いからな。
初見で攻撃してそのままずるずる行ってしまう可能性もあるか。
とりあえず知り合いに声かけてみるか。
『ダンデ。今いいか?』
『おう、カイリか。聞いたぞさっきのアナウンス。また面白いことやらかしたみたいだな!』
アナウンス?
ってもしかして、さっきのソロ討伐とか他の人にも通知が行ってるのか。
『あっと、その話はまた明日にでも。
それより、今、最前線は魚っぽい見た目の魔物と戦ってたりしないか?』
『おっ。良く知ってるな。
各種族の第3の島の次が小島の群島エリアになってるんだけど、その各島にそれぞれ違う種族の魔物が居るんだ。
大体1/3くらいが海由来の魔物の巣になってるみたいだぞ』
『やっぱりか。今俺の方に入った情報でな。
その魔物のうち幾つかはもしかしたら魚人かもしれない。
つまり知性を持った種族で会話が成立するかもしれないんだ』
『マジか!』
『ああ。出来れば攻撃する前に話しかけてみてくれないか?
合言葉は<海の勇士の友人>だ。もしそれで良好な関係が築けたら良いことがあるかもしれない』
『ふむ、その海の勇士ってのはカイリの事だな。分かった。
それなら無暗矢鱈にその合言葉を広めない方が良さそうだな。
俺達のクランは丁度エビっぽい魔物が占拠してる島を攻略しようとしてたところだから試してみる』
『よろしくな』
ダンデのコミュ力ならきっと何とかなるだろう。
それにあれでもトップ攻略クランのリーダーだしな。
あと俺が声かけれそうなのって言ったら大草原の人達くらいか。
うーん、意外と交友関係狭いな。
まぁずっと海の中に居るから仕方ないんだけど。
「ひとまず地上にいる友人に声を掛けてみました。
うまく行けば争わずに済むかもしれません」
「ありがとうございます。このお礼をいったいどうやって返せばよいでしょう」
「うーん。あ、それなら情報が欲しいです」
「情報?」
「はい、例えば……」
そうして俺は幾つか有益な情報を貰い、転移門で帰るのだった。
後書き外伝 サクラ・ツバキ 3/3(本編に合流、するはず)
それからも釣り天井かと思えばニンジンの棘だったり、ツイスターゲームにモグラたたき。
エトセトラエトセトラ。
後半は特に遊び要素が多かった気がする。
そして遂に最後の試練の間(家庭科室)に辿り着いた。
お題はもちろん……『集まった食材でおいしい料理を作れ』でした。
ですよねぇ。
だってお鍋に始まって、ゴボウ、こんにゃく、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、豚肉……
と来たら?
「はい、ツバキちゃん!」
「えっ、私!? えとえと、カレー!」
「ブッブー」
「ええぇぇっ」
「後半確かにそれっぽいけど、ゴボウとこんにゃくが入ったカレーって一般的ではないと思うよ」
「い、言われてみれば」
「それにルーも無いしね」
「とすると、えっと……なんだろう」
「私的には豚汁、かな」
「ああ!!そうだね♪
豚汁なら家庭科の授業で作ったし多分作れるよ」
そうして私たちは昔の記憶を頼りに豚汁を完成させました。
そう、なんとお味噌もあったんです。ただここから持ち出せないようになっていたので、このイベント?限定ってことなんでしょう。
料理が出来ると共に開く扉。
その先にはオジサンが1人食卓に座って待っていた。
「よくぞ多くの試練を乗り越えてここまでやってきた。
まぁ難しい話は食べながらするとしようか」
「は、はぁ」
ちらっとツバキちゃんの顔を窺いますが、ここまで乗りかかった船ですからね。
仕方ないので私たちも席に着き、予め用意されていた器に豚汁をよそって食べることにしました。
「それで、オジサンがダームさんなんですか?」
「ガツガツッ、いかにも。もぐもぐっ、ワシがダームだ。んぐんぐっ」
話ながら食べ続けるオジサン。大丈夫でしょうか。
「私達、ダームさんに私達の拠点づくりを手伝ってほしくてここまで来たんです」
「ごっくん。ふぅ。
まぁ、ワシのところに来るやつは大体そうだ。
ここに辿り着けたのは君たちが初めてだがね」
「じゃあ」
「だがダメだな。ワシがここに居るのはただの道楽ではない。
守りたい者たちが100人近く住んで居るんだ。
彼らを置いては行けないし、連れて行こうにも人里では暮らせない者たちばかりなのだ。
この城は外敵から守る役割も果たしている」
「人里で暮らせない?」
「それなら私達のところって最適かも」
「……どういうことだ?」
ダームさんに拠点の状況について伝えました。
それなりに広い島だし、私達以外に誰も住んでいないので、条件には合致するはずです。
魔物も、危険な魔物は居ないですし。
「ふむ、なるほど。確かに聞いた感じは良い場所のようだな。
一度見に行かせてもらっても良いか?」
「はい、もちろん。
私達もここまで大がかりな話になるなら他のメンバーに相談しておきたいですし」
「ただ、そのためには1つ大きな問題が」
「なんだ?」
「……帰り道が分かりません」
「……」
「……」
ツバキちゃんの一言に思わず頭を抱えてしまいました。
そう言えばそうだったね。
ダームさんが道分かればいいんだけど。




