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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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タコ焼きパーティーの為に

改めて向き合うとやっぱりデカいな。

足の1本1本も太さが数メートルあるし、あんなのに殴られたら俺は1発でアウトだろう。


「ギュオオオッ」

「言ってるそばからっ。みんな、散開!」

「ぴっ」

「きょっ」

「……」


振り下ろされる1撃に慌てて飛びのく俺達。

しかしヤドリンだけはその場に留まっていた。


「ヤドリン!?」


しまった。ヤドリンの機動力じゃ避けられない。

振り返った俺の目の前でヤドリンがボスの足に潰されて見えなくなってしまった。


「くそっ。呼んだのは失敗だったか。

イカリヤ、コウくん。急いで助け出すぞ」

「きょきょっ」

「いや、心配ないって。むしろ今がチャンスってどういうことだ?」


よく分からないけど、イカリヤは今振り下ろされた足の根本目掛けて切りかかって行き、コウくんもそれを援護するようにボスの目と思われる場所に光魔法を照射している。

ふたりが全然心配してないってことはきっとヤドリンは生きてるはずだけどやっぱり心配だ。

だから俺は俺で、地面に横たわっているボスの足の横を掘ってヤドリンの無事を確認しよう。


ザッザッザッ

「ヤドリン、無事か?」

「…………くぃ」


掘り進んだ先にはなんと無傷のヤドリンがボスの足に岩宿を突き刺していた。

え、もしかして避けられなかったんじゃなくて、受け止めてボスを地面に縫い留めてたのか。


「ギュオアアアッ」

「きょっ♪」


そうこうしている間に縫い留めていた足がイカリヤによって切断された。

切断された足はすぐに光になって俺のアイテムボックスに格納されたようだ。

よしならこれをあと7回繰り返せばって、そう簡単にはいかないか。

ボスも今の失敗を受けて、安易な振り下ろしはしなくなった。

今はイカリヤが一番危険と判断したのか、2本の足でコウくんとヤドリンをけん制しつつ、残りの5本を鞭のようにしならせながらイカリヤを攻め立てている。

流石のイカリヤも1本2本は何とかなっても5本となると避けるので精一杯なようだ。


「って、俺のことは無視か!」


いやまぁ、確かに?

この4人の中では俺が最弱なのは間違いないけどさ。

でもそれならそれで無視したことを後悔させてやろうじゃないか。

俺は気付かれないように急いでボスの目の裏側へと移動した。

すると目の前にはリアルのタコ同様に鰓呼吸などをする為の穴が開いている。

なのでここに大気魔法で空気を大量に送り込んでやるとどうなるかと言えば。


「ギュボボボッ」


上手く呼吸が出来なくなって溺れたような状態になる訳だ。

目を白黒させて慌てて2本の足を回して俺を捕まえようとするボス。

いくら俺でもこれくらいなら避けられる。

そして2本の足が俺のほうに来たって事は、イカリヤの負担が半分近くになったって事だ。


「やっちゃえ、イカリヤ!」

「きょっ!!」


2本の剣腕を頭に添えて突撃を開始するイカリヤ。

大木のようなボスの足が半ばからみるみる削られていく。


「ギョオオオッ」

「こらこら。こっちの足は俺に向けたんだろ。ならもっとゆっくりしていけ、よっと」

ザクザクっ、ぎゅっ。


2本の足それぞれに『はじまりの銛』を刺しつつロープで結ぶ。

こんなのすぐに引き千切られると思うけど、数秒足止め出来たら十分だ。


「くぃっ」

ズンッ


一瞬の隙を突いてヤドリンが足に組み付いた。

更に右手のドリルを大きく振りかぶり。


ズンッ!!

「ギョアアアッ」


たった1撃でボスの足に大穴が空いた。

やっぱり防御力と1撃の破壊力はヤドリンが最強だな。

このまま行けば意外と楽に勝てるかなと思ったその時。

俺達の視界は闇に包まれた。


「って、タコ墨か」


気付いた時には『暗闇』の他、『麻痺』と『沈黙』の状態異常までかかった。


(くそっ。油断しすぎたか。みんなは大丈……ぐっ?!)


まずい、捕まった。

しかも腰に巻き付いたとか言うレベルじゃなく、完全に密封された。

これじゃ脱出なんてまず無理だし、何より今も万力のような圧力が全身を締め上げている。

幸い耐久力的にすぐに死ぬことは無さそうだけど早く何とかしないと。

みんなも暗闇のなかで苦戦してるはず……ん?

急に圧力が弱まった。

と同時に巻き付いてたボスの足が光になって消えた。


(誰かが足を切断してくれたんだ)


でもどうやって?

俺が相手してた足は銛を突き刺した程度でほぼ無傷だ。

この短時間で切断できるとは思えないけど。

まぁとにかく自分の状態異常を回復しないと。

また捕まる訳にはいかないからな。


ぞわっ

「きっ!」

ズバンッ!!


背筋に悪寒が走った瞬間、イカリヤの鋭い声が意外と近くから届く。

同時に頭の上を何か、多分ボスの足が通過していった。

恐らく声の感じからしてイカリヤがボスの攻撃を逸らしてくれたんだろう。


「イカリヤはこの暗闇の中でも見えるのか?」

「きょっ」

「慣れてるって、そうか」


イカリヤだってやろうと思えばイカ墨を出せるはずだ。

タコの墨とイカの墨の違いは分からないけど、イカリヤからすれば無いも同然ってことか。

感心している俺の腕をイカリヤが掴んだ。

同時に発生する大渦。

これはヤドリンだな。昨日も見せてもらったし。


「くぃっくぃ~」


ヤドリンの起こした渦が周囲の墨を晴らしていく。

更にどういう原理なのか、細くなった渦がボスを殴り飛ばしている。

何度も頭、というか胴体を殴られてヘロヘロになるボス。


「あれ?そう言えばコウくんは?」

「きょっ♪」


イカリヤが指さした先。

ボスの眉間に寄り添うようにコウくんが居た。


「ぴぃっ!!」

カッ!!


気合一閃。

コウくんの放った光魔法がボスの顔に大穴を空けた。

最初に撃った時と比べて、威力そのものも倍増してるけど、何より距離による減衰がほぼ無いから物凄い破壊力だ。

流石のボスもこれが致命傷になったらしく、力なく揺らめいた後、光になって消えていった。


「おつかれさま~」

「きょっ」

「くぃっ」

「ぴぃっ」


大仕事を終えた俺達は集まってハイタッチ。

ヤドリンは分からないけど、イカリヤとコウくんは見るからに疲れてフラフラしている。

多分、終盤に俺が捕まったせいで無理をさせたんだろう。


「みんな今日はありがとうな。

こういう時用にリースからご褒美ご飯を貰ってるから、それを食べて今日はゆっくり休んでくれ」


嬉しそうにお弁当箱を抱きかかえた姿を見ながら、皆を竜宮農場へと送還した。

よし、じゃあ俺もひと泳ぎして帰るか。

って、そうだ。

魚人族の街にも転移門みたいなのはないのかな。

挨拶ついでに聞いてみるか。




後書き外伝 サクラ・ツバキ 2/3


城の門のところに着いた私達を待ち構えていたのは1枚の張り紙。


『ようこそ ダームの城へ。

御用の方は目の前の紐を引いてください。門が開きます。

なお途中手に入ったアイテムは捨てないようにお気を付けください』


前情報通り、ダームさんが住んでいるみたいですね。

ところで紐ってこれかな?


ぐいっ。ズボッ。

「って、取れちゃった。ツバキちゃん、どうし」

ガンッ

「いったぁ~~」


ワンテンポ遅れてお鍋が落ちてきました。

なんて古典的な。

そしてツバキちゃん、笑い過ぎです。

この鍋どうしてくれようか。と思ったところでアイテムボックスに収納されました。

つまりこの鍋も「途中で手に入ったアイテム」の一つということですね。

門の鍵は、開いてます。では。


「ツバキちゃん、前をどうぞ」

「ふぐっ」


まさかのバトンタッチ。

槍使いの私は中衛ポジなのに~。

仕方ないから気合を入れて門に手を掛け押せば、その先には蝋燭に照らされた廊下があります。


「ツバキちゃん、慎重にね」

「大丈夫大丈夫。私はそんなおっちょこちょいじゃないからっ」

ガコッ


「……え」

「なにか、踏んだね」

「うん。ってやっぱり仕掛け矢!!」


慌てて城の外に出ようにもいつの間にか門が閉まってるし。

何とかサクラちゃんが盾を押し出してガードしてくれたから良いようなものの、ちょっと殺意高すぎないかな。


「って、ねぇ、これ見て」

「ん? これって……ごぼう?」

「うん、矢だと思ったらごぼうだね」


何なのかしら。

手に取ったらこれまたアイテムボックスに収納されていった。

なんなんだろう。


「ねぇサクラちゃん。次に何が来るか当ててみない?」

「のんきね」

「いいじゃん。今のところ本気で私たちを殺そうとはしてないみたいだし」

「まぁそうね。それにゲームだしね。

うーん、じゃあ順当にニンジンかな」

「なら私は玉ねぎで」


そんなのんきな会話をしていた私たちの前に現れたのは扉と1つの箱。

箱には上に穴が開いていてこう書いていた。


『この穴から手を入れて、中にあるものを当ててください』

「……これってあれかな」

「バラエティ番組でたまにある、あれね」

「ま、とにかく挑戦してみよう」


そう言って私は箱の中に手を入れる。

さて何があるのかな~


ぐにゃっ

「うひゃぁ」

「だ、大丈夫?」

「うーん、なんかぐにゃっとしてて気持ち悪いのが入ってる~」

「何だろう。スライム?」

「動いては居ないっぽいから違うかな。

さっきのごぼうからの流れで考えると食べ物?」


ぐにゃっとしてて気持ち悪いのに食べ物?

納豆とか?

いやでも、それなら粘々するか。

他にはうどんとかもにゅるにゅるするかな。


「あ、分かったかも」

「なになに?」

「こんにゃく!」

ピンポンピンポン♪


当たりを告げる音楽と共に、アイテムボックスにこんにゃくが追加された。

そして扉が開くと2階へと続く坂道が見えた。

坂道……定番なら岩が転がってくるとか?

ふたり目を合わせると考えてる事は一緒っぽい。


ゴロゴロゴロ……

「やっぱりきたーーっ」

「っ!ちょっとまって。思ったより小さいよ」

「ホントだ。でも沢山流れて来るよ」

『じゃがいもだけ回収してください。逃すと爆発します』

「「ちょっ」」


突然のアナウンスに私たちは慌てて拳大の石に混じって転がってくるジャガイモを回収するのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] た○し城かなって
[一言] 爆発するじゃがいも……w
[一言] 肉じゃがかな?
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